Recent Search

    ぽえうぉ

    @pewq315

    過去ログ倉庫

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💗 💋 💪 🏆
    POIPOI 104

    ぽえうぉ

    MAIKINGめぐゆじのめっちゃ暗ェ話の思いついたとこだけ。肉付けは気が向いたらするかも知れないしもう二度と書かないかも知れないしみたいな何かです。
    物理的には死んでないけど心がめちゃ死んでいます。
    220816追記
    釈迦曼荼羅阿修羅生れ生れ生れ生れて
    生の始めに暗く
    死に死に死に死んで
    死の終りに冥し

            ―――空海「秘蔵宝論」


    第一異生羝羊心の章

    序.

     虎杖悠仁は五月に眠った。
     以来、目を覚まさない。もう、三か月も前のことだ。

     過日。その記憶。思い出話とするにはあまりにも「過去」に満たない。ゆえに、伏黒恵は苦悩している。三か月という時間は月日だろうか、単なる時間の連続性を証明する尺度に過ぎないだろうか。あれを「過去」と呼ぶにはまだあまりにも肌の感覚が生々しいのに、だが昨日のようと言うには、心がはるか昔を彷徨いすぎている。いずれにしろ、伏黒恵は言う。それを認めるなと言う。過去にするなと言う。してはならないと言う。
     伏黒恵は虎杖悠仁と最後に話した日のことを思い出し、そして思い出すたび、「思い出す」という行為そのものの不可逆性、自らの心に知らず知らずのうちに巣食った、緻密な網の目のような「美しい記憶」の、その取り返しようのなさに絶望する。
    8297

    ぽえうぉ

    MOURNINGヒバツナですが別れ話です。
    2005年から2011年くらいまで稼働していたサイトで書いていたテキストになります。
    初出は2008年ですが2008年バージョンは目もあてられないレベルでヒギィーッて感じだったので加筆修正を加えています。
    あなたは泡になって消える 「海へ行くなら、駅からバスが出ていますよ」というのは女中の話で、行く気などさらさらなかったのに、チェックアウトの時間になってもまだしつこく海の話をされたから、結局海へ行くことになった。「綺麗ですよ、この時期の海は、人ももう少ないでしょうから」とにこやかに微笑む若い女中の話に付き合うのに、疲れたというのもある。「じゃあ行ってみます」綱吉は頷いて鍵を返した。「お出かけになっている間、お荷物お預かりしますよ」という宿の親切に結構ですありがとうと返事をして、宿代を支払い、頭を下げて宿を出ると、初秋の日差しが目をうつように眩しい。女中のお人よしそうなべに色の頬と、彼女の鈴を転がすような「いってらっしゃいませ」という声に送られて、彼らはいよいよ疲れきったものだ。行くも何も海など。別れを決意した二人に、こんな話はただ酷なだけである。二人の間に、何しろもう恋の高揚などないのだ。
    4737