◆ 狡い価値 ◆――――――
ある年の四月。
ジャシン教にとって誕生などめでたくもないだろうがちょうど良い言い訳だと思い気紛れに欲しいものを聞いた。
すると飛段は目を輝かせて《お前!》とこちらを指さした。
一瞬、そんなもので良いのか…と衣の上から腕の繋ぎ目に触れる。
異形の体が欲しいなんでおかしな男だ。
願いを叶えてやろうかと思いながらも却下する。
口約束で相棒のものになったとして何かが変わるとも思えなかったが云いふらされては迷惑だ。
他に何か、と尋ねてみてもそれ以外は要らないと云う。
飛段にとっては特別でも何でもないらしい4月2日は自分達には似つかわしくないプレゼントの話だけで終わった。
丸一日。
任務の事にも賞金首の事にも触れずただ話していたことが嬉しかったのかその夜の飛段はとても満足そうに笑っていた。
2030