◆邪神の聲◆――――――
別に深く護ってやりたいと願っていたわけではない。
家族を捨てて逃げた男と男が残した借金や恨みの為に一人で死を選んだ女が遺したアレに同情したわけでもない。
結局のところアレは独り、少々馬鹿かもしれないが災いを切り抜け或いはとり込んで意外にも飄々と生きている。
護る必要などない。
なにより、他人の境遇を憐れむ心の余裕などありはしない。
ただ…チラつく死神にアレが気づかないようにしてやりたかった。
丸に逆三角のマーク。
革ひもでいつも腕に巻きつけているそれは他人にはアクセサリーでしかない。
けれど角都は何故かそれが気になり、飛段自身もいつからそれを持っているか知らなかった。
奇妙な安堵と共に纏わりつく衝動。
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