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    うろうろ

    Ao_MiNaMii

    PROGRESSししんでんしんそくぜんしゅぞく本Side玄武 人間族の章

    人間族の玄武=氷船ヒブネ
    村を焼かれて疲労困憊で裏山をうろうろしてたら滑って転んだ

    人間族の薫=海晴ミハル
    子どもたちが避難したって聞いて山小屋に向かってたら氷船が斜面ズベベベベしてきたので激おこスティックファイナリアリティなんとか
    この時点では信と正義に息がある 火の手がどこまで回っているか確認して、もし近いようならもっと上の小屋へ移動して、村や大人たちがどうなっているか確認して……
     そう考えて、それを行動に移したはずなのに、気づけば氷船はふらふらと山小屋や村の周囲を彷徨っていた。あれこれ確認して次の行動を決めなければ、と頭では分かっているつもりなのに、焼けた村を目にするのがどうしても怖い。代わりにあちこちへ無意味な視線を投げながら歩いているうちに、踏みつけた草で靴が滑って視界と重心が転げた。
     ずざざざ、と自分が山を滑っていく音が氷船の意識を席巻する。呆然とする氷船の耳に、鋭い声が飛び込んだ。
    「氷船くん!」
     同時にガクンと視界が止まって、肩の布地が上に引きずられ腰帯がずれる。しぱしぱと何度か瞬きをしていた氷船は、覚束ない動作で肩の上のほうを見上げた。
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    ma_

    DONE桜のなかうろうろする十夜

    2022.11.7(時差ということにしたい)
    舂く揺れて 未だ微睡みに包まれている寮の扉を押しひらけば、出たばかりの日差しをふんだんに纏った風が一層くどいと言ってもよいほど丹念に穏やかな暖かさを押し付けて来る。そんな影も暗さもない朝だった。
     アイドルとして必要なスキルの育成は勿論、生活を支える年季の入った寮舎から一人出た青年、宗像十夜は、その長い脚でもって学舎へ向かうべく最寄り駅へと緩やかな坂を下っていた。舗装された坂の脇に立つ木々は温厚過ぎる陽気に手を広げ伸ばすかの如く、空へと差し出した枝に小ぶりな花を咲かせ全身を白で埋め尽くし、共に揺れる葉もまだ若く柔らかいのか、それすら色素が薄かった。
     人のいない、まだひっそりとした歩道橋を渡るだけでもそこかしこ視界に散らばる柔らかい花片。コンクリートの灰色を覆い、皺のない張った制服の白に触れ続ける淡色。風流や風情を超えた絶え間のない春嵐に酔いそうだった。桜並木とも言えぬ路でこのありようだ。いま公園や奥山の方へ立ち入ったのなら、流石に息苦しさを感じそうである。ちらりとその景色を想像して、十夜は靄ならぬ桜掛かった道の端で静かに酩酊した。
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