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    nikime_wall

    MAIKING砂狼(奴隷商人兼調教師)×金テン
    1行ずつ増やしてるので途中までで。
    お誕生日おめでとう自分ってことで、少しでもよんでもらったらうれしいです
    砂漠の薔薇(仮)――春を……、貴方だけの春を探すのよ。

    そう言ったのは、花が散る前の優しい笑顔を浮かべた母だった。

    「ここに、春なんて、存在しない…」


    何かが割れる音と悲鳴のような声が聞こえたため、目を通していた資料から顔を上げると部屋を後にした。

    「…何を騒いでいる」

    音の出処は集落の入口で、人集りがこちらに気付き道を開けてくれる。その先では集落の男たちが数人がかりで何かを押さえ込もうとしていた。

    「離せ!汚い手でわたしに触れるな!商品風情がァ…!」

    ひくり、とあまり動かない眉が僅かに震えたのがわかった。

    「商品である前に家族なんだが」
    「そんなこと知ったこっちゃないですよ!おい、貴様!これを外せ……グッ」

    男どもに取り押さえられながらも暴れ続けているそれは異形の者だった。両手首に手枷が嵌められていてもなお、左手の流動体を振り回して薙ぎ払おうとしている。地面に垂れていたネクタイを掴みあげ上を向かせる。仮面を外せば太陽を鏡のように反射する綺麗な金色が現れ、隻眼の目はまるで夕暮れ時のいちばん綺麗な夕日のようだった。
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