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    まい

    アンドリュー(鶏)

    DONE幻水1のエルフたちがエンディング後に自分達の故郷に帰るお話。
    幻想水滸伝1のエルフたちは四者四様といった趣で個性豊かですが、彼らに共通して眼前に横たわっている悲しみあるのだと思うとなんだかしんみりしてしまいます。特にあんなに明るいスタリオンにもおそらくは表には見えづらい切なさや寂しさがあるのかな、なんて思いながら書いた作品です。
    また会う日まで 戦いは終わった。
     けれど僕たちの戦いはまだ終わらない。
     ひとりのエルフの青年は、焼け落ちた故郷の大樹を見上げた。焼け焦げた枝々の隙間から見える空が真っ青だったから、その暴力の跡がひどく浮かび上がってくるようだった。
     『赤月帝国』というひとつの国が滅び、この地が『トラン共和国』と称されることが決まった頃のこと。解放軍の一員としてその終焉を見届けた青年──キルキスは、戦いのさなかに喪われてしまった故郷を訪れていた。度重なる争いに訪れる時間すらなかったのは事実だけれど、やはり生まれたこの地の変わり果てた姿を見ることを避けたい心があったのもまた事実だった。それでも、今は向き合わなければならない。エルフの、いやこの世界で暮らす存在の一員として、新たな生活のためにこの一歩を踏み出さなければならない。この地に残る同胞たちの無念に引き込まれそうになるのを、キルキスは自身を鼓舞することでそれに耐えようとしていた。
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