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    ゆり

    sushiwoyokose

    DOODLE欲しいものは書けってばっちゃが言ってたので麻痺の後遺症が残ってるユのアルユリ
    かがり火足先を擽る冷気を感じてふと目を覚ます。寝ぼけ眼をどうにか開けば、窓からうっすらとした曇天の日差しが漏れているのが見えた。次いで壁掛けの振り子時計を見やれば時刻はすっかり朝である。もう少し微睡んだって罰は当たらないような時間だが、隣で寝息を立てる男と食いしん坊の異形に朝食を拵えてやらなくてはならない。大して呆けることなく身体を起こそうとしたが、腹に力を入れた途端俄かな痺れが鋭い痛みをもってして全身を駆け巡っていく。
    「っ」
    思わず漏れそうになる悲鳴を、辛うじて嚙み殺した。情夜が齎す甘い痺れとは違う、純粋な不調の痛みである。結局身を起こすことは叶わず、ふわふわと軽い布団を幾度か揺らすにとどまった。
    吐いた息が真っ白く色づく季節。冷え込みが厳しくなると、上手く身体が動かなくなることがある。骨が軋むようにして強張り、筋肉が震え、脳の指令に四肢が従ってくれないのだ。医者曰く、これは死に瀕した傷の後遺症なのだという。特段の治療法はないとあっさり匙を投げられてしまったが、あれだけの怪我から助かってこの程度で済んだなら幸運と思うべきだと言われればそれもそうかと頷くことしかできなかった。
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