Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    ケルソ

    はまおぎ

    MEMOごうた
    たたき台にした曲は、夢に向かっての歩みを止めそうになったとき、それでも夢を諦めきれない、未練があるということを自問自答の末に自覚するに至って、意思を振り絞るように、他の誰でもなく夢を抱いた過去の自分自身の心に観念したように、一歩を踏み出した情景だと思っている。

    歩き続けるその人が、孤独でありませんように。
    ウォーカー(ポルノグラフィティ)

    ●ばこ、と重い音を立てて開けた冷蔵庫。ドアポケットの二段目でプリンの瓶がひとつ、かたんと音を立てた。
     黒いフェルトペンで『五』と書かれている蓋を見る。存在感あふれる一文字は庵の筆跡だ。五条が東北周遊祓除ツアーを敢行している間に出張で東京校を訪れていた彼女がお土産だと置いていった由、告げながら医務室の冷蔵庫からこのプリンを取り出したのは家入だった。
     受け取ったその場で、ないしはその日のうちに食べてしまわなかったのは成り行きだ。小腹は減っていたが、プリンを渡されたそのとき、スプーンは渡されなかった。
     ……いや、方便だ。片手間にぺろっと食べてしまうのが、なんとなくはばかられた。だから食べなかった。部屋に持ち帰って、プリンの舌を整えてから臨んでやろうと冷蔵庫に納めた。
    887