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    シードル

    yomo_IV

    DOODLEシードルとガナッシュ
    ED後/尻切れ
    ◆◆◆
     ボク、キミを知りたいと思ったんだ。
     シードルと向き合うように置かれたカンバスの奥に置かれたスツールへ腰掛けて早々、そんな言葉が飛んできた。予想だにしていなかった言葉だったものだから、ガナッシュは驚いて「そうなんだ」と素っ気ない返事しかできなかった。
     一呼吸おいてから、カンバスに姿を切り取られたシードルの様子を窺う。別段気を悪くした様子はなかった。琥珀色の絵筆がするするとカンバスの上を泳いでいくのが、たまにガナッシュの方からも見えた。
     知りたいとは、どういうことか。
     臨海学校を終えてから、以前にも増して芸術一辺倒となったシードルのことを、ガナッシュは理解できない時がある。知りたいのならば、膝を突き合わせて話した方がいい思うのだが、どうやら彼にとって語らうことは知ることではないらしい。

     選んだ授業を終えて、さあ帰るかとガナッシュが荷物をまとめていると、別の授業を選択していたはずのシードルがガナッシュの元にやってきた。絵のモデルになってほしいのだと言う。
     オレでいいのかと聞くと、キミがいいんだよ、と何故だか笑われてしまった。そう言われては、断る理由がない。カバンに荷物 1305

    yomo_IV

    TRAININGカシスとシードル
    ED後
    ◆◆◆

     西日の差し込む美術室の、準備室に続くドアの隣に置かれた古いイーゼルと、長い年月の染み込んだ角いす。用事のない放課後、いつもシードルはそこにいた。誰もいない美術室を満たす画材たちの香りが好きだった。
     今日もまた、シードルはイーゼルの前に座っていた。立てかけたカンバスに筆を走らせていたシードルの耳に、ふと扉が開く音が届いた。絵を描くことに没頭しすぎて、マドレーヌ先生が下校を促しに来ることがままある。またやってしまっただろうか。シードルは窓へ一瞥を向けて、おや、と思った。まだ、夜の帳は下りていない。
     であれば、なにか別の用事だろうか。絵筆を転がらない場所に置き、振り返る。
    「よう」
    「カシス!?」
     青天の霹靂。彼の扱う魔法からするに、窓から槍の方が的確だろうか。何はともあれ、予想だにしていなかった来訪者に、シードルはひどく驚いた。
     当の本人はそんなシードルを気にもせず、適当な角椅子を下ろして座った。シードルにとってはちょうどいい角いすも、カシスが腰掛けると随分と窮屈そうに見えた。
     すっかり筆を止めてしまったシードルに、カシスがゆっくりと瞬く。
    「なんだよ、描かないの?」 3398