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    ゼニ

    abicocco

    PAST※ノーマルEND軸革命前のレムラキ

    レムがグリーゼに来てからラキが革命を起こすまでに二人の間で発生したやりとりについての想像
    ブロカント「レムナン。作業ペースが通常時の八十パーセントまで落ちています。休息を取りますか?」

     今日は各船を繋ぐ自動走行路オートチューブの定期メンテナンスで地下へと潜る日だった。僕がこの国にやってきてから、そして擬知体を含む機械全般の整備士として働き始めてから、もう何度もこなしてきた仕事だ。それにも関わらず、いや、慣れている作業だからこそか、いつも僕の業務に同行してくれているサポート擬知体から集中力の欠如を指摘されてしまった。

    「いえ……。いや、そう、ですね。昼休憩にしましょうか」

     作業が丁度キリのいいところだったこともあり、彼女の提案に甘えることにした僕は工具箱を脇に避けて作業用のグローブを外すと、持ち込んだランチボックスからマッケンチーズをフォークでつついた。鮮温キープ機能のある優秀な容器のおかげで、チーズと胡椒をまとったマカロニとベーコンはフードプリンターから出てきたばかりの今朝と変わりない姿で湯気を立ちのぼらせている。食欲を刺激する濃厚なチーズのジャンクな香りは僕の好物に違いないのに、食事の手はなかなか進まなかった。
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    abicocco

    PAST※ノーマルEND革命後のグリーゼにて交際中のレムラキ。グリーゼの医療制度などについて想像で好き勝手書いています。
    はじめて熱を出したラキとはじめて人の看病をするレムの話。
    平熱+3℃ ピピピ。 接触タイプの体温計が測定完了の合図を出したのを聞いて、僕は自身の額から薄っぺらいカードのようなそれを回収すると、そこに表示されている数字を確認した。

    「39.2℃……」

     昼に飲んだ解熱剤が切れたからだろう、また熱が上がっている。頭痛、発熱、眩暈——今グリーゼで流行中の宇宙風邪の症状にしっかり当てはまっている。

    「まさかこの歳で寝込むほどの体調不良を起こすとはね……」

     ガンガンと脳を揺らし思考を阻害する鈍い頭の痛みに、深いため息をひとつ吐いて、僕は瞼を閉じた。


     この国の白質市民を相手に施される高等教育は全宇宙規模で見ても相当にレベルが高く、課題内容も授業の進行速度も厳しいと言われていた。グリーゼの学生に休んでいる暇はなく、ましてや娯楽に興じる余裕などあろうはずもない。体調不良による欠席の可能性など一切考慮されていない教育カリキュラムは、一日でも授業を欠席するとあとから遅れを取り戻すのは相当に面倒だし、生憎とこの閉鎖的社会の中じゃあ、レムナンが好む映画や小説をはじめとするフィクションの世界に出てくる、休んだ分のサポートをしてくれる親切な同級生など存在しなかった。誰がはじめに言い出したのか、他星系から『超階級国家』と呼ばれ、畏敬と畏怖が入り混じった眼差しで遠巻きに見られていたようなこの国で生き延びていくために、誰もが自分の力で自分一人分の将来を切り拓くだけで精一杯だった。
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