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    チルアウト

    限界羊小屋

    DONEフレリン 本編後
    お気に入りの場所でチルアウトする二人の話
    「空白」の続き
    Emptiness 図書室の奥、カウンター裏にある小さな扉を開けた先には一面の灰色が広がっていた。垂れ込めた曇り空が校舎とその向こうの街の沈んだ色を煙らせている。暖房の効いた屋内から一歩踏み出すだけでちりちりと凍らせるような冷たい空気が肺に染み入る。
     通い慣れた白い階段に歩み寄り腰を下ろすと、金属の床の冷たさが制服越しに伝った。季節が夏から秋、そして冬へと歩みを進めるにつれて校庭の人影も減っていった。今やはしゃぎ声は聞こえず、4階の高さを吹き抜ける風の音だけが棟を掠めて鳴っていた。
     校庭の端の木々はすっかり葉を落としてしまっている。

     何かに嫌気がさして逃げ出したくなるたびにこの場所を訪れている。
     成績は悪い方ではない。家庭環境も恵まれていると思うし、父さんも母さんも程よい距離を持って接してくれる。何か病気があるわけでもないし今日もご飯は美味しいと思う。それなのに何かが吹き溜まっていた。閉塞して行き場がなかった。ダラダラと続けているポケコヨやゲームの類の他にこれと言った趣味は持っていないし、子供の頃に習わせてもらったピアノや水泳で才能が見つかることもなかった。鳩みたいに平凡。それが自分で分かっているだけに胸が塞がる。
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