ただ、例外として　ノーブルベルカレッジとの交流会に参加する生徒で賑わう鏡の間。先生と生徒で作られた輪から外れた部屋の隅で、トレインの飼い猫――ルチウスは関心無さげに自身の手を舐めていた。
　そんなルチウスの元にラギーが近寄ってきた。ラギーは膝を落とし、猫の言語で声をかける。
「トレイン先生と数日離れ離れになるけど、やっぱ寂しいもんなんスか？」
　毛繕いを止め、ルチウスはじっとりとラギーを睨み上げた。
「そんなわけないだろ」
「あははっ、即答じゃん。あんだけ可愛がってもらってんのに、随分薄情なんスねぇ」
「可愛がってる、ねぇ。それなら毎食高級ツナ缶を食わしてもらいたいもんだ」
「トレイン先生はそういうタイプの可愛がり方じゃないっスもんねぇ……ま、オレ達生徒に対するよりはベタ可愛がりされてる方だと思うけど？」

TEST・A・LIVE「ここは、ポイピク……？　絵を投稿する場所か？」
　オルステッドの呟きに答えたのはストレイボウだった。
「小説も投稿できると聞いた。試してみよう」
　そう言ってストレイボウは文章を投稿する操作をし始めた。それを横で眺めながら、オルステッドが首を傾げる。
「[[rb:振り仮名 > ルビ]]は使えるのかな……？」
「使えてるじゃないか」
「え？　[[rb:何処 > どこ]]に？」
「…………。まあいいか」
　適当に話を切り上げて、ストレイボウはアップロードのアイコンをタップした。

昵懇カイ師匠がグレッグミンスターにやって来るのはとても久しぶりで。
でもテッドが仕事もなく１日休みなのも久しぶりで。
「俺の方が後だったんだから、心置きなく稽古に励めよ」
そんな事を言うテッドに、僕は初めて稽古よりも優先したい事が出来たのだとその時自覚して、それが良い事なのか悪い事なのかわからずに言葉を紡ぐことが出来なかった。
途方に暮れる、を、多分初めて実感したのだと思う。
そんな僕の表情を見たテッドは何故だかとても嬉しそうで、楽しそうで。
「うんうん。その顔は良いなあ。
その顔に免じて、稽古が終わるまでお前の部屋で待っていてやるよ。１日掛かるならまあ、夕飯をごちそうしてくれ」
な、親友。
そんな事を言われたので、適わないなあと。