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    ドライ

    knoh

    DONEドのドライブに付き合わされる兄の話。(ド兄)
    ドライブの果て適当に腹ごしらえをした後、いつもは運転を押し付けてくる男が、時折自ら運転席に乗り込むことがあった。すたすたと車に向かい、2人分の会計を済ませた連れが横に座るのを待っている。そうなるとこちらは黙って従うのみだ。わざわざ当直明けの身体を酷使する趣味はないと、譲られるままに助手席に腰を下ろす。

    男が無条件にハンドルを握る、それを合図に始まる男2人、真夜中のドライブ。運転してやっから。運転してくれんなら。そんな無言の口実を互いに纏った、予告も無しに訪れるその時間が、全くもって不思議だが、嫌いではなかった。むしろ主導権を横の男に委ね、窓越しの風景が流れていく様をぼんやりと見つめているだけのひとときに、いつしか心地良ささえ感じるようになっていた。忙しない日常から切り離されたように錯覚しているだけなのだろうと思う。よりによってその第一の要因である男の隣でそうなってしまっているのだから変な話だった。そんな様子を察しているのかは知らないが、公道を一定のスピードで走らせている間、普段饒舌な男にしては話しかけてくる頻度が抑えめになる。もしかしたら眠気に負け気味な自分が気付いていないだけかもしれないが、今のところ「聞けよ」だの「お前だけ寝るなよ」だの文句も挙がらないことから、やはりそういった素振りはそもそも無いようだった。
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