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    フェネック

    摩訶波羅羯諦

    DONE🥂くんがフェネックだったころ俺っちがフェネックだったころ、俺っちは世界で一番かわいくて、みんなの人気者だった。
    神様はえこひいきで、かわいい俺っちのこと世界で一番愛しちゃってて、そんで俺っちは、悪いやつらに悪い魔法をかけられた。
    世界の半分が怖くなって、俺っちはフェネックであることから逃げ出した。大きな耳はいらない。手触りのいい毛皮もいらない。華奢な手足も、ふわふわのしっぽも。

    俺っちが完全にフェネックじゃなくなったころ、そばには独歩がいた。
    独歩は俺っちになんにも与えてくれなかった。
    機嫌をとる猫撫で声も、優しくなでる指先も、守ってあげると抱きしめることも、俺っちはもうなんにもいらなかった。
    俺っちがフェネックじゃなくなっても、神様はしつこく俺っちのこと愛しちゃってて、宝石級なんて言われるくらいの美貌を与えてくれたけど、独歩はそんな俺っちが、マジな顔してればしてるほど笑う。
    変な顔って指さして、馬鹿にするみたいに鼻で笑う。
    俺っちはもうフェネックじゃない。
    フェネックだったらきっと、生意気な笑い声を、指先を、愛しいと思わなかった。
    堂々とした大きな手で、独歩の頬を撫でられなかった。
    俺っちがフェネックだったこ 593