眠れない夜 いつもなら身動ぎするのも躊躇うくらいの狭いベッドの上も、今はどれだけ大袈裟な程に寝返りを打とうとも、触れる体温には辿り着かない。
普段隣で寝ている同居人が居なくても、なぜか一人分の隙間を空けて静かに息をする。いつもより幾分か冷たく感じる布団に、息を吐きだした。
眠れない。一人で睡眠を取ることはなんら難しくはないはずなのに、うとうとと浅い眠りのまま、意識は中々途切れてはくれなかった。
静かな夜だった。いっそ吸血鬼のように起きてしまおうかとベッドを抜け出して、カーテンを開け外を眺める。こぼれ落ちそうなほどまん丸に輝いた月は、一人ぼっちの泉を眩く照らしてくれた。
泉にとっての月は、特別なものだった。常に一緒についてまわるこの月が、気になって仕方がなく、愛おしい。
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