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    ボン

    実山椒

    DONE剛一郎と命の日常話。
    なんとなく剛一郎→命

    ※命がやむを得なく自身のヘッドドレスのリボンを切ったということが感じ取れる記載があります。主に与えられた服は何があっても守り抜くだろう派がいらっしゃる場合はご理解の上ご一読下さい。
    ※諸事情により誤脱の確認ができていないため、非常に読みづらい可能性があります。
    辿るいつもの帰路。いつもの日常。
    級友が部活だ塾だとそれぞれの目的のため次の場所へと行くように、俺自身は世に何か困りごとや事件が起きてはいないかと、集中力を欠くことなく帰路を行く。この時間の見慣れた光景に異変があるとするならば、それが難解な事件の入り口になる可能性だって当然ある。なんせ、気が付けば異変に巻き込まれているなんてことのほうが、最近では日常になりつつあるのだから。
     ところどころひび割れたコンクリートや、最近開店したコンビニエンスストア、それからもう半年以上も貼られている「マロンを探しています」のポスター。ラミネートされていても色褪せきった写真には、記憶によれば栗毛の小型犬(おそらくはプードル)が赤色の首輪をし、舌を出していた。文字色はあせることなくそこに残り続け、はっきりと「女の子」「2才」「マロンと呼ぶと尻尾を振る」など書かれていた。よほど賢くなければ、何と呼んだところで犬は尻尾を振るものではないだろうかと思うのだが、これを作成した家族にとってはその行動が彼女を彼女づける一つの要素だったというわけだろう。
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    ithimi72

    PROGRESSフォロワーさんのつぶやきからのイムソロを勝手に。このあとR指定に続けたいなとぼんやり
     「おかえりなさいませ我が君。無事のご帰還、歓喜に打ち震えております」
     そうお決まりの台詞をもってカイムがアジトで出迎えてくれるのを受けて、ソロモンは張り詰めていた糸が切れたかのように思わず倒れ込んでしまった。カイムが自分を静かに受け止めてくれたのを感じてから、あ、しまったなと後悔した。今回の遠征は非常に長く困難だったこともありかなり疲弊していて、でもこんなところで動けなくなるなんて情けないし皆にも迷惑がかかるからという思いでなんとか意識を保って自分の力で歩いていたというのに。最後の最後でカイムの顔を見たら力が抜けてしまった。優しく抱きとめてくれたカイムはソロモンよりもずっと背が高くて体格も良い。しっかりと背中に回してくれた腕の筋肉はしなやかで、決して太いわけではないのにソロモンを支えてもビクともしない。顔を埋める形になってしまった胸は非常に広くてしっかりと胸板が厚いのを感じる。意識して吸い込んだわけではないのに、ほんの少しの蝋燭が焼けた匂いとモーリュの花の香りが鼻腔をくすぐり、ああ、カイムの香りだと思って場違いにも胸が締め付けられた。皆に示しがつかない、立たなきゃ、という思いとは裏腹に、まるで毒でも受けたかのように身体は動かなかった。トドメのように「我が君」と耳元で囁かれたものだから、その甘い毒は痺れとともに全身に回ってしまった。
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