窓から差し込む月あかりが、隣で穏やかに眠るルカの顔を照らす。なんだか既視感を覚える光景に頭を巡らすと、今の今まで忘れていた幼い記憶が脳を掠めた。

　小学校に入るくらいの歳の頃、寝つきの悪い日が続く時期があった。目を閉じても眠くない、ようやく眠れたと思っても少しの物音で目を覚ましてしまう。その夜は特にタチが悪く、煌々と世界を照らす満月の光は一度目覚めた意識をふたたび眠らせてはくれなかった。もうどうしても眠れないからと寝転がることすら諦め体を起こし、隣に眠るルカのことを眺めていた。スースーと規則正しい寝息に合わせて上下するルカの胸部を見て、自身の片割れが生きていることに安堵感を覚えた。そうして穏やかに眠るルカのことをじっと見つめているといつの間にか月あかりは差し込む角度を変えていた。

酷い男(読ロド) ピロンッ
RiNEの着信音で目を覚ます。画面を見なくとも、送信者は分かりきっていた。無視、してしまおうか。今日は昼更かししてしまい、二時間ほど前に寝たばかりだからまだ眠たい。しかし、そんな私の思考を見透かしたように、間髪開けずメッセージが送られてくる。どうせ｢早く来い｣とか｢返事しろ｣とかだろう。いつもいつもそうだ。私が誘いを無下にする可能性など彼の中には一ミリもないのだろう。ふんだ、私だってやる時はやるのだ。舐めないで貰いたい。引きこもりになったって元は由緒正しき高等吸血鬼！誰が吸血鬼退治人の言葉になんぞ耳をーーーピロンッ。
うっかり画面に目を向けてしまった私は、渋々と起き上がった。
【待ってる】

🐌 今回の任務は我々にとって重大なものだ。適切な慎重さを持って、行動しなければなりません。
🐦‍⬛わかってる。わたしもこの任務の重要性を理解している。
🐌貴方が理解しているのならば、行動の際には不用意な行動を控えるように。我々はアーキバスの名にかけて、最善を尽くさなければならない。
🐦‍⬛最善を尽くす。
🐌しかし、貴方の過去の行動を見る限り、私は貴方の信頼に疑問を抱かざるを得ません。
🐦‍⬛わたしの行動が信頼に値しない？
🐌貴方の行動は時に、独断と思慮の欠如に満ちている。私はそれがこの任務にどのような影響を与えるかを心配しているんですよ
🐦‍⬛わたしは、仕事を全うするために必要な行動を取るだけ。それが問題であるならば、ウォルターに適切な対処を指示して