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    Lemon_yummi

    DOODLE◇◆なんでも許せる人向け◇◆
    「主を失った本丸」において、初期刀の歌仙と近侍の和泉守がそれぞれ異なる忠義と信念を抱いて衝突する話。
    いつ如何なる場合においても歴史改変は許されないのか?という率直な疑問から着想を得た。
    極同士の容赦なしの真剣勝負と、歌仙の揺れ動く心情が描きたかった気持ちも強め。
    歌仙さん暴走気味。
    『__政府からの指令です。歴史改変を阻止するため、歌仙兼定を誅伐せよ。』
    徒花の君へ【壱 崩落】
     ――主が死んだ。
     すぐ帰るから、と言って護衛も無しに万屋へ向かう道中で暴れ馬に撥ねられた。
     刀である僕たちと違って、人の身体は手入れでは元に戻らない。
     乱れた髪も、土に染みた鮮血も、折れた幾つもの骨も、何一つ。
     人の寿命は短いとわかっていた。それでも、あまりに早過ぎた。
     実を成せず、雨に打たれて志半ばで散ってゆく。
     
     ――徒花のように、呆気なく。

    ◇◆◇◆
     
    「それでは、これにて説明は以上となります。
     他の本丸への異動を希望する方は後程こちらへ、
     刀解を希望する方は所定の場所へ移ってください。」
     管狐と政府の役人の指示に従って、数多の刀剣男士が本丸を駆けていた。
     それも束の間、太陽が傾いて影が伸びてゆくうちに、一人また一人と声が消えてゆく。
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    zeppei27

    DONEなんとなく続いている主福のお話で、単品でも読めます。数年間の別離を経て、江戸で再会する隠し刀と諭吉。以前とは異なってしまった互いが、もう一度一緒に前を向くお話です。遊郭の諭吉はなんで振り返れないんですか?

    >前作:ハレノヒ
    https://poipiku.com/271957/11274517.html
    まとめ
    https://formicam.ciao.jp/novel/ror.html
    答え 今年も春は鬱陶しいほどに浮かれていた。だんだんと陽が熟していくのだが、見せかけばかりでちっとも中身が伴わない。自分の中での季節は死んでしまったのだ、と隠し刀は長屋の庭に咲く蒲公英に虚な瞳を向けた。季節を感じ取れるようになったのはつい数年前だと言うのに、人並みの感覚を理解した端から既に呪わしく感じている。いっそ人間ではなく木石であれば、どんなに気が楽だったろう。
     それもこれも、縁のもつれ、自分の思い通りにならぬ執着に端を発する。三年前、たったの三年前に、隠し刀は恋に落ちた。相手は自分のような血腥い人生からは丸切り程遠い、福沢諭吉である。幕府の官吏であり、西洋というまだ見ぬ世界への強い憧れを抱く、明るい未来を宿した人だった。身綺麗で清廉潔白なようで、酒と煙草が大好物だし、愚痴もこぼす、子供っぽい甘えや悪戯っけを浴びているうちに深みに嵌ったと言って良い。彼と過ごした時間に一切恥はなく、また彼と一緒に歩んでいきたいともがく自分自身は好きだった。
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