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    大谷吉継

    limbo__666

    MOURNING大谷吉継推し三吉派でした
    小説4本・微グロ描写あり
    戦国BASARA3の小説■野狐禅
    個人的に感じていた家→三→吉のパラレル話

     冬の初めのある日、とある武士の家に待望の長子が生まれた。しかし生まれた子の産声は小さく、脚がくしゃりと縮こまり肌は死人の様に蒼褪めた、まさに蛭子を思わせる醜い姿であった。その有様に家中の者は色を無くし、待望の長子ではあるがこれではお役には立ちますまい。市井の口の端で嘲られる前に疾くに殺してしまわねばと、母から離した赤子を囲んで途方に暮れていた所に、その姿を一目見るなりひいと気を失った奥方が目を覚まし、我が子はどこだ、今すぐに我が子をこの腕に返せと、屋敷を切り裂くような高い声でわめき出した。その様は鬼子母神もかくやと言わんばかりに激しく、手弱女を体現したように大人しい常の姿からは思いもよらず、赤子を囲む家中の者はその様子に驚きながらも、奥方の命ずる通りに赤子を連れてきた。満足に息も吐けぬ様子で、口の端からごぶごぶと泡を吹く赤子をおそるおそる差し出せば、奥方は奪い取るようにひっしと腕の中に囲み、おおよしよし、何と可愛い私のやや子。どこにも離しはせぬ故安心おし。と、それまでと打って変わり、菩薩のようなやわらかな慈愛の微笑を浮かべながら、腕の中の醜い赤子をあやし始めた。腹を痛めて生んだ初子に向ける微笑は奥方の美貌をいっそう際立たせ、様子を伺っていた家中の者は一寸前の烈しい様子をすっかり忘れ、ひたすらホウと見蕩れていた。
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