怪物
MASAKI_N
DONE怪物jwds⑭事実 長い髪が好きというわけではないようだが、ハン・ジュウォンは明らかに、ドンシクの伸び切った髪に惑わされている。
まだ恋人同士になる前に一度、このくらいの長さでビデオ通話をした覚えがある。
ドンシクにわざわざ顔を見せてくるのはミンジョンくらいだったから、嬉しいやり取りだった。残念ながらドンシクは話している間に眠ってしまったが、目覚めた時ジュウォンの寝顔が画面の向こうにあって、どうしようもなく愛おしい気持ちになった。
もう誰も喪いたくないという気持ちとは違う彼への愛情が溢れ、胸がいっぱいになった。
お互い電話をするにも遠慮がある状態を変えようと、あの時からもっと繋がれるように意識した。
「髪が長いの、見慣れない?」
5188まだ恋人同士になる前に一度、このくらいの長さでビデオ通話をした覚えがある。
ドンシクにわざわざ顔を見せてくるのはミンジョンくらいだったから、嬉しいやり取りだった。残念ながらドンシクは話している間に眠ってしまったが、目覚めた時ジュウォンの寝顔が画面の向こうにあって、どうしようもなく愛おしい気持ちになった。
もう誰も喪いたくないという気持ちとは違う彼への愛情が溢れ、胸がいっぱいになった。
お互い電話をするにも遠慮がある状態を変えようと、あの時からもっと繋がれるように意識した。
「髪が長いの、見慣れない?」
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DONE怪物jwds⑩合鍵 ドンシクに合鍵をもらった。
マニャンの二軒と現在の自宅の分。いくら警察官同士だったからといっても、あまりに不用心ではないか?
そう思ったが、こうなる前はお互い好き勝手に不法侵入していたから、今更か。
それでも嬉しさより神妙な気持ちが勝ってしまって、存在感を持て余す。
僕なんかに心を許し過ぎじゃないか、イ・ドンシク。
それともまた何か、試されているのか?
不在時に出入りする可能性や必要があって、それを無期限で許されるのがこんなに早いなんて。
でも確かに、お互いの気持ちを確かめた時にはもう「所長にもらったあの家で、いつか一緒に暮らしませんか」と提案されていた。自分もそうしたいと言ったはずだ。
今はわからないが「いつか」ならと思った。なんとなく、それは警官を辞めるか、勤務地が偶然あの家に近くなった時だと思った。
9148マニャンの二軒と現在の自宅の分。いくら警察官同士だったからといっても、あまりに不用心ではないか?
そう思ったが、こうなる前はお互い好き勝手に不法侵入していたから、今更か。
それでも嬉しさより神妙な気持ちが勝ってしまって、存在感を持て余す。
僕なんかに心を許し過ぎじゃないか、イ・ドンシク。
それともまた何か、試されているのか?
不在時に出入りする可能性や必要があって、それを無期限で許されるのがこんなに早いなんて。
でも確かに、お互いの気持ちを確かめた時にはもう「所長にもらったあの家で、いつか一緒に暮らしませんか」と提案されていた。自分もそうしたいと言ったはずだ。
今はわからないが「いつか」ならと思った。なんとなく、それは警官を辞めるか、勤務地が偶然あの家に近くなった時だと思った。
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DONE怪物jwds⑨遊戯「元気だった?」
「ええ。忙しかったですけど。どうぞ、昼食はできてます」
ジュウォンは宿直明けで、明日は非番。昼からドンシクが来た。
ドンシクは、珍しくテレビゲームをやっているジュウォンの隣に座った。
「あれ、あなたの分は?」
ジュウォンは最近、ベトナム料理に凝っているらしい。小洒落た器に盛られたフォーが湯気を立てている。
「僕は、ブランチを食べたのでまだ空腹ではありません。熱いので気を付けて」
ブランチ。ジョンジェといたせいで割とお坊ちゃんの暮らしには慣れているし、ドンシクも両親が元気だった頃は、西洋文化寄りの行事や習慣も経験していた。でも、ナム所長と過ごすことが増え、離れていた文化だ。
「俺のためだけにわざわざ作ってくれたの?」
4793「ええ。忙しかったですけど。どうぞ、昼食はできてます」
ジュウォンは宿直明けで、明日は非番。昼からドンシクが来た。
ドンシクは、珍しくテレビゲームをやっているジュウォンの隣に座った。
「あれ、あなたの分は?」
ジュウォンは最近、ベトナム料理に凝っているらしい。小洒落た器に盛られたフォーが湯気を立てている。
「僕は、ブランチを食べたのでまだ空腹ではありません。熱いので気を付けて」
ブランチ。ジョンジェといたせいで割とお坊ちゃんの暮らしには慣れているし、ドンシクも両親が元気だった頃は、西洋文化寄りの行事や習慣も経験していた。でも、ナム所長と過ごすことが増え、離れていた文化だ。
「俺のためだけにわざわざ作ってくれたの?」
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DONE怪物jwds⑥悪夢 彼女の指を発見した時
指を置いた時
彼女が自分の足の下で生きていたと知った時
彼はどんなに絶望し、悔いただろう
光の届かない暗闇で溺れもがいて
必死で燃やした自分の身体が光るのだけが頼りだった彼が
――呪いや殺意や復讐の念だと思っていたその炎は
愛する妹への愛を思い出す時だけ義憤で昇華され
彼の行く先を照らす道標となった
どうして僕は、あんなに彼を見張っていたのに、それに気付けなかったのだろう。
どうして彼の生きる世界はこんなにも、非情で残酷なのだろう。
――ハン・ジュウォン警部補
よく通る声で呼び掛けられた記憶がフラッシュバックし、意識を揺さぶられる。びくりと身体が震え、ハン・ジュウォンは目を覚ました。
6492指を置いた時
彼女が自分の足の下で生きていたと知った時
彼はどんなに絶望し、悔いただろう
光の届かない暗闇で溺れもがいて
必死で燃やした自分の身体が光るのだけが頼りだった彼が
――呪いや殺意や復讐の念だと思っていたその炎は
愛する妹への愛を思い出す時だけ義憤で昇華され
彼の行く先を照らす道標となった
どうして僕は、あんなに彼を見張っていたのに、それに気付けなかったのだろう。
どうして彼の生きる世界はこんなにも、非情で残酷なのだろう。
――ハン・ジュウォン警部補
よく通る声で呼び掛けられた記憶がフラッシュバックし、意識を揺さぶられる。びくりと身体が震え、ハン・ジュウォンは目を覚ました。
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DONE怪物jwds③ヒョク「ヒョン、驚かないんだ」
「え?何に」
ハン・ジュウォンはほろ酔いの時――特に自分の前では――素直で融通の利かない、生意気な弟分のままだ。
「僕の好きな相手がドンシクさんでも」
あんな地獄を経験したのに案外けろりとしていて安心したら、恋愛相談なのか何なのかわからない報告をされている。ドンシクを表す言葉や、想いを伝えるべきかを悩む様は、古い時代のインテリが酔って詩を詠むようだった。
どれだけ焚き付けてもどの美女にも興味が無かった男が、まさか、執拗に調査して容疑をかけて、逮捕までした男に惚れるなんて。
そう思ったものの、ドンシクとジュウォンの間の空気は特別なものだと知っていたから、自分でも意外なくらいすんなり受け入れた。
5103「え?何に」
ハン・ジュウォンはほろ酔いの時――特に自分の前では――素直で融通の利かない、生意気な弟分のままだ。
「僕の好きな相手がドンシクさんでも」
あんな地獄を経験したのに案外けろりとしていて安心したら、恋愛相談なのか何なのかわからない報告をされている。ドンシクを表す言葉や、想いを伝えるべきかを悩む様は、古い時代のインテリが酔って詩を詠むようだった。
どれだけ焚き付けてもどの美女にも興味が無かった男が、まさか、執拗に調査して容疑をかけて、逮捕までした男に惚れるなんて。
そう思ったものの、ドンシクとジュウォンの間の空気は特別なものだと知っていたから、自分でも意外なくらいすんなり受け入れた。
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DONE怪物jwds④再会「ジフンがこの前マニャンで会ったって――何だったの?」
ナム所長の命日。精肉店でプデチゲを食べてから、墓参り兼、散歩に付き合わされている。ジェイたち一行とは違う道にそれ、ジュウォンはドンシクと二人で話しながら歩いている。
顔を合わせたのは逮捕の件の後では初めてだが、電話やメッセージは何度かしていた。
「家出人がマニャン出身者だったので、ジフンさんに案内してもらいました。ジェイさんの店に近かったので裏に車を停めさせてもらって、お水をいただきました」
「ジフンは忙しかったから、ハン警部補が店に置き去りにされてたって、ジェイが言ってたよ。絡まれたでしょう」
「ええ。ドンシクさんに感謝しているんなら、今後も元パートナーとして恩返ししろとか、過ちを償うために頑張っていることを報告しろとか、人を挟んで伝言ゲームをしないで、直接ドンシクさんに電話しろとか、馬鹿だとか臆病だとか――散々、いじめられました」
1725ナム所長の命日。精肉店でプデチゲを食べてから、墓参り兼、散歩に付き合わされている。ジェイたち一行とは違う道にそれ、ジュウォンはドンシクと二人で話しながら歩いている。
顔を合わせたのは逮捕の件の後では初めてだが、電話やメッセージは何度かしていた。
「家出人がマニャン出身者だったので、ジフンさんに案内してもらいました。ジェイさんの店に近かったので裏に車を停めさせてもらって、お水をいただきました」
「ジフンは忙しかったから、ハン警部補が店に置き去りにされてたって、ジェイが言ってたよ。絡まれたでしょう」
「ええ。ドンシクさんに感謝しているんなら、今後も元パートナーとして恩返ししろとか、過ちを償うために頑張っていることを報告しろとか、人を挟んで伝言ゲームをしないで、直接ドンシクさんに電話しろとか、馬鹿だとか臆病だとか――散々、いじめられました」
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DONE非常宣言✕怪物クロスオーバー②副✕元とjwds前提で、ヒョンスとジュウォンがお隣同士に住んでるアースの話です。
一応、片方を観てなくてもネタバレ過ぎることは踏まずに読めるようにはしましたが、両方観た人はあ~ってなるといいな。
友人「お隣に入って行った人、誰だったかなぁ」
パク・ジェヒョクはそう言いながら靴を脱ぎ、部屋の主であるチェ・ヒョンスを振り返った。
「ドンシクさん、ですかね」
ジェヒョクを迎え入れた時、隣家の方でも話し声が聞こえた。多分、彼だろう。
「ん。そう呼ばれてたな」
エレベーターから一緒だったなら、数分考えても思い出せず、もやもやしているのか。
「知り合いじゃなくて、ニュースか新聞で観たんじゃないですか?ほら、警察庁の――このマンションにもマスコミが来てたから。あなたが好きそうな事件だと思ってました。権力を恐れず汚職を暴く人が好きだったでしょう」
隣家に住むのは件の長官の息子、ハン・ジュウォン。その後の展開も含め、ドラマチックな事件だった。イ・ドンシクはこのところよく、ジュウォンを訪ねて来る。
4801パク・ジェヒョクはそう言いながら靴を脱ぎ、部屋の主であるチェ・ヒョンスを振り返った。
「ドンシクさん、ですかね」
ジェヒョクを迎え入れた時、隣家の方でも話し声が聞こえた。多分、彼だろう。
「ん。そう呼ばれてたな」
エレベーターから一緒だったなら、数分考えても思い出せず、もやもやしているのか。
「知り合いじゃなくて、ニュースか新聞で観たんじゃないですか?ほら、警察庁の――このマンションにもマスコミが来てたから。あなたが好きそうな事件だと思ってました。権力を恐れず汚職を暴く人が好きだったでしょう」
隣家に住むのは件の長官の息子、ハン・ジュウォン。その後の展開も含め、ドラマチックな事件だった。イ・ドンシクはこのところよく、ジュウォンを訪ねて来る。
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DONE非常宣言✕怪物クロスオーバー①副✕元とjwds前提で、ヒョンスとジュウォンがお隣同士に住んでるアースの話です。
一応、片方を観てなくてもネタバレ過ぎることは踏まずに読めるようにはしましたが、両方観た人はあ~ってなるといいな。
隣人「ジュウォナ、今そこ通った人見た?パク・ジェヒョク氏に似てたね。あの、飛行機の」
ドンシクの言葉にジュウォンは軽く頷いてから、「本人ですよ」と返した。
「え、このマンションに住んでるの」
「いえ。お隣のチェ・ヒョンスさんの部屋に来たんでしょう。ヒョンスさんが、ジェヒョクさんの話をよくしてくれます」
二人とも、つい最近あった大きな事件の功労者の一人だ。
「お隣と仲がいいの?珍しい。どんな人?」
この部屋の主であり法であるジュウォンは、ドンシクが脱ぎかけた上着を奪うように預かる。
「いい人ですよ。年はあなたと近いです。越してきた頃から色々と気づかってくださって――僕が知る中で一番、まともな人かもしれません。ヒョンスさんが家を空ける時にたまに頼みごとをされるので、買ってきて欲しい物をお礼としていただきます」
4779ドンシクの言葉にジュウォンは軽く頷いてから、「本人ですよ」と返した。
「え、このマンションに住んでるの」
「いえ。お隣のチェ・ヒョンスさんの部屋に来たんでしょう。ヒョンスさんが、ジェヒョクさんの話をよくしてくれます」
二人とも、つい最近あった大きな事件の功労者の一人だ。
「お隣と仲がいいの?珍しい。どんな人?」
この部屋の主であり法であるジュウォンは、ドンシクが脱ぎかけた上着を奪うように預かる。
「いい人ですよ。年はあなたと近いです。越してきた頃から色々と気づかってくださって――僕が知る中で一番、まともな人かもしれません。ヒョンスさんが家を空ける時にたまに頼みごとをされるので、買ってきて欲しい物をお礼としていただきます」