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    愛し

    キタハル

    DONE半→伝 呪ったり攫ったりしてこないタイプの満月の日の話。半が先生になって二年目くらいのイメージで書いてます。半が生まれ持って得意なのが書物を読み解いたり火薬を配合したりすることで、こどもを愛し慈しむ技術は努力して後天的に手に入れた美点だといいなと思っている 善く在ろうとするひとはうつくしいので
    夜に光満月の夜。
    「月がきれいですね」
    などと呑気なことを言って、月見に誘った。
    声をかけられた山田先生は私が情緒を解したとでも思ったらしく、機嫌よく二つ返事で承知した。最近生やしたかっこいいお髭を撫でて、何か菓子でも出そうかななどと楽しそうに戸棚に向かう。残念ながら、この人を誘う理由に使わせてもらっただけなのは黙っておく。山田先生と二人でいる時間は心地よく、嬉しくて、少しソワソワする。
    月見などと言ったが大層なことをするわけではない。学園の教師たちには、有事にはこども達を守る役目もある。軽い気持ちで外出をするのも憚られたし、酔わないとしても酒を口にするのも抵抗がある。紙ばかり睨んでいたら目が疲れてしまいました、廊下に出てぼんやり月を眺めませんか、せっかくの満月ですし、というだけの話である。
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    deathpia

    DOODLE3月のテーマ「卒業」! 恋愛シミュレーションゲームの主人公である獣殿のパロディです~~いろんな意味で寛大な気持ちで読んでください
    失恋旅行制服を着て友達と二人きりで観覧車に乗りたい。 高校卒業を間近に控えたラインハルトとしては、そんな青春映画のヒロインのような願望を抱いているわけでもないのに、今日の一日の終わりはこの姿で締めくくられることをずっと知っていたような気がした。 たぶん、即興で通学路を外れてバスの切符を切った後、バス停で偶然会った友人と並んで座り、行き先候補の中からこの遊園地を候補に挙げるずっと前からだ。
    派手に観覧車は回り、ふと見た窓の外から地面が徐々に遠ざかっていく。 出発時にラインハルトの隣に座り、熱狂的な熱狂者のように戯言を連発していた友人は、今や向かいの椅子にずれて座っていた。 そっとラインハルトを追う視線はいつものように意図を隠しているが、密かに笑う口から繰り出される妙な戯言に比べれば、むしろわかりやすい。 明らかに目の前にいるにも関わらず一歩引いて隅の影に溶け込もうとするような、たとえ二人が向かい合って座り、長い足が絡み合い、膝をぶつけたとしても今と大差なかったであろう友人の距離感は、時折、彼を引き寄せようとする卑劣な挑戦精神をラインハルトの中に呼び起こした。
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    soseki1_1

    PROGRESS求愛してる白鷹とそれに気づかない夜行梟/鷹梟/傭占
     そもそもの始まりは食事からだった。と、夜行梟は呟き始める。狩りのやり方を教えた頃から、やたらと獲物を取ってきたがると思っていたのだ。覚えたての狩りが楽しいのだろうと微笑ましく思えていたのは一、二年ほどで、そのうちどこからか料理を覚えて振舞うようになった。あれはそういうことだったのだ。給餌だ。求愛行動のひとつだったという訳だ。夜行梟はその真意に全く気付かず、私の料理美味しくなかったかな、悪いことしたな、なんてひとり反省していた。
     夜行梟の誕生日に三段の素晴らしいケーキが出された辺りから、つまりは今年のハロウィーンを終えた辺りから、いとし子は本領を発揮し始めた。まず、夜行梟の寝台に潜り込んだ。今思えばこのときに気付いてもよかった。よかったのに、夜行梟は布団の隙間を縫うように身を潜らせたいとし子に「怖い夢をみたのかい?」なんて昔と同じように声を掛けた。もうとっくに子供じゃなくなっていた白鷹は、このときは未だ我慢していた。「そんなものだ」とだけ言って隣に潜り込み、足を絡ませて寝た。今思い返すと完全に求愛だった。鷹族の習性だ。鳥型の鷹は空中で足を絡め合い、互いの愛情を深めるのだ。鷹族の遠い親戚からきちんと聞き及んだ話だった。のに、思い当たらなかった。まだ甘えん坊さんだな、なんて嬉しく思っていた。
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