ずぅっと一緒! 不意に前世の記憶を思い出したの!
なんと私と敢ちゃんは前世では姫と従者だった。それどころじゃない。その前世もそのまた前世もずっと私たちは姫と従者のままだった。私はどの殿方の元へ嫁いでも従者だった敢ちゃんだけを愛していたし、敢ちゃんもそうだったのに、立場の問題でたびたび2人の愛は打ち砕かれていた。
私は残像の余韻に浸りつつ、そのことを最近見た夢の話として敢ちゃんに話した。(夢とでも言っておかなきゃ、こんな恥ずかしい話、面と向かって言えないもの)するとあろうことか、敢ちゃんはあっさりそれらの夢が現実だと認めた。そうなの、敢ちゃんにも前世の記憶があったのよ!
「なら、前世の因縁に決着つけるか」
敢ちゃんは待ってましたと言わんばかりに、胸ポケットから小さな小箱を取り出した。中には運命の輪――結婚指輪が入っていた。
敢ちゃんの左目には、前世からずっと私たちを縛っていた輪が見えていたという。それは8の字を横にした、途切れることのない無限のかたち。だからどれだけ愛し合っても、私たちは生まれ変わるたびに引き裂かれるを繰り返してきた。
けれど今世で、指輪をはめた私たちが手を重ねれば、2つの輪はぴたりと重なり合い、この永遠のループは終わる。もう来世で会うことはないだろう――敢ちゃんはそう告げて謝ったけれど、それでいい。愛する人を愛せない来世なんか来なければいい。
こうして今、幾千の時を超えて、ようやく私たちの物語は完成した。