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    方位

    音羽もか

    DONE姉視点での彰冬。少し未来の話。姉が弟をからかったり見守ったりしてる。要素は彰冬だけですが捏造は全方位。
    しあわせ色は何色か「高校卒業したら出ていく、とか言ってた割にはなかなか出ていかないのね」
    「は?」
    大学から帰ったら、弟が家にいた。リビングのソファで何やらスマホをいじっている。それが、物件検索アプリであることを、私は知っていた。

    弟――彰人は、高校三年生の秋頃にはもう進路を決めていた。当時浪人生だった私とは真反対かもしれない。てっきり、相棒と同じ大学に行くとか言い出すんじゃないかと思っていたけれど、「オレには無理」とのことだった。冬弥くんの進路は知らないけれど、彰人がこんなにあっさり諦めるようなところなのだから、きっとすごく頭のいい大学なのだろう。
    彰人の進路は専門学校だった。中学の頃に始めた音楽活動に全てをかけている彰人は、はじめはフリーターでもやりながら活動を続けるつもりだったらしい。けれど、彼の相棒――冬弥くんの説得と、それからバイト先の店長の説得で、スタイリストの専門学校に進路を決めた。冬弥くんからは、彰人の気持ちはわかるが今の音楽活動の為に未来の音楽活動が危ぶまれかねない進路は褒められたものではない、と言われたらしい。全く、しっかりものの相棒がいてくれてよかった。それすら、最初は「本気でスタイリスト目指すやつが集まるところに、ファッションが好きだから程度の感覚で行けるか」と言っていたらしいが、そこはバイト先の店長が「じゃあうちで正社員として雇いたいから」と提示してくれたそうだ。この頑固男のためにあれこれと手を尽くしてくれる人達には感謝しかない。
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