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    映画館

    ケミカル飲料(塩見 久遠)

    DONEミキとクラ。映画館に行く。ミッキは自分の気持ちに自覚がありそう。
    2023/1/28にTwitterにアップしたものの再掲です。
    どんな映画よりも予測がつかない けたたましくブザーが鳴り響き、場内が暗くなる。光源となるのは物語を映すスクリーンだけだ。
     隣に座る彼は、映画館にすっかり慣れたものだ。普段は金属でも入っているのかと思うほど真っすぐに伸びた背筋だが、今は力を抜いて椅子の背もたれに体重を預けている。
     彼を最初に映画館に誘ったのはいつだっただろうか。きっかけが単館のリバイバル上映だったことは覚えている。ある日、小さな映画館の前を通りかかったら、昔観たことのある映画が取り上げられていた。上映時間が迫っていたが、二人とも急ぎの用事もなかったので、そのままチケットを購入してしまったのだ。
     癖毛の彼にとってはこれが映画館初体験だったが、思いの外お気に召したらしい。それ以来、それなりの頻度でこの小さな映画館に足を運んでいる。理解可能な言語かつ、お手頃価格で観られるものということで、海外作品のリバイバル上映に偏りがちではあるが、彼はあまりジャンルに頓着しない性質なので問題は無い。ラブロマンス、コメディ、サスペンス、アクション、ミステリー、ホラー等々、食わず嫌いは良くないということで観てみたら、案外どれも楽しめたようだ。あまり前衛的過ぎると困惑していたが、幸か不幸か二人で鑑賞しているので、愚痴やら解釈やらを吐き出す機会を得られていた。
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