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    本丸

    いなばリチウム

    PROGRESS・本丸が襲撃されている
    ・襲撃されたら本丸を消滅させることになってるみたいな感じ
    ・審神者は死ぬ
    ・肥前は間に合わない
    ・最期は一緒
    バッドエンドルート主肥 俺の片腕を切り落し、腹の深くまで刃を通した異形は、それで満足したのか、べっとりと赤にまみれた刃を一振りすると、低い咆哮を一つ、あとは振り向きもせず立ち去った。ばかだな、と思う。俺の刀達なら、確実に息の根を止めて、息絶えたのを確認してからその場を後にするだろう。生き残った敵が、例え致命傷を負っていたとしても息がある限りは何をしでかすか分かったもんじゃないのに。そういう小さなミスが命取りなんだよな。

     実際のところ、出血量は半端なくて足元は血の海だったし、意識も朦朧とはしていたけど、でも、俺はまだ生きていた。生きていて、利き腕は動いたので、緊急用に至急されている鎮痛兼止血兼気付薬兼、まあその他色々の、とりあえず為すべきことを為すまで動けるようになる薬を自分に投与する。緊急用で審神者一人につきひとつしか支給されないとあって、効果は絶大だった。痛みは引いて、遠のきかけていた意識もはっきりしてきた。出血もとりあえずは止まったようだ。とはいえ、ただそれだけで、なくなった腕は生えてこないし、流した血が戻ってくるわけではないからふらつくし、裂かれた腹から赤黒い何かが見えてるのはちょっとまずいと思うけど。幸い、執務室だったのでそのへんを探せば使えそうなものは出てきた。救急セットの中に包帯が入っていたけど、片手じゃうまいこと固定できないし、とりあえず中身が出なければいいかと判断して、腹にガムテープをぐるぐると巻き付けた。包帯で巻くよりはやりやすかったけど、片手でするには時間のかかる作業だった。四苦八苦しながらどうにか穴を塞いで、廊下に出る。腕って実は結構重かったんだな。うまくバランスがとれなくて、腕がある方に傾いてしまう。
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    ma99_jimbaride

    MOURNING㊗️特命調査・慶応甲府復刻🎉

    とある本丸の則清です
    猫は眠れない 午後は柔らかな陽光に春の気配を知るような穏やかさだった。いつもは障子紙に日が透けるのを見ながら微睡んでいるはずの南泉一文字は今日は炬燵を抜け出し、膝を揃えて正座している。思わず肩を内に寄せて縮こまってしまうのは仕方のないことだろう。ちらりと上目で窺う相手は、そんな南泉を気にも留めず窓枠にもたれて外をぼんやり眺めている。
     普段なら、そこにいては身体が冷えるから、などと言って自分も炬燵に潜り込むのだが、今はそういう軽口を挟めそうにない。南泉がつい他に比べて気安い口をきいてしまうのをいつも鷹揚に赦してくれるこの相手は現在、物思いに沈んでいるらしい。
     長い睫毛で重そうな目蓋から覗く薄い色の瞳が物憂げなのは普段と変わりない。いつもはその下の口許が不敵に弧を描いていて、そのアンバランスさが顔の中で不思議に調和して納まっている。南泉はその思慮深さと軽妙さの均衡を保った喰えない性格を含めて、この「じじぃ」を自称する刀を敬愛している。敬愛しているから、いつもの笑みを引っ込めて目の前で黙り込んでいる一文字則宗に口を挟めないでいる。
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