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    えみった

    DONE朝菊ちゃんバンドパロ小説
    フライト時間や時差を考慮して微調整しました。ひとまず第1章は完成。やったー!
    ⚠️オフィス職員として男女モブが登場します。
    【冒頭の英文訳 : 一緒にいてくれとは言わない、だけど念のため灯りは点けておくよ。
    知らないよな、俺がこれまで歌った全ての静寂におまえの名前を書き込んであるよ。】
    アーサーさんの詩の一部を引用しました(という体裁)
    (1)

    I’m not asking you to stay, but I keep the light on just in case.
    You don’t know it, but I wrote you into every silence I ever sang.

     雑踏の中で、少年が大きな楽器ケースを背負って歩いている。ショートヘアで、ブルネットとは違う、光を通さない黒髪。身につけているものは上から下まで全て黒で、そこだけ異質、まるで大きなカラスが歩いているようだった。高校生くらいかもしれない。行き交う人より頭半分ほど小柄にも関わらず、誰とも接触せず、器用にすいすいと進んでいる。
     少年は交差点に行き着くと四方を見回した。しばらく考えこむような仕草のあと、意を決した様子で同じく交差点で立ち止まっている老夫婦に話しかけた。お互いに身振り手振りのやりとりを経て、老夫婦は笑顔で手を振り少年は頭を下げた。日本人だ。日本で育って、つい最近ここへ来た日本人。確実に、たぶん。
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