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    dentyuyade

    DONE佐野と志筑の話。アホなことを真面目にやっててほしいです。
    足首足首に惹かれる。ソファに横たわって投げ出されている足の、末端。裾と靴下のどちらにも覆われていないそれに、佐野はいつも心臓が止まるような、この世の音が全て奪われてしまうような、そんな衝撃を受けるのだ。平静を取り戻すためにこくりと唾をのむのは、トンネル内に入った電車での感覚とよく似ている。一度瞳を閉じて、ほうと息をついた。変態じみている、と思う。自分はそんな変なフェチズムなどは持っていないはずなのだが。頬に手のひらを打ち付ければ、非難するようにぱちぱちと乾いた音が鳴る。断じてそんな嗜好はない。ないのだ。
    「……」
    誰にするでもない言い訳を心中で続けながら、彼の足に触れる。中途半端に隠れているからいけないのだ。別に佐野だって剥き出しになっていたらそれほどまでに気にはならない、はずである。否、そもそも別に足首にそこまで関心を抱いたことなどこの男以外にはなかったのだが。やりきれないもやもやとした感覚を追いやるようにして靴下を引っこ抜き、その裾を捲る。性急なその動きは睡眠中の脳の許容範囲を超えていたのか、弛緩していた体にわずかに力が灯るのがわかった。
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    dentyuyade

    DONE志筑と佐野の話。この辺から志筑がダメ(ダメじゃない)になっていく。
    口が軽くて重くなるこんなはずじゃなかった、などと表現すると途端に嘘くさく感じられてしまうものだが、実際にそういうしかない場面も存在するのだと知った。佐野はずきずきと痛みだしそうな頭と、背を伝う汗とにどう落とし前をつけるかで必死に頭を回す。どうしてこんなことになったんだったか。絶え間ない居心地の悪さと一抹の罪悪感に割かれてしまっている脳みそのリソースを必死に還元しながら、眉をひそめて本意ではないというポーズを露骨にとった。目の前の同年代の女子たちがあからさまにとっつきにくそうに自分をちらちらと伺っているのを感じる。ごめん怖がらせて。でもこれが俺なりの自衛だから許してほしい。恨むならその隣の男を恨んでくれ。口にしない言い訳をつらつらと並べ立て武装した気になって、一人息をついた。事の発端は佐野の所属している工房の先輩が、あまりに女っ気のないその姿に要らん心配をかけたところから始まる。数日前それらしい話を振られたときは「ああまた言っとるわ」程度に粗雑にあしらっていたのだが、それが見事に裏目に出た。というか、それを口実に自分たちも出会いが欲しかっただけなようにも思えてくる。
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