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    賢者

    あおい

    MOURNINGファウストと賢者ちゃん♂
    脳内整理メモ
    信じられなかった。
    まさかこんなことをするわけがない、きっと敵を欺く演技なのだ、そういう思いが心のどこかにあったんだろう。
    僕は本当に火をつけられるまで動けなかった。いや、火をつけられても動けなかった。
    やがて足元をなめる炎の熱が、僕に友の裏切りを認めさせる。
    だがその時にはもう手遅れで、千々に乱れた心は魔法を形作れなかった。
    燃える、視界が煙と陽炎でにじむ。
    あっという間に全部熱くなった。
    特に頭が熱い、痛い、喉が燃えて息ができない、くっつく、ああ!助けてくれ!
    何も見えない、でもこの炎はずっと信じていた彼が、彼が僕を燃やしているのだ。
    周りの様子は分からない。
    僕は苦痛と恐怖と憎悪とごちゃごちゃの恐慌の中で何を叫んだだろう。声は出ていたのだろうか。
    ただ苦しくて苦しくて訳が分からなくて、熱くて、こうなっても信じられない、なんて馬鹿なことを思って、喚き散らしていたような気がする。なんと言ったかもう判断ができなかったけれど。ともかく僕は最後まで愚かだった。

    魔法使いは人間より長く生きる。
    その途中、たくさんの記憶を捨てながら、だからこそ大切な記憶は捨てないよう、忘れないようにと努めて 1121

    あおい

    MOURNINGフィガロの得意な魔法にドン引きする賢者ちゃん(♂)俺が引いていることだけは感じ取っているらしいフィガロが、先程言った通り小さな花火を魔法でつくっている。
    それをぼんやり目に映しながら、今度は俺自身の心が背筋を寒くする。
    おそらく、俺に得意な魔法は何?と聞かれたから実際にやってみせた、それだけだ。
    彼にとってはそれだけのことでしかない。
    耐え難い苦痛と、それを一瞬で忘れさせる高揚。甘い声。
    正しく麻薬だ、と思った。あんな魔法を本気で、例えば恒常的に使われたら人の心はどうなってしまうんだろう。
    誰かに使ったことがあるのか、とか、なんでそんな恐ろしい魔法を何も言わずに試すんだ、とか、言いたいことは色々あったが怖くて言えなかった。
    ただぼんやりと、彼が魔法で生み出した暖かい光を見ている。
    そんな俺を見てやっぱり見た目に分かりやすい方がいいのかな、などと言いながら彼は嬉しそうに笑う、いつもの笑顔だった。
    フィガロ先生、と自分を指すときの優しい顔だ。
    「フィガロは」
    「うん?」
    知らず言葉がこぼれる、何を言おうとしたわけでもない。
    何も続けられず、かと言ってなんでもないとも言えず、俺はそのまま黙った。
    自分の手元を見つめて押し黙る俺にフィガロは何 875