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    電話

    kotemari200723

    DONE9月新刊「雨降ってさくら散る」 サンプル
    A5/64ページ/600円(予定)/すおさく

    🫖は🌸へ向けて密かに思いを寄せていた。🌸に好きな人がいると知り、寂しさや切なさ、苦しさを抱いていた時、一本の電話が🫖に届く。
    ────🌸が記憶喪失になりました
    記憶喪失の🌸とそんな🌸の事も好きな🫖による、すおさく小説本
    雨降ってさくら散る サンプルプロローグ.雨粒の弾ける音

     ざぁざぁ、と、屋根に打つ雨音が響く。窓を叩く雨粒がぱちりと弾けて、雨が一本の筋になって重力に従い落ちていった。
     カチカチ、と、時計の指針が動く音がする。目の前にいることははぼんやりと外を眺めたあと、手元にあるコップに視線を戻して、布巾できゅっきゅっと心地よい音を鳴らしながら拭き始めた。
    「朝テレビで言ってたけど、今日はずっと雨だって」
    「そうらしいですね」
     カップをソーサーから持ち上げて、片手で持つ。中を覗いてみれば、オレンジ味が強い赤い紅茶が揺れた。
     ─────ねぇ、好きな子いる?
     雨が一日中降る教室の中、切なげな表情で窓の外を見る桜にふと聞いてみた。桜はすっかりと黙り込み、何も言わない。が、こちらに顔を向けた時、その表情が答えを物語っていた。
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    kinotokko

    DOODLE昼間はみんなでワイワイ誕生日会して21日に日付変わる瞬間に電話でリョマイ声を揃えて「「今年も誕生日おめでとう」」って真夜中の二人きり誕生日してほしいっていう。
    ブブブ…
    振動音に気付きスマホ画面を見るとリョータからの着信を知らせる文字。時刻は23時50分、間もなく5月20日が終わろうとしている。
    ピッ
    『おーいマイ起きてるかぁ?』
    「起きてるから電話出たんでしょ」
    『それもそだな!』
    「それにしても今年はいつもよりちょっと早っかったわね」
    『あぁ、うん……何か待ちきれなくて、な』
    にゃはは、とリョータが誤魔化すような笑い声をあげる。
    いつからか私とリョータで、毎年5月20日から21日に日付が変わるほんの数分前にどちらかが相手に電話を掛けて日付が変わる瞬間にお互いを祝う、ただそれだけの、2人だけの習慣ができていた。
    「まぁ分からなくもないけどね、今年は去年とは違うから」
    今年はイナさんの弟であるタイセイ君が転校してきて、その直後にアンノウン出現とタイセイ君の適正。それだけでも大事なのに、最近はあんなに適正値の変化が無かったリョータが、切望していたシンカリオン運転士になれた。今年はホントに特別な誕生日。リョータにとっても。
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