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    mssk

    PROGRESS5/5のネクオペで発行予定(間に合えば)の小冊子の冒頭になります。

    古城ローグライク凋零残響END後の傀博♂のお話
    新刊セットのノベルティの予定です
    ※※少し人を選びそうなお話のため、いらない場合は新刊セットではなく新刊単体でお求めください※※


    含まれるもの
    お互いのことが「一番」大事な傀博
    さよならワールドエンド石畳の廊下を踏みしめる、地響きのような音が鳴っていた。人などよりもずっと大きくて質量のあるカラクリが、迷う素振りもなく鈍い動きで城の奥へと進む音。だが図体の大きさから想像できない程度には器用なようで、普段はアコーディオンを抱えているはずの腕で今は一人の男をしっかりと抱えている。
    キコ、キコ、キコ。カラクリの足が進むたびに人工関節は小気味良い音でリズムを歌う。けれどその足取りのたびに逃げ場をひとつ潰されるようで、私はその軽快なリズムを聞くたびに体を縮めることしかできなかった。
    「……下ろして、くれ」
    『アナタニ指示権限ハアリマセン。⬛︎⬛︎様ノ回収ハクリムゾンソリティアカラノゴ命令デス』
    少しノイズ混じりの機械音声はそう告げる。そうして、相変わらず一切歩みを緩めぬままただ城の中へと戻って行った。
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    plntanightlunch

    DONE残響スピンオフ。もういくつめかわからない。三井酒店で働くモブの久保さんが、「7」に行く話です。
    おいしいお酒が飲みたいだけなのに 店に入る少し前に約束をしていた友人から遅れると連絡をもらった久保は急がずにきてと返信し、そのまま店に入るか本屋に行って時間を潰すか数秒迷った後で、やはりそのまま歩を進めるほうを選んだ。かばんには読みかけの本が入っていたし、今日行く予定の店は一人で飲むことに躊躇するような店の雰囲気でもない。なにより喉が渇いていた。

     歌舞伎町はそれほど行きたい街というわけではない。ごちゃごちゃしているし、道には人も多ければゴミも多い。そのくせ隠れた名店みたいなのが多いのが、ついつい好きでもない街に足を向けたくなってしまう理由でもあるのだが。「7」だってそのひとつかもしれない。ホテルほど敷居も値段も高くなく、だからといってカジュアルに振りすぎていることもない。外の喧騒とは逆に静かに飲むことだけを目的としている客が集まっているし、酒はうまい。カウンターに座るとわかるが、バーテンダーの後ろの棚に並ぶ酒は結構なコレクションで、これはまあ、うちの社長の営業の成果だろう。口はうまいからあの人は……考えるともなしに考えて、そこまで思考が到ったところで、久保は息を吐き出した。仕事が終わってまで会社のことを考えるなんてよくない。オフィスを一歩出たら仕事のことは忘れる。これが日々を穏やかに過ごす大原則だというのに。
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