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    香水

    esora03

    DONE香水を手に入れてから書こうと思っていたのに耐えきれなかったやつの末路です。
    ムウマリュですが、ムウさんほぼ出てこないです。お許しください!
    あなたのすべてを忘れたくない 忘れたくなかった。なにもかも、忘れたくなかった。彼のすべてを覚えていたかった。顔、体、声、言葉、匂い――ぜんぶ、ぜんぶ覚えていたい。忘れたくない。
     それなのに、どんどん彼が遠ざかっていく。

     最初に消えていく五感の記憶は声だという。実際、わたしは彼の声を思い出せなくなっていた。
     一人で過ごしているときに、彼の姿を幻で見るのに彼はなにも言わない。幻覚ならなにか言ってくれればいいのに、彼はただ微笑むだけだ。その事実に気付いた時、最初はくしゃくしゃになるくらい泣いたのに、段々とその状況に慣れてきて、わたしも彼に微笑み返すしかできなくなっていた。

     次に忘れるのは顔らしい。でもわたしは、彼の写真を持っていた。まだナタルがいた頃にミリアリアさんが撮ってくれた写真と、メンデルで回収された幼いころの彼の写真。その二枚をまず起きる時に見る。今日も一日見守っていてね、とムウとナタルにお願いして、日常を過ごすのだ。そして寝る前にも写真を見る。どうか夢の中で会えますように――そんな風に願いながら眠りにつくのが日課になっていた。
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    subaru_no_iine

    INFO昨日スペースで話に上った、推し香水を発注した際の依頼を残しておいたので見ていただくて流します。書生さん×お嬢さんの、6年間のすれ違いを香りにしていただけてハッピーでした。香りの解説も最高なんですよ…見て…
    推し香水発注メモ明治後期~大正~昭和初期をモデルにしたゆるふわデモクラシー時代

    男性:2月生まれ。女性の家(裕福な商家)で貧乏書生を2年務める→大学を卒業、官僚に。書生時代から女性を好きだったが、身分差によりアタックを諦めていた。政略結婚させられる女性の結婚式前夜に一度だけ結ばれた。新郎へのちょっとした意趣返しのつもりで女性の結婚式を台無しにしたことを悔いていた。6年間罪の意識に苛まれたまま現実逃避で勉学に励み、就職が決まったので女性へプロポーズ。

    女性:生年月日不明。高嶺の花のお嬢さん。勉強が好きだが、『女に学はいらない』と女学校を辞めさせられ、政略結婚することに。密かに恋い慕っていた男性に夜這いをかけて純潔を捧げるが、男性の自分への好意に気づき、未練を抱かせてしまったことをずっと悔いていた。結婚式で新郎とその元恋人に逃げられて笑いものになり、縁談が途絶えて嫁き遅れる。男性と結ばれることを諦めて隠棲しようと決めていた。しかし6年後、大学を卒業した男性にプロポーズされる。
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    zeppei27

    DONE企画2本目、うさりさんよりいただいたご指名の龍馬で、『匂いを嗅ぐ』です。龍馬は湯屋に行かないのでなんというか……濃そうだな、などと具体的に想像してしまいました。香水をつけていることもあり、変化を楽しめる相手だと思います。
     リクエストありがとうございました!
    聞香 千葉道場の帰り道は常に足取りが重い。それなりに鍛えている方だが、疲労は蓄積するものなのだと隠し刀は己の限界を実感していた。所詮は人の身である。男谷道場も講武館も、秘密の忍者屋敷もすいすいとこなしたところで、回を重ねれば疲れるのも道理だ。
     が、千葉道場は中でも格別であった。理由の一つは毎度千葉佐那が突撃してくることで、一度は勝負しないと承知してくれない。そうでもなければ、「私に会いに来てくださったのではないですか」などとしおらしい物言いをされるので弱ってしまう。健気な少女を健全に支えたつもりが、妙な逆ねじを食わされている形だ。
     佐那だけならばまだ良い。性懲りもなく絡んでくる清河八郎もまあ、どうにかなる。問題は最後の一つで、佐那が坂本龍馬と自分との手合わせを観たいとせがむところにあった。彼女は元々龍馬と浅からぬ因縁があり、ずるい男は逃げ回るばかりで年貢を納めようとしない。その癖、隠し刀の太刀筋が観たいだのなんだの言いながら道場までついてくる。佐那は龍馬と手合わせできないのであれば、二人が戦う様を観たいと譲歩してくれるというのが一連の流れだ。
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