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    ちゃつぼ

    PAST転生。
    魂で恋をした男たちの話。

    2024.2.3 今夜帳の中で【5】
    愛の領域 女のように長い髪。低い声と重い筋肉を持つ男。
     子宮なんてありはしないから、尻の奥に精を注ぐ。
     マメのできた硬い掌だろうと繋ぐだけで嬉しくて。
     悪い内緒話をいくつもして、馬鹿みたいにはしゃいで一緒に転げ回った。
     うぜえ説教は癪に障るし、鼻血吹くほど殴ってくるし、楽しいことばかりでもなかったけど。

     恋だった。

     あの日オマエが隣からいなくなっても。

     今日この手がオマエを殺しても。

    「恋は愛に、ってね」

     



    *





     彼の気配を感じることが、目にするよりも好きなのだと思う。そこにいると知っている、それだけでいいのだと。

     足音と呼ぶ声、存在感が、綺麗に混ざり合って私へと覆い被さる。上着を羽織った時の感覚に近い。肩を掴まれた掌に然したる力は込められてはいなくとも、抗うことなんて思いつきもしないのだとばかりに、私は腰を捩って向きを変えている。探すまでもなく恐らく最短で視線の出所へ行きつくと、すぐさま眼差しを掬い取られて、ふんわり柔らかく抱き締められる。応えたいという欲求が湧き立つのと、開いた口に舌を差し込まれるのはいつも同時で、正確に、少しだけ上向けていた眼をそっと閉じて、私も彼を抱き返す。触れ合う度、彼の言う「体が覚えている」ということについて考える。確かにそうだと感じる。思考と動作のどちらが先んじているのか、はっきりとは分からない。肉体に引っ張られているのなら、それだけ私たちは愛し合っていたのだ、心から。
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