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    4月26日

    makoura_mt

    PROGRESSこっそりこそこそ 無配にしたいなーー……
    新人俳優×ベテラン俳優
    もしも、ドラマだったら?
    作成:R4年4月26日
    未定(更新4/27)bgm 雨は夜半に


    【口づけくらいさせてあげればよかったと後悔したよ】
    手の中でくしゃりと音を出す封筒を抱きしめたまま次第に目を閉じていく。閉じた視界に映るのは永遠に続くかのような黒。そこに思い浮かべるべき人間は、いない。詰めていた息を吐き、閉じた視界を段々と開けていく。光が差し込むのに一瞬目を細めたが、完全に目を開けば真っ白な壁と俺を映す鏡があった。俺の顔には何の感情も浮かんでいない。愛する人が死を遂げ、愛の証を手にしても塩の水すら流れそうもなかった。
    「…恋か」
    何度目かの呟きと共に、俺はシミ一つない天井を仰ぎ見るのだった。

    ––愛は劇中–– 


    子供の頃から演技をしていると、不思議な感覚に浸るようになる。それはきっと誰でも一度は思うことだろう。自分は一体何者なのかと。あるときは、天涯孤独の子供、家族に愛された子供。成長すれば、不良になったり、頭のいい生徒会長になったり。刑事だったり、犯罪者だったり。そうするとだ、自分は一体どこにいるのか分からなくなる。今までこなしてきた役であって、役でない。俺という人間はなんなのだろうと。役を通して世間を知ってきた俺に今、立ちはだかる壁が、恋愛だ。与えられた役になりきり、自分の立場で考えた時にでてくる演技は想像でしかないが、想像でも十分様になっていた。しかし、恋愛というものをしたことのない俺は、彼の考えることが表現できない。ましや、男同士だ。今まで誰かを愛する役をしてこなかったつけが、こんな高いレベルで回ってくるなんて思わないだろう。そう思った時、俺と言う人間がとてもつまらないように思えた。役でしか生きていけない空っぽな俺が少しでも中身を保てるようにと、彼を、理解しようとしている。
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