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    palco_WT

    DONETricks 199話の弓場隊+王子蔵内の中華ご飯のその後の小話。弓場王の過去がある水王。
    https://twitter.com/palco87/status/1338726343077326848
    「みずかみんぐ、お土産持ってきたよ~、蘿蔔糕と春巻」
    「おう、すまんな。ちょうど腹減っとったところや」
     ご機嫌な様子でドアを開いた王子に、水上は米朝の二階借りの落語のDVDを止めて玄関へと顔を巡らす。
     軽やかな足取りで、王子は美味しい匂いのするドギーバッグを彼が座っている前へと置いた。おおきに、と戻ってきた恋人に水上は軽くキスをする。
     こんなやりとりもいつの間にか日常になってしまっているのだから、人は慣れる生き物だというのが水上の正直な感慨ではある。
    「で、どやった、神田の追い出し会」
    「美味しかったよ~」
    「どんな感想や。せめて、追い出し会じゃなくて打ち上げとか慰労会ってツッコミ返せーや」
     ボケた甲斐がないではないか。明敏な王子ならすぐに打ち返してくると期待しているのだし。
    「だって弓場隊を抜いたぼくが、中位落ちになっちゃったランク戦打ち上げに顔を出しましたっていうのもね。ちょっと無神経っていうか」
    「自分、そういうところは気ぃ使いやのう」
    「尊敬する先輩と古巣には配慮するさ、さしものぼくだって」
    「ほうほう」
     頬に触れる掌に、王子は撫でられた猫みたいな顔で水上を見やる。だ 1264

    palco_WT

    MAIKINGフィルター みんぐと王子と。
    新書メーカーでTwitterにあげたやつ。https://twitter.com/palco87/status/1337402360893587456
    災害や内乱などで壊れ、復興しかけた場所を、ずっと撮って回っているのだと彼は言った。それこそ世界各地を。
     もし行けるなら、近界だっけ、向こうの世界もフィルムに収めてみたいな、と子どもみたいな笑顔で男は笑った。
     壊れかけ、修復のまだただなかにある風景で、そこで生きていく人たちの姿を、一枚の銀塩に写し取る。三門市までやってきた男が、そのモデルに選んだうちのひとりは、意外なことに水上だった。


     風が吹き、春の予感をはらんだほのかな温もりをともなった風が、ばさばさと屋上に佇み、警戒区域を見下ろす水上のバッグワームをはためかせる。本来、トリオンではない物理法則の影響を受けないバッグワームが風に揺れるのは、それが換装体ではなく、生身に隊服をまとい、更にバッグワームを模したマントを羽織っているからだった。
    「なんで、彼なんですか」
    「色気かな」
    「色気?」
    「そう。一秒後には自分を害してしまいそうな危うさって言ったらいいのかな。不意に気まぐれで、線路やビルの屋上から飛び降りてしまいそうな」
    「確かに、ぼくたちの防衛任務《しごと》はとてもじゃないが安全というものではありませんが、彼はそこまで捨て 931

    palco_WT

    DONE幸福の条件

    https://twitter.com/palco87/status/1336247005849350144 で蔵っちが一番だったのでつい書いた~
    たまには三人で食事をしないかと、蔵内が王子と水上に打診されたのは一週間ほど前のことだった。
     同隊である王子はともかく、生駒隊の水上とは防衛任務等の兼ね合いもあったが、たまたま週末にスケジュールが空いていたのでその日に王子が予約したというレストランで落ち合った。
     そもそも、王子と水上がわざわざ顔を揃えて尋ねたあたりで、これは何かあるなと察しはしたが、デザートまでたどりついたあたりで「ぼくたち籍を入れようと思うんだ」と言われて、少しばかりは驚くのではないかと思ったけれど、予想していたよりすとんと蔵内の中では腑に落ちた、というのが正直なところだった。というか、むしろ王子みたいな人間がそういう世間のシステムの迎合しようとしていることのほうが、少々意外な気持ちではあった。
    「……おめでとう。幸せになれよ、っていうのは陳腐かな。おまえたちなら誰に言われなくても自力でどうにかするだろうから」
    「そうだね! さすがはクラウチだ、ぼくらをよく分かってる」
     おおきに、と告げる水上の口調がぶっきらぼうなのは照れ隠しだ。対照的に王子は背中に大輪の薔薇とヒマワリとカスミソウを背負っているような爛漫とした笑 1098

    palco_WT

    DONEいっそ恋なら

    弓場×嵐山。原作時間軸より一年~二年くらい前。
    Twitterに新書メーカーで流したやつ。https://twitter.com/palco87/status/1321870729906774016
    知り合った高校の頃から、アポなしで遊びに来る時は、必ずメールなりメッセージアプリなり電話なりで連絡してくる男だった。
     嵐山准という人間は。
     だが今にして思えば、広報部隊という任を背負ったあたりのことだったろう。突然、独り暮らしの弓場の部屋を「少し、いいかな」と訪れて、途中のコンビニやファストフードで買ってきたらしいジャンクフードを手土産にして、その癖自分は全然それに手をつけず、弓場が淹れてくれた紅茶を黙って啜って、空になったら「また」と出ていく。そんなことが何度かあった。
     そして何度目かに気づいた。「突然悪いな」といつものボーダーの顔で見せているものよりもどこか影の薄い笑顔を浮かべて、玄関口に立つ嵐山の、僅かに濡れた襟足や彼が絶対まとわないコロンか、トワレか、とにかく高校生の男子には相応しくない香りに。
    「悪かねェーから、いい加減きっちり事情《ハナシ》聞かせろ。……迅や柿崎《ザキ》も呼ぶか、おい」
     それはよしてくれるかな、とそれでも笑顔を崩さないのは、いっそ立派と言えただろう。
     弓場が嵐山から引き出した「事情」はだいたい想像の通りだった。それだけ、陳腐な話ではあった。あくまで 2907

    palco_WT

    DOODLE合コンの頭数合わせに呼ばれてうっかりした弓場ちゃんが神田に回収されるの巻。
    (https://twitter.com/palco87/status/1331039561263181824)
    合鍵を貰っておいて良かった、と居酒屋から何とかか彼の部屋まで連れて帰ってきた弓場をベッドに横たえて、水やタオル、万が一嘔吐した時のことを考えてバケツと新聞紙をその傍らに用意する。
    「すまねェ」
     一度も聞いたことのない弱々しい弓場の声に、神田は眉をひそめながらもベッドの近くに引き寄せた椅子に腰かける。
    「大丈夫ですか?」
    「こんなことなら手ェすべったフリでもしてグラスを倒すほうが利巧だったかもしんねェな」
    「?」
     意味が分からずきょとんとした顔の神田に、店に迷惑かけるしなァと、弓場は言い足し、
    「俺の隣に座ってた女が化粧直しに立った隙に、反対側に座ってた奴が一服盛った気配があってな」
    「は!?」
     話には聞いたことはあるがそれは犯罪では???と神田はまなこが落ちそうなくらいに目を剥いた。
    「胸倉掴んで鼻骨のひとつもへし折ってやっても良かったんだが、幹事の知り合いの諏訪さんたちの顔ォ潰すわけにも行かねェーからな。間違ったフリして俺が呑んじまえばいいやと思って、一気に空けちまったんだが、睡眠導入剤ってやつだっけ? 結構効くもんだな。未成年だってェーのは言ってあったから酒呑むわけにはいかね 966