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    短い話を放り込んでおくところ。
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    狡噛さんを慰める宜野座さんのお話。
    800文字チャレンジ87日目。

    #PSYCHO-PASS
    ##800文字チャレンジ

    儚い季節(それはあなた) 狡噛はある種の事件が終わると、センチメンタルになることがある。そう、少女が絡んだ事件だ。ハッピーエンドに終われば彼はご機嫌で俺に酒を奢り、そうでなければ俺が彼を抱きしめ慰める。狡噛は優しい男だった。きっと紛争地でも多くの少女を看取ったのだろう。今回の事件は後味の良くない、少女たちが搾取され死ぬ物語だった。彼が耐えられるかどうかは分からないが、なるべく側にいようと俺は思う。
    「狡噛、水は?」
     彼は首を振る。
    「栄養バーでも食べたらどうだ?」
     やはり彼は首を振る。俺は見ていられなくて、狡噛が寝転ぶソファに座って、癖のある髪を撫でてやった。嫌だとは言われなかった。彼は彼で弱っているのかもしれない。
    「お前は嫌がるかもしれないけど、最後に優しくしてもらって女の子たちは喜んでいると思う」
     すると、やはり狡噛は何が分かるんだみたいな、嫌そうな顔をした。でもそうなんだよ、狡噛。優しくされたら嬉しいんだ。どんな打算があっても、優しくされたら嬉しいんだよ。俺が狡噛に手を差し伸べられた時の気持ちを、お前は知っているだろうか? 世界が変わったんだ、本当に芯から世界は変わってしまったんだよ。あそこで俺たちの関係が終わってしまったとしても、俺の世界はあの時変わったんだ。
    「お前は優しいから、そんなふうに思うんだろうな。打算で愛されても、それはそれで嬉しいものなのに」
     俺は狡噛にキスをする。彼はまだぼうっとしていて、俺は彼が傷付かなければいいのに、と思った。狡噛は優しい。事件で出会った少女たちに肩入れをして、傷付かなくていいところにまで傷を負うのだ。お前も充分悲しんだだろうに、そんなんじゃあ捜査官として持たないだろうに。けれど、俺は狡噛のそんなところを気に入っていた。儚くて、感情を上手くやりくりできないところを。どこまでも。
    「今日はお前の言うことはなんでも聞いてやるよ」
     俺はそう言って狡噛にまたキスをする。狡噛は辛そうに、俺に助けを求める。こんな日があってもいい、お前がこんな日があってもいいじゃないか。俺はそう思うのだ。
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    TRAININGお題:「昔話」「リラックス」「見惚れる」
    盗賊団の伝説を思い出すネロが、ブラッドリーとの初めてのキスを思い出すお話です。軽いキス描写があります。
    かつての瞳 ブラッドは酔うと時折、本当に時折昔話をする。
     普段はそんな様子など見せないくせに、高慢ちきな貴族さまから後妻を奪った話だとか(彼女はただ可哀想な女ではなく女傑だったようで、しばらく死の盗賊団の女神になり、北の国の芸術家のミューズになった)、これもやはり領民のことを考えない領主から土地を奪い、追いやった後等しく土地を分配したことなど、今でも死の盗賊団の伝説のうちでも語り草になっている話を、ブラッドは酒を飲みながらした。俺はそれを聞きながら、昔の話をするなんて老いている証拠かなんて思ったりして、けれど自分も同じように貴族から奪った後妻に作ってやった料理の話(彼女は貧しい村の出で、豆のスープが結局は一番うまいと言っていた)や、やっと手に入れた土地をどう扱っていいのか分からない領民に、豆の撒き方を教えてやった話などを思い出していたのだから、同じようなものなのだろう。そしてそういう話の後には、決まって初めて俺とブラッドがキスをした時の話になる。それは決まりきったルーティーンみたいなものだった。
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    TRAININGお題:「花火」「熱帯夜」「一途」
    ムルたちが花火を楽しむ横で、賢者の未来について語ろうとするブラッドリーとそれを止めるネロのお話です。
    優しいあなた 夏の夜、魔法舎に大きな花火が上がった。俺はそれを偶然厨房の窓から見ていて、相変わらずよくやるものだと、寸胴鍋を洗う手を止めてため息をついた。食堂から歓声が聞こえたから、多分そこにあのきらきらと消えてゆく炎を作った者(きっとムルだ)と賢者や、素直な西と南の魔法使いたちがいるのだろう。
     俺はそんなことを考えて、汗を拭いながらまた洗い物に戻った。魔法をかければ一瞬の出来事なのだが、そうはしたくないのが料理人として出来てしまったルーティーンというものだ。東の国では人間として振る舞っていたから、その癖が抜けないのもある。
     しかし暑い。北の国とも、東の国とも違う中央の暑さは体力を奪い、俺は鍋を洗い終える頃には汗だくになっていた。賢者がいた世界では、これを熱帯夜というのだという。賢者がいた世界に四季があるのは中央の国と一緒だが、涼しい顔をしたあの人は、ニホンよりずっと楽ですよとどこか訳知り顔で俺に告げたのだった。——しかし暑い。賢者がいた世界ではこの暑さは程度が知れているのかもしれないが、北の国生まれの俺には酷だった。夕食どきに汲んできた井戸水もぬるくなっているし、これのどこが楽なんだろう。信じられない。
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    TRAINING飴玉を舐めながら色々考える宜野座さんです。
    800文字チャレンジ28日目。
    キャンディ(これからのこと) 飴玉を舐めながらキスをする遊びを覚えたのは学生時代、飴玉を舐めながらフェラチオをするのを覚えたのも学生時代、けれどセックスをしながら飴玉を初めて舐めたのは、どうしてか三十を過ぎてからのことだった。
     基本的に飲み食いをしながらセックスをするのは好きじゃなかったからこれは全部妥協で、個人的に好んだのは全てが終わって水を勧められたのを飲むくらいだった。中国じゃ飲み食いをしながら一日中セックスをしたんだぜと豆知識を披露されても、だからなんだという話だ。どうやら狡噛はそれがしたいらしかったが、俺はそういうのはいい。あまり風流なのは得意じゃないし、古代に想いを馳せてするセックスなんて御免被りたい。
     話は戻って飴玉についてだが、なぜ今そんなことを考えているのかというと、今日、仕事中に警護対象から俺たちは飴玉をもらったからだ。それは小さな少女で、あなたたちにお駄賃ね、と彼女はスカートを揺らしながら笑っていた。彼女は事件の関係者の娘で、襲撃対象になっていたので俺たちが警護することになったのだが、考えすぎだったのか無事に家に着いた。それからしばらく公安局がやって来るまで守ったものの、公安局から事件が発生したとは聞かない。今はまだ、こう着状態にあるのだろう。
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