残月
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MOURNING残月の行方の展開の案~~~過去篇を過去篇に入ってから考え始めるパンツァーぶり残月展開案② 一千年前。フェルディアの夏は、ガルグ=マクと比べても涼しく、過ごしやすかった。
黄金の太陽の照らす光は変わらず眩しく強いのに、北方を流れる藍色の冷風が鎧の下で汗ばむ衣服を軽くする。かつて傭兵時代に旅をしていた頃から、ベレスはフェルディアの夏が好きだった。だから、好きな国を尋ねられた時、「ファーガス神聖王国が好ましい」と答えた。それが全ての始まりだったことを思えば、ずいぶん遠くへ来たものだと思う。
あの日、ファーガスが好きだと伝えると喜んだ青年は、今や立派なファーガスの国王となり。ベレスの隣で、幸福そうに微笑んでいた。こちらを見下ろし、やがて日の当たる中庭へと顔を向けるディミトリの、眼帯に隠されていないほうの瞳が細められるのを見るのが、ベレスは好きだった。一等大切なものをいとおしむときの顔が。
6867黄金の太陽の照らす光は変わらず眩しく強いのに、北方を流れる藍色の冷風が鎧の下で汗ばむ衣服を軽くする。かつて傭兵時代に旅をしていた頃から、ベレスはフェルディアの夏が好きだった。だから、好きな国を尋ねられた時、「ファーガス神聖王国が好ましい」と答えた。それが全ての始まりだったことを思えば、ずいぶん遠くへ来たものだと思う。
あの日、ファーガスが好きだと伝えると喜んだ青年は、今や立派なファーガスの国王となり。ベレスの隣で、幸福そうに微笑んでいた。こちらを見下ろし、やがて日の当たる中庭へと顔を向けるディミトリの、眼帯に隠されていないほうの瞳が細められるのを見るのが、ベレスは好きだった。一等大切なものをいとおしむときの顔が。
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MOURNING残月のゆくえ展開案①残月書きかけ①国王と、大司教。ディミトリとベレスは、それぞれに守るべきもののある二人だったから、常に一緒にいるわけにはいかなかった。子どもに恵まれてからも、王都と大修道院を頻繁に往復する生活は、一般の夫婦のかたちとは遠かっただろう。
それでもベレスは幸せだった。
「お前の笑顔を見ると、ほっとするな。帰って来たのだという気がする」
ある年の冬のことだった。落成式典に出席するためにガルグ=マクを訪れたディミトリと、出迎えたベレスは、久しぶりの夫婦の時間を過ごしていた。真冬の女神の塔はしんから凍るほど寒かったが、外套を着て身を寄せ合えば、気にはならない。
「私も、きみの顔を見ると安心する。笑って、ディミトリ。笑顔が上手になったね」
8334それでもベレスは幸せだった。
「お前の笑顔を見ると、ほっとするな。帰って来たのだという気がする」
ある年の冬のことだった。落成式典に出席するためにガルグ=マクを訪れたディミトリと、出迎えたベレスは、久しぶりの夫婦の時間を過ごしていた。真冬の女神の塔はしんから凍るほど寒かったが、外套を着て身を寄せ合えば、気にはならない。
「私も、きみの顔を見ると安心する。笑って、ディミトリ。笑顔が上手になったね」