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    無茶振り

    ひわこ

    DONEとむこさん(@tomuko_0)に遊んでもらった交換小説です。前半がわたし、後半をお任せしております。無茶振りもいいとこだったんですが応じてもらえて楽しかったです!
    [交換小説]藍曦臣と吸血衝動のある江澄のはなしまだ各世家の若君たちが起き出す前の、なんとも清澄な朝。
    藍氏の他の者らよりも半刻ほども早く起き出せば、その静けさは例えようのない清々しさを齎してくれる。木々の間に流れる風も、薄明にまだ頭を出しきらぬ日差しも。藍曦臣の心をひときわ落ち着かせ、宥めてくれる。修練はしない。ただの朝起きは繰り返す日々の中で、小さな息抜きのようなものだった。

    そのかすかな物音に気付いたのも、息抜きの折だった。
    水音ばかりなら気にも留めないが、人の匂いと、おまけに僅かな血の香り。どうしても気になって建屋の間を抜けて出所を探す。
    さすがに起き出しているものが居ると思わなかったのか、彼は身をかがめて井戸の傍で小さくなっていて。藍曦臣の姿を認めるなりひっと短く息を吸い、大きな切れ長の目をまん丸にして血だらけの口を急いで拭った。慌てて齧っていた自らの手首の覆いを戻そうとするのを止めくるりとその腕を裏返す。彼自身の手は彼本人に傷つけられて痛々しく血を纏っているが。手で拭って見ればもうその下には傷ひとつない。
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