有栖川
FP2ndhayusyo
DONEホラーむだいすhpmi百物語@hpmi_horror100 の投稿作です。
【作品傾向】小説・CP無。🎲が🍭と心霊トンネルに行く話。📚も出てくる。
【含】死を匂わす表現
【その他】心霊現象みたいなのがありますが、そんなに怖くないです。
【あらすじ】
ゴミ捨て場に捨てられていた🎲は、朦朧とする意識の中、乱数に〇△に遊びに行こうと誘われるが、そこは心霊スポットだった… 10
すだちゆ
INFO【4ミ展示/ネップリ】密誕2021
誉誕、幸誕2022
イラストのネップリ予約番号はこちらです!
※万が一プリント時の問題がございましたら、Twitterアカウント(@A3wSudachi)のDMにてお知らせ願います。
723baby2018oct
DOODLE表情練習に1rtで笑顔2rtで泣き顔3rtでおこ顔4rtでゲス顔5rtでスネ顔6rtで眠い顔7rtで照れ顔8rtで絶望顔描く9rt以上で最大の力振り絞ってエロ顔描く見た人もやる 6Yoshino_yoshiko
DONE陸剣夏休み日記②~知っているか、有栖川~「宿題が終わらなくて」の言い訳を引っ提げて突然現れた有栖川。
夢野先輩の自宅で、ご褒美の前払いを強請るのだが…?
※エロはぬるい※「えっちしよ」って言わせたかっただけ
★高卒済18歳以上の方以外の閲覧を禁じます★
高卒済18↑? 3
栗クリーム
DONE #絵#落書き
#イラスト
#絵描きさんと繋がりたい
#イラスト好きさんと繋がりたい
#絵師さんと繋がりたい
#絵柄が好みって人にフォローされたい
#初夏の創作クラスタフォロー祭り
#創作クラスタと繋がりたい
#絵描きさんと繋がりたい
#イラスト好きな人と繋がりたい
#絵描きさん応援
#絵描き人 4
いずみのかな
DONE有栖川作家編 出来上がる前。ハロウィンに更新した火村の誕生日ネタです ほくほくのかぼちゃの君とぼくわたしはカボチャ 一瞬、自分の睡眠時間はそんなに足りなかったのかと、火村は心の中で実際何時間寝たのかを指折り数えてしまった。
寝不足から頭が動いていないから聞き間違えをしたのではないか。そうとしか思えないことを目の前の男は言ってのけたのだ。
「やから、心斎橋のあの店、知っとるやろ? 予約しといたから十五日は絶対に明けとけって。ついにボケたか、センセイ」
「俺が聞いてるのはそこじゃない。いや、そこも大いに問題だと思うんだが、その前」
「その前……、君の誕生日やから盛大に」
「そこだ」
火村は座りなれたソファに深々と背を預け、「そこが、って?」ときょとんとしたままの友人を見た。間もなく最新作が発売されるという彼は、しばしの休息に入っているらしい。床屋に行ったのだろう、すっきりとした髪型の下の顔は、顔色がとてもいい。
5623寝不足から頭が動いていないから聞き間違えをしたのではないか。そうとしか思えないことを目の前の男は言ってのけたのだ。
「やから、心斎橋のあの店、知っとるやろ? 予約しといたから十五日は絶対に明けとけって。ついにボケたか、センセイ」
「俺が聞いてるのはそこじゃない。いや、そこも大いに問題だと思うんだが、その前」
「その前……、君の誕生日やから盛大に」
「そこだ」
火村は座りなれたソファに深々と背を預け、「そこが、って?」ときょとんとしたままの友人を見た。間もなく最新作が発売されるという彼は、しばしの休息に入っているらしい。床屋に行ったのだろう、すっきりとした髪型の下の顔は、顔色がとてもいい。
いずみのかな
DONE有栖川作家編 健全コメディ。これを書いたころは、まだ有栖も火村も大学時代に懐かしいあのクイズ番組に出られた年代生まれでした。あったんですよ、アメリカ横断ウルトラクイズっていう番組がNYははるか遠く 大学というのは非常に特殊なコミュニティだ。その気になれば、四年間誰とも口を利かなくとも不自由はない。二十年ほど生きてきて、自分は人と関わらないほうが生きやすい、という後ろ向きな――しかし魅惑的な結論に達していた火村にとって、誰も自分を知らない土地での学生生活はようやく掴んだ理想の環境であり、四年間、あるいはさらに数年ほど延びるかもしれないが、ともかくその期間は他人を受け付けることなく、日々の暮らしはただ静かにひっそりと営まれるはずだった。
そんなささやかなプランがあっけなくひっくり返されたのは去年の五月のことで、ふと気が付けば、いつのまに周りには友人と呼べる人間がちらほらと存在するようになっていた。初めのころこそ、理想と現実のあまりのギャップに軽いめまいを覚えたような心地だったが、そうしてしばらく過ごしてみると、人との付き合いはかつて感じたほど苦痛でもなく、ティーンエイジャーだった自分がいかに独善的で視野が狭く、排他的だったことか。つまり一言で表せば平凡に若かったかということを、しみじみと実感してしまったりもした。
4714そんなささやかなプランがあっけなくひっくり返されたのは去年の五月のことで、ふと気が付けば、いつのまに周りには友人と呼べる人間がちらほらと存在するようになっていた。初めのころこそ、理想と現実のあまりのギャップに軽いめまいを覚えたような心地だったが、そうしてしばらく過ごしてみると、人との付き合いはかつて感じたほど苦痛でもなく、ティーンエイジャーだった自分がいかに独善的で視野が狭く、排他的だったことか。つまり一言で表せば平凡に若かったかということを、しみじみと実感してしまったりもした。
いずみのかな
DONE有栖川作家編 学生時代、酔っ払いと片思い。暗いっていうか陰気です。アリス→火村あらしの前 年に一、二度こういうことがある。
本棚に囲まれた狭い畳敷き部屋の隅で、すっかり呑まれて眠り込んでいる火村を起こさないように、有栖は散らばった酒の缶を台所に運んでいた。
スルメとカワハギと、ワンカップとビールとそしてキャメルの匂いが混ざったこの部屋は、ヘタな場末の酒場よりもすれた雰囲気になっている。火村といえばアルコールが回ったからか、眠り込む直前「暑い」といってシャツのボタンをいくつか外していたから、春になり多少空気が温くんだとはいえ、どこか寒そうに素肌を晒している。健康的というより典型的な酔っ払いの肌がほんのりと赤く色づいているのが、先ほどから何度も有栖の目に飛び込んできていた。
このつまみ類を片付けたらあのボタンを留め直そう。
8006本棚に囲まれた狭い畳敷き部屋の隅で、すっかり呑まれて眠り込んでいる火村を起こさないように、有栖は散らばった酒の缶を台所に運んでいた。
スルメとカワハギと、ワンカップとビールとそしてキャメルの匂いが混ざったこの部屋は、ヘタな場末の酒場よりもすれた雰囲気になっている。火村といえばアルコールが回ったからか、眠り込む直前「暑い」といってシャツのボタンをいくつか外していたから、春になり多少空気が温くんだとはいえ、どこか寒そうに素肌を晒している。健康的というより典型的な酔っ払いの肌がほんのりと赤く色づいているのが、先ほどから何度も有栖の目に飛び込んできていた。
このつまみ類を片付けたらあのボタンを留め直そう。
いずみのかな
DONE有栖川作家編。2004年に「納涼企画」というwebアンソロがありまして、そこに掲載しましたものです ”夏に涼しくなる話”がコンセプトでしたので、そのことを強く強く心に留めたうえで、閲覧くださいますようお願いします。文ヶ淵 私の故郷は雪深い北国で、冬になると白い壁が町中を覆い、白と灰と黒以外の色彩が全て奪われる、そんなところだった。
東京は高いビルばかりで息が詰るが、まだ赤いランドセルを背負っていたころの私には、冬になる度に積もる雪は圧迫感の象徴みたいなもので、横を通るたびにいつ潰されるか、いつ取り込まれるかと、内心恐れ慄きながら走り過ぎたものだ。
あの中に入ったら最後、山から雪ン子が降りてきて、自分の友達にするために連れて行って、氷のべべを着させられるのだと、昔、祖母が言っていた。だから冬はじっと家の中にいて、大人しく息を潜めて春を待つのだと、間違っても雪の手招きを受けてはいけないのだと、まだ紅葉のような赤い手をした私に、何度も何度も言って聞かせたものだ。
9389東京は高いビルばかりで息が詰るが、まだ赤いランドセルを背負っていたころの私には、冬になる度に積もる雪は圧迫感の象徴みたいなもので、横を通るたびにいつ潰されるか、いつ取り込まれるかと、内心恐れ慄きながら走り過ぎたものだ。
あの中に入ったら最後、山から雪ン子が降りてきて、自分の友達にするために連れて行って、氷のべべを着させられるのだと、昔、祖母が言っていた。だから冬はじっと家の中にいて、大人しく息を潜めて春を待つのだと、間違っても雪の手招きを受けてはいけないのだと、まだ紅葉のような赤い手をした私に、何度も何度も言って聞かせたものだ。
いずみのかな
DONE有栖川作家編 ヒアリ わがままとわがままナポリタン 失恋の心を癒すのは、新しい恋に限る。
恋愛の最後なんてみっともなくて辛いだけだ。いかなる形の別れであっても、心の奥に隠してあったものが剥き出しになる。なにより、自分の醜さが露呈する。恋は前向きで美しいなんて嘘だ。エゴと我が侭に塗れた、手に負えない暴走する感情がコアにあるのだから。
本当に手に負えない、と思ったのだ。
あの男と来たら、紳士な振りをして排他的で、優しい顔をして実際は線を引く。こちらの覚悟なんて知ったことじゃないとばかりに、お前が大事なんだ、と言いながら本心を巧みに隠していく。
自分という存在が必要だろう、と傲慢に構えながら、心の底で相手の心を推量しては怯えていた。か弱い乙女ではないのだから、と本音を飲み込みながら笑顔で接するのは辛く、会う度になにかに罅が入る音が脳の中で響いていた。話してはいけないと頑なに思い込むことで、関係すらも硬化していくことからは目を背け続けた
9544恋愛の最後なんてみっともなくて辛いだけだ。いかなる形の別れであっても、心の奥に隠してあったものが剥き出しになる。なにより、自分の醜さが露呈する。恋は前向きで美しいなんて嘘だ。エゴと我が侭に塗れた、手に負えない暴走する感情がコアにあるのだから。
本当に手に負えない、と思ったのだ。
あの男と来たら、紳士な振りをして排他的で、優しい顔をして実際は線を引く。こちらの覚悟なんて知ったことじゃないとばかりに、お前が大事なんだ、と言いながら本心を巧みに隠していく。
自分という存在が必要だろう、と傲慢に構えながら、心の底で相手の心を推量しては怯えていた。か弱い乙女ではないのだから、と本音を飲み込みながら笑顔で接するのは辛く、会う度になにかに罅が入る音が脳の中で響いていた。話してはいけないと頑なに思い込むことで、関係すらも硬化していくことからは目を背け続けた
いずみのかな
DONE有栖川作家編。ヒアリ。朝井からの呼び出しで京都に向かった有栖が出くわしたちょっとした冒険とちょっとした問題。まだクグロフがここまで普通に買えなかったころにバレンタイン用に書いたものです。アンシンメトリー 今日もラジオは甘い恋人達のために、バラードを運んでくる。
ドリカムもユーミンもはっきり言って聞き飽きた。どんなおいしいチョコレートでも三日食べつづければ飽食気味になる。ましてやこの二時間の間延々と流れつづける、名曲といわれるラブソングの量といったらなんだ。やれ「愛してる」「君が欲しい」「あなたこそ全て」と連呼され続ければ、それがどんなに好きな曲であっても賭けてもいい、絶対に嫌になる。
だいたいなんで松任谷由美でかかる曲が『アニバーサリー』や『円舞曲』ばかりなのだ、今の季節だったら『ノーサイド』あたりが素晴らしく映えるじゃないか。
しかも、しかもだ。それらの曲がかかるたび、グリコのごとく見知らぬ他人の恋愛話までついて来るときたら。
16772ドリカムもユーミンもはっきり言って聞き飽きた。どんなおいしいチョコレートでも三日食べつづければ飽食気味になる。ましてやこの二時間の間延々と流れつづける、名曲といわれるラブソングの量といったらなんだ。やれ「愛してる」「君が欲しい」「あなたこそ全て」と連呼され続ければ、それがどんなに好きな曲であっても賭けてもいい、絶対に嫌になる。
だいたいなんで松任谷由美でかかる曲が『アニバーサリー』や『円舞曲』ばかりなのだ、今の季節だったら『ノーサイド』あたりが素晴らしく映えるじゃないか。
しかも、しかもだ。それらの曲がかかるたび、グリコのごとく見知らぬ他人の恋愛話までついて来るときたら。
いずみのかな
DONE有栖川作家編。おやつにプリン(プリン)プリン! プリン! プリン! 自由業というものは、主婦、授業が無い日の大学生と並んで平日昼の時間を文字通り自由に使える立場であろう。家事を片付けるもよし、外に行くもよし、そしてテレビを見るもよし。
最近のワイドショーは局によって特色があり話題も豊富で、日本の安全保障を論じた次の瞬間に犬のためのカフェを紹介したりする。その落差こそが現代日本を象徴している、と皮肉めいた言い方も出来るが、つまりはターゲット層である主婦達の興味の幅は深くは無くてもとても広い、ということだ。
ワイドショーを見るのは主婦だけ、とは勿論限らない。番組内でご意見を募ったら、それに呼応するは主婦と、そして大学生がとても多い。その他退職したお父さんやら仕事が非番だったフリーターやら多種多様な人々が自分の意見を送ってくることだろう。だから、ワイドショーを主婦以外の人間が見ていて、それを元に行動を起こしても、それは別に可笑しなことではないわけだ。当たり前だが。
11482最近のワイドショーは局によって特色があり話題も豊富で、日本の安全保障を論じた次の瞬間に犬のためのカフェを紹介したりする。その落差こそが現代日本を象徴している、と皮肉めいた言い方も出来るが、つまりはターゲット層である主婦達の興味の幅は深くは無くてもとても広い、ということだ。
ワイドショーを見るのは主婦だけ、とは勿論限らない。番組内でご意見を募ったら、それに呼応するは主婦と、そして大学生がとても多い。その他退職したお父さんやら仕事が非番だったフリーターやら多種多様な人々が自分の意見を送ってくることだろう。だから、ワイドショーを主婦以外の人間が見ていて、それを元に行動を起こしても、それは別に可笑しなことではないわけだ。当たり前だが。
いずみのかな
DONE有栖川作家編。両思いになる寸前。ゆうきまさみ『困ったしんどろ~む』の本歌取りまっすぐでいこう。 目覚ましを止めるために出した手が、忽ちに冷えていくのが良くわかる朝だった。
寒い日は空気が文字通り張っている感触があり、火村はそれがけっこう好きだ。布団の中のぬくもりは離し難いが、勢い良く起き上がれば、気がまっすぐ引き締まる。
だが、今日の寒さは格別らしい。布団の上からもしんしんと冷気が降りてきて、体が軽く身震いするのがわかった。そういえば悪寒も感じるし、どこか頭がぼぉっとしている。気にしすぎだと思うがあちこちの関節も鈍く痛んでる感じがあり、なにより鼻が垂れてきている。
これはひょっとして、今日の京都も寒くて辛い、以外の原因があるのではないだろうか。
いやしかし、まさか恐らく大丈夫だろう、と自分をごまかして布団から出ようとしたとき、不意にむずむとした感触が来て、「へくしっ」と小さなくしゃみが出る。
11170寒い日は空気が文字通り張っている感触があり、火村はそれがけっこう好きだ。布団の中のぬくもりは離し難いが、勢い良く起き上がれば、気がまっすぐ引き締まる。
だが、今日の寒さは格別らしい。布団の上からもしんしんと冷気が降りてきて、体が軽く身震いするのがわかった。そういえば悪寒も感じるし、どこか頭がぼぉっとしている。気にしすぎだと思うがあちこちの関節も鈍く痛んでる感じがあり、なにより鼻が垂れてきている。
これはひょっとして、今日の京都も寒くて辛い、以外の原因があるのではないだろうか。
いやしかし、まさか恐らく大丈夫だろう、と自分をごまかして布団から出ようとしたとき、不意にむずむとした感触が来て、「へくしっ」と小さなくしゃみが出る。
いずみのかな
DONE有栖川作家編 ヒアリ ウソツキとウソツキGood morning,yesterday 物事の終わりはいつだってあっけない。短くはないこれまでの人生の中で、当時はかけがえがないと真剣に思っていたものも幾度となくこの手からこぼれていった。そのときは胸が張り裂けそうな思いに駆られても、ふと気が付けば、まるでぼんやりと見ていたドラマの結末のように、どうでもよい思い出のひとつになってしまう。そんなことを両手に余る以上体験してきた。
幻想なのだ、心から愛するなにかと出会えるなんてことも、もう二度と埋められないものがこの世にあるなんてことも。
それは若さや青さが作り出した都合のいい舞台装置で、自分を主人公にするために欠かせない小道具でしかない。
渇望していた輝かしいなにかをついに得たそのときには、これを失ったその日に自分の世界が終わる、そう強く感じることも珍しくない。やがて長いなり短いなりの時を経るうちに、輝いていたはずのそれは色褪せ、錆びつき、日常の中に溶け込んでしまい、そのときには鈍い光すら放たなくなっていることに気が付く。
12870幻想なのだ、心から愛するなにかと出会えるなんてことも、もう二度と埋められないものがこの世にあるなんてことも。
それは若さや青さが作り出した都合のいい舞台装置で、自分を主人公にするために欠かせない小道具でしかない。
渇望していた輝かしいなにかをついに得たそのときには、これを失ったその日に自分の世界が終わる、そう強く感じることも珍しくない。やがて長いなり短いなりの時を経るうちに、輝いていたはずのそれは色褪せ、錆びつき、日常の中に溶け込んでしまい、そのときには鈍い光すら放たなくなっていることに気が付く。
いずみのかな
DONE有栖川作家編 ヒアリ、へんてこな話です。リセットボタンを押しながら電源をお切り下さいロマンス 出会いは完璧だっただろう。天国のような陽が降り注ぐ午後、整った美しい横顔、一万分の一の掛けに乗った瞬間。
一瞬で恋に落ちた。もう他の何も目に入らない。彼を逃すつもりは無いし、手放すなんてもっての外だ。蜘蛛に囚われた蝶のように、どうやっても逃れられない。
だから、将棋のように、少しずつ詰めていった。
名前を教え合い、挨拶をするようになり、並んで歩いて、偶然を装って手を繋いで……。
最初に躓いたのは大学三年のときだ。思いのほか繊細だった彼の中に土足で踏み込んでしまった。その反発は驚くほどで、リセットするのにとても苦労したものだ。
あれから何度、この関係が壊れていっただろうか。
その度に自分の愚かさにため息をつき、彼の臆病さに涙しながらも、その度にまた初めからやり直していった。
2797一瞬で恋に落ちた。もう他の何も目に入らない。彼を逃すつもりは無いし、手放すなんてもっての外だ。蜘蛛に囚われた蝶のように、どうやっても逃れられない。
だから、将棋のように、少しずつ詰めていった。
名前を教え合い、挨拶をするようになり、並んで歩いて、偶然を装って手を繋いで……。
最初に躓いたのは大学三年のときだ。思いのほか繊細だった彼の中に土足で踏み込んでしまった。その反発は驚くほどで、リセットするのにとても苦労したものだ。
あれから何度、この関係が壊れていっただろうか。
その度に自分の愚かさにため息をつき、彼の臆病さに涙しながらも、その度にまた初めからやり直していった。
いずみのかな
DONE有栖川作家編、ヒアリ 懐かしの八神君の家庭の事情的なシミュレーション 大阪の空は京都のそれと比べて狭い。
だからどうした、と言われても困る。ただ、すっかり通いなれた地下鉄の駅からふと空を見たとき、そう感じただけなのだ。
この場所はまだ四天王寺なんて大きな寺があるから空の面積も広いが、梅田にいくとごちゃごちゃとしていて、作りかけのパズルのようになっている。普段から大学と天皇家の敷地に挟まれた、空を見るにはもってこいの場所にいる火村にとって、たまに上を見て圧迫感を感じるのが新鮮だっただけだ。
こんなことをうだうだと考えているのはつまり現実逃避だと、火村はやや自棄な笑いをこぼした。嫌なことから逃げたいわけではない。嫌かといわれたら、多分考え込むだろう。あまりにもややこしいことになっているから頭を抱えているというのが、多分正しい分析だ。
7534だからどうした、と言われても困る。ただ、すっかり通いなれた地下鉄の駅からふと空を見たとき、そう感じただけなのだ。
この場所はまだ四天王寺なんて大きな寺があるから空の面積も広いが、梅田にいくとごちゃごちゃとしていて、作りかけのパズルのようになっている。普段から大学と天皇家の敷地に挟まれた、空を見るにはもってこいの場所にいる火村にとって、たまに上を見て圧迫感を感じるのが新鮮だっただけだ。
こんなことをうだうだと考えているのはつまり現実逃避だと、火村はやや自棄な笑いをこぼした。嫌なことから逃げたいわけではない。嫌かといわれたら、多分考え込むだろう。あまりにもややこしいことになっているから頭を抱えているというのが、多分正しい分析だ。
いずみのかな
DONE有栖川作家編 ヒアリ たしてもひいても小さな宇宙 高校の同級生から来た葉書を何度も読みながら、ソファでだらしなく寝そべっていたら、急に世界が薄暗くなった。
「……きみなぁ、お邪魔します、とかそれくらい言えんのか」
「お邪魔します」
棒読みでそう返しながら火村はひょいと体を起す。再び視界が明るくなったことに満足しながら有栖はよ、と身を起した。
「こんな時間にどうしたん」
言いながら時計を見ると、もうすぐ十一時になろうという頃だ。
「いや、明日も大阪に用があるから」
「フィールドワークか?」
そう聞いてみると火村はネクタイを取りながら、
「いや、本業の方」
「なんだ、そうか」
「なんだよ、その残念そうな声は」
「いや、予想が外れたからそれが出とるだけやろう」
実際は残念じゃなくて安心してるのほうが割合として高いのだが。
4075「……きみなぁ、お邪魔します、とかそれくらい言えんのか」
「お邪魔します」
棒読みでそう返しながら火村はひょいと体を起す。再び視界が明るくなったことに満足しながら有栖はよ、と身を起した。
「こんな時間にどうしたん」
言いながら時計を見ると、もうすぐ十一時になろうという頃だ。
「いや、明日も大阪に用があるから」
「フィールドワークか?」
そう聞いてみると火村はネクタイを取りながら、
「いや、本業の方」
「なんだ、そうか」
「なんだよ、その残念そうな声は」
「いや、予想が外れたからそれが出とるだけやろう」
実際は残念じゃなくて安心してるのほうが割合として高いのだが。
いずみのかな
DONEヒアリともアリヒともつかない薄暗い話百回目 天王寺署を辞するときには、もういい時刻になっていて、街には家路に着く疲れた背中と陽気に酔った背中とが溢れていた。
桜の季節が近いとはいえ、まだ空気は冷たい。冬用のコートでは暑く感じ、春仕様のそれでは冷気を防げない。中途半端な季節である。
捜査の最中だからか、あるいは週末だからか、途中何度か携帯に出ながらも玄関まで見送ってくれた森下は、現場からずっと鼻をぐずぐずと鳴らしていた。去年まではなんともなくても次の年に突然来るのが花粉症の怖いところである。アルマーニのスーツと赤くなった鼻はやはり不釣合いで、それが彼の病状により一層の同情を寄せる一因にもなっていた。
「今日は本当にありがとうございました。明日なんですが……」
1774桜の季節が近いとはいえ、まだ空気は冷たい。冬用のコートでは暑く感じ、春仕様のそれでは冷気を防げない。中途半端な季節である。
捜査の最中だからか、あるいは週末だからか、途中何度か携帯に出ながらも玄関まで見送ってくれた森下は、現場からずっと鼻をぐずぐずと鳴らしていた。去年まではなんともなくても次の年に突然来るのが花粉症の怖いところである。アルマーニのスーツと赤くなった鼻はやはり不釣合いで、それが彼の病状により一層の同情を寄せる一因にもなっていた。
「今日は本当にありがとうございました。明日なんですが……」