有栖川
いずみのかな
DONE有栖川作家編 健全シリアス 菜の花畑に入り日薄れ 見渡す山の端霞深し菜の海 お客さんえぇときに来らいましたねぇ、今は花の盛りでさぁ、こげな田舎だけどそれだけは自慢なんですわ。
柔らかく響く土地の言葉で、年配の女将はそういってくしゃりと笑った。普段は畑にも出ているという彼女の皮膚は日に焼け固くなり、手にも顔にも深い皺が刻まれている。その一本一本が彼女の経験と知恵の証だ。美白だダイエットだ、と騒ぐ都会の女性にはどうやっても身に付けられないお天道さまの品が、そこには間違いなくあった。人生辛いこともあったろうし、これからもあるだろうが、それでも彼女の笑顔は暖かい。
小さい町の小さい宿の、これまた小さい部屋に通された飛び込みの客は、やはりお国言葉を丸出しにして、ほうじ茶を注ぐ女将に話し掛けた。
8211柔らかく響く土地の言葉で、年配の女将はそういってくしゃりと笑った。普段は畑にも出ているという彼女の皮膚は日に焼け固くなり、手にも顔にも深い皺が刻まれている。その一本一本が彼女の経験と知恵の証だ。美白だダイエットだ、と騒ぐ都会の女性にはどうやっても身に付けられないお天道さまの品が、そこには間違いなくあった。人生辛いこともあったろうし、これからもあるだろうが、それでも彼女の笑顔は暖かい。
小さい町の小さい宿の、これまた小さい部屋に通された飛び込みの客は、やはりお国言葉を丸出しにして、ほうじ茶を注ぐ女将に話し掛けた。
いずみのかな
DONE有栖川作家編 ミステリあるいはホラー 。変則的なものになっておりますので、何でも読める方におすすめします。降霊会 ドレイクの捻ったビートが頭を殴るように鳴り響き、照明はムーディーを通り越してはっきり言ってただ暗い。メニューを見るのもテーブルに置いてある蝋燭頼み。
古都京都に全くもって相応しくない、恐ろしく癖が強い店だと思う。しかし、ここのムール貝の酒蒸しは恐らく日本で五本の指に入る。世界貝の酒蒸しコンテストに出しても、入賞は間違いなしだ。ここに来るのは大抵が学生やまだ若い社会人達で、彼らはビール壜を片手に軽くリズムに乗りながら、陽気に一日のウサを発散している。アルコール、低音が効きすぎたダンスナンバー、見知らぬものの中。
すべて、人を癒す道具になる。
私が二本目のトラビストを消費しきったとき、踊る影の中から、ようやっと待ち人達が現れた。一人は昔から馬が合う顔なじみの、私にとっては姉御としかいいようのない女性で、もう一人は彼女の弟分だという同業者だ。前から彼のエッセイや作品などを愛読していた私は、友人の友人だという縁故を利用し、今日アポイントを取っていたのだ。
14213古都京都に全くもって相応しくない、恐ろしく癖が強い店だと思う。しかし、ここのムール貝の酒蒸しは恐らく日本で五本の指に入る。世界貝の酒蒸しコンテストに出しても、入賞は間違いなしだ。ここに来るのは大抵が学生やまだ若い社会人達で、彼らはビール壜を片手に軽くリズムに乗りながら、陽気に一日のウサを発散している。アルコール、低音が効きすぎたダンスナンバー、見知らぬものの中。
すべて、人を癒す道具になる。
私が二本目のトラビストを消費しきったとき、踊る影の中から、ようやっと待ち人達が現れた。一人は昔から馬が合う顔なじみの、私にとっては姉御としかいいようのない女性で、もう一人は彼女の弟分だという同業者だ。前から彼のエッセイや作品などを愛読していた私は、友人の友人だという縁故を利用し、今日アポイントを取っていたのだ。
いずみのかな
DONE有栖川作家編。ヒアリ前提別れたあと。取り残されたのは誰、自由になったのは誰。サマータイムブルース ケーブルカーを降りて坂をもう少し上がり、角を曲がるとモスグリーンの小さなアパートメントが見えてくる。そこの三階が現在の住処だ。期間限定とはいえルームシェアに申し込んだ甲斐はある、見渡しの良い心地良い部屋だった。
以前住んでいた町も坂が多い土地だったが、この町には負ける。海から一気に駆け上がる坂の急勾配、潮の香り、降り注ぐ日差し。木目のボディーが可愛らしいケーブルカーはそこそこのスピードでメインストリートを走りあがる。どこにいくにも坂、坂、坂。そして陽気な笑い声。上に上がる七色の旗も示す通り、懐の深い町だと思う。同じカルフォルニアでもLAの飢えを含んだ渇きとは違う。頭が良くて野心がない街、と評したのは一体だれだったか。
7574以前住んでいた町も坂が多い土地だったが、この町には負ける。海から一気に駆け上がる坂の急勾配、潮の香り、降り注ぐ日差し。木目のボディーが可愛らしいケーブルカーはそこそこのスピードでメインストリートを走りあがる。どこにいくにも坂、坂、坂。そして陽気な笑い声。上に上がる七色の旗も示す通り、懐の深い町だと思う。同じカルフォルニアでもLAの飢えを含んだ渇きとは違う。頭が良くて野心がない街、と評したのは一体だれだったか。
いずみのかな
DONE有栖川作家編。健全ホラー。『文が淵』と同じく、2004年、有栖川サイトの納涼企画ウェブアンソロに寄稿しましたものです。
終盤のある箇所について、ウェブアンソロに掲載したときはタグで仕掛けを作ったのですが、pixivでは無理だったためそこのみ変更しております。
ジャパニーズホラー、の王道目指して頑張りました。
覗く目 太平洋上で台風が発生したらしい。
しかし大阪上空は相変わらずの快晴で、気温は今日もうなぎ上りだ。私はだらしないと思いながらも首周りが伸びたTシャツを着て、昼前からソファの上でごろごろ寝そべっていた。日が高いうちに飲むビールは、ほんの少しの後ろめたさもスパイスとなって、また格別の味がする。何たる堕落、と咎めるなかれ。私はつい先程短編を脱稿したばかりなのだ。締め切り明けの作家のささやかな道楽としてここは見逃して欲しい。
ビールを一本空けたらシャワーを浴びて、約三十時間ぶりにベッドに入るのが今日の予定である。明日のうんと遅くまで惰眠を貪り、それから週末で家にいるであろう京都の友人の所にでも出向くのもいいかもしれない。この二週間、会話を交わした相手は担当一人だけ、更に言うなら二度の電話の合計時間は十分に満たない。私は人に飢えている。
20073しかし大阪上空は相変わらずの快晴で、気温は今日もうなぎ上りだ。私はだらしないと思いながらも首周りが伸びたTシャツを着て、昼前からソファの上でごろごろ寝そべっていた。日が高いうちに飲むビールは、ほんの少しの後ろめたさもスパイスとなって、また格別の味がする。何たる堕落、と咎めるなかれ。私はつい先程短編を脱稿したばかりなのだ。締め切り明けの作家のささやかな道楽としてここは見逃して欲しい。
ビールを一本空けたらシャワーを浴びて、約三十時間ぶりにベッドに入るのが今日の予定である。明日のうんと遅くまで惰眠を貪り、それから週末で家にいるであろう京都の友人の所にでも出向くのもいいかもしれない。この二週間、会話を交わした相手は担当一人だけ、更に言うなら二度の電話の合計時間は十分に満たない。私は人に飢えている。
いずみのかな
DONE有栖川作家編 出来上がる直前。ややへんてこな話です、お気をつけください。うつし世は夢、君の現実は僕。
赤の王、黒の王 ネオンのやかましい灯りが照らす部屋の奥に、どろりとした闇がある。
カーテンもブラインドもない剥き出しの窓は煤汚れていて、ピンク、青、黄色、と賑やかしく色をつけては落としていく。ただペンキを塗っただけの壁は、昔は白かったのかもしれないが、今は茶と灰を混ぜた不愉快な色の埃を纏っているだけだ。
新緑の頃も過ぎて、昼間は汗ばむ陽気が続く時期になっても、まだ夜は肌寒い。ましてや、黴の青い匂いがツンと漂うこんな部屋では尚更だ。陽光が降り注いだこともない、狭いビルの一室は季節に関わらず温むことがない。蒸し暑い不愉快な空気が隙間から入り込むことがあっても、空気はいつまでも温まることはないだろう。
どろりとした闇の中に、今は錆の匂いが混ざっている。
11934カーテンもブラインドもない剥き出しの窓は煤汚れていて、ピンク、青、黄色、と賑やかしく色をつけては落としていく。ただペンキを塗っただけの壁は、昔は白かったのかもしれないが、今は茶と灰を混ぜた不愉快な色の埃を纏っているだけだ。
新緑の頃も過ぎて、昼間は汗ばむ陽気が続く時期になっても、まだ夜は肌寒い。ましてや、黴の青い匂いがツンと漂うこんな部屋では尚更だ。陽光が降り注いだこともない、狭いビルの一室は季節に関わらず温むことがない。蒸し暑い不愉快な空気が隙間から入り込むことがあっても、空気はいつまでも温まることはないだろう。
どろりとした闇の中に、今は錆の匂いが混ざっている。
いずみのかな
DONEサイトを運営していたころ、広瀬彩夜子さまのサイト「#∧♭」に差し上げたものです。お題は「春の海ひねもすのたりのたりかな」でした。
春の潮騒 日差しがじりじりと背を焼いていく。
手に持って歩いているジャケットもただ暑く邪魔苦しい。白い煉瓦敷きの道に歩く人影は少なく、まるでがらんとしたこの街に自分たちの足跡が響き渡り、何度も反響しているような錯覚すらしてくる。全面ガラス張りの建物たちは陽光を遠慮なく乱反射させ、せめてもの言い訳のように植えられた、細く頼りない街路樹を黒く浮き上がらせていた。しかし、影はそれ程濃くはない。まだ夏には遠いからだ。
「暑いな」
横を歩く男が、足を止めて呟いた。Yシャツの袖はとうに捲くられ、少し皺が寄ったハンカチで首筋を拭う。
「殆ど風が無いからな」
有栖は返して、隣に立ち止まった。歩道は煉瓦と青いガラスによる洒落たデザインが施されている。しかし、ガラスが嵌っていただろう場所は大抵ぽっこりと穴が開いていた。確かにガラス製の煉瓦はオブジェとしても美しいだろうが、だからといって歩道に埋まっているものをわざわざ外して持って帰るのは酔狂としか言い様がないだろう。
8511手に持って歩いているジャケットもただ暑く邪魔苦しい。白い煉瓦敷きの道に歩く人影は少なく、まるでがらんとしたこの街に自分たちの足跡が響き渡り、何度も反響しているような錯覚すらしてくる。全面ガラス張りの建物たちは陽光を遠慮なく乱反射させ、せめてもの言い訳のように植えられた、細く頼りない街路樹を黒く浮き上がらせていた。しかし、影はそれ程濃くはない。まだ夏には遠いからだ。
「暑いな」
横を歩く男が、足を止めて呟いた。Yシャツの袖はとうに捲くられ、少し皺が寄ったハンカチで首筋を拭う。
「殆ど風が無いからな」
有栖は返して、隣に立ち止まった。歩道は煉瓦と青いガラスによる洒落たデザインが施されている。しかし、ガラスが嵌っていただろう場所は大抵ぽっこりと穴が開いていた。確かにガラス製の煉瓦はオブジェとしても美しいだろうが、だからといって歩道に埋まっているものをわざわざ外して持って帰るのは酔狂としか言い様がないだろう。
いずみのかな
DONE有栖川作家編 アリヒ 手作りのケーキと甘いキミスイートな悪魔、誘惑のバニラ それにしてもバニラビーンズの醸し出す香りは、なぜこうも人を柔らかく誘惑するのだろう。
一口それを含みたい。
口の中でとろりと溶けて甘く残り、鼻から抜けるときには色彩まで変化するに違いない。手に届く寸前の思い人のような誘惑が、そこには含まれている。
そして、実際に味わおうと嬉々として口に入れた途端、半端ない苦味に襲われ後悔にさいなまれるあたりまで一緒と来ている。
教訓は一つ、遠くから見てるだけにしておけ。
目の前に置かれた、小さな黒いビンを見てそんな文が浮かんでくるあたり、作家菌とやらは相当に強い性質を持っているに違いない。
火村は大きくため息をついて、無意味で無益な現実逃避を打ち切ることにした。「それでは、目の前にあるレシピをご覧下さいー」という、彼には無慈悲に響く開始のゴングが聞こえたからだ。
6157一口それを含みたい。
口の中でとろりと溶けて甘く残り、鼻から抜けるときには色彩まで変化するに違いない。手に届く寸前の思い人のような誘惑が、そこには含まれている。
そして、実際に味わおうと嬉々として口に入れた途端、半端ない苦味に襲われ後悔にさいなまれるあたりまで一緒と来ている。
教訓は一つ、遠くから見てるだけにしておけ。
目の前に置かれた、小さな黒いビンを見てそんな文が浮かんでくるあたり、作家菌とやらは相当に強い性質を持っているに違いない。
火村は大きくため息をついて、無意味で無益な現実逃避を打ち切ることにした。「それでは、目の前にあるレシピをご覧下さいー」という、彼には無慈悲に響く開始のゴングが聞こえたからだ。
s a t o u
DONE独歩とハマの森観音坂、森へ1
「お疲れ様でした。おっ、お先に失礼します⋯⋯」
お疲れ様でしたぁ、と間延びした上司の声を背中に受けて足早にエレベーターへと向かう。下の階への行先を示すボタンをカチカチと数回押しながら大きく息を吐く。
明日は休みだ。六連勤明けの、休みだ。やがてポンと柔らかな音と共にエレベーターが到着し、一階のボタンを押す。
「待って待って!乗りまーす!」
手を上げて駆け込んできた同僚に会釈をする。
「やっと金曜日ですねえ。今週もハードだったあ。ってかなんか観音坂さん、元気に見えますね!」
そう言って顔を覗き込まれたため曖昧に笑って受け流す。同僚はそれきり黙って携帯を見始めた。
明日は休み。休みなのだ。一二三に怒られてもいい。今日は贅沢にコンビニでアイスを買ってしまおう。マイリストに入れたままの海外ドラマの続きを一二三と観て、酒を飲んで、昼まで眠ろう。
7600「お疲れ様でした。おっ、お先に失礼します⋯⋯」
お疲れ様でしたぁ、と間延びした上司の声を背中に受けて足早にエレベーターへと向かう。下の階への行先を示すボタンをカチカチと数回押しながら大きく息を吐く。
明日は休みだ。六連勤明けの、休みだ。やがてポンと柔らかな音と共にエレベーターが到着し、一階のボタンを押す。
「待って待って!乗りまーす!」
手を上げて駆け込んできた同僚に会釈をする。
「やっと金曜日ですねえ。今週もハードだったあ。ってかなんか観音坂さん、元気に見えますね!」
そう言って顔を覗き込まれたため曖昧に笑って受け流す。同僚はそれきり黙って携帯を見始めた。
明日は休み。休みなのだ。一二三に怒られてもいい。今日は贅沢にコンビニでアイスを買ってしまおう。マイリストに入れたままの海外ドラマの続きを一二三と観て、酒を飲んで、昼まで眠ろう。
5_enntoinoti
MEMO有栖川ルイの設定有栖川ルイ
年齢27歳 身長194㎝ 出身北海道 職業探偵(今は引退して静かに暮らしてる)
血液型O型(隠れA型)
探偵業だが基本面倒なことはしない。面倒ごとだと判断したらそそくさと逃げていく。巻き込まれたくない。マイペースでそれに口出しされるのはそんなに好きじゃない。
家族構成
母 水商売やってたり、ほかの男と遊んでたりそれでいて家事育児をほぼ丸投げしていたくそ親。子供たちや父親とは仲良くない。
父 酒、ギャンブルの絵にかいたようなくそ親。暴力も子供たちにふるっていた。現在は母父ともに塀の向こう行きとなっている。
兄(有栖川レン) 三人兄弟の長男。正義感が強く面倒見がよい。そのためした二人の面倒は自分一人で見ていた。弟たちとは仲が良く、たまに会っては飯をおごったりしてる。現在は警官。ルイからは兄貴と呼ばれている。
1159年齢27歳 身長194㎝ 出身北海道 職業探偵(今は引退して静かに暮らしてる)
血液型O型(隠れA型)
探偵業だが基本面倒なことはしない。面倒ごとだと判断したらそそくさと逃げていく。巻き込まれたくない。マイペースでそれに口出しされるのはそんなに好きじゃない。
家族構成
母 水商売やってたり、ほかの男と遊んでたりそれでいて家事育児をほぼ丸投げしていたくそ親。子供たちや父親とは仲良くない。
父 酒、ギャンブルの絵にかいたようなくそ親。暴力も子供たちにふるっていた。現在は母父ともに塀の向こう行きとなっている。
兄(有栖川レン) 三人兄弟の長男。正義感が強く面倒見がよい。そのためした二人の面倒は自分一人で見ていた。弟たちとは仲が良く、たまに会っては飯をおごったりしてる。現在は警官。ルイからは兄貴と呼ばれている。
かなれ
PAST2022年1月11日有栖川一悦、誕生日おめでとう🎉
今年こそ、新たな一悦や兄弟達を拝みたいよ!
まだサマレジ新作あきらめてない!
ずっと待ってます!!!!!!
絵は今描いてたのは没したので、去年のバレンタインに描いてたのですまん。
110
DOODLE「「「「「前から誘われていたからな」」」」ヤバすぎたあと「有栖川がりおさんの博打能力に「「気付いてる」」て、更に甘やかしてくれることも「「わかってる」」のと そんで低レベルの悪知恵働かせてるところとてもいい さらにりおさんがそれを全く気にもしてないとこめっちゃいい ARBくんアリガトがすぎる 2
にもじ
MOURNING漫画です。帝統くんが幻太郎と乱数ちゃんから悪戯されそうになる話。色々帝統くんが浮かばれなくて、最後一枚なにか描きたかったけど力尽きて四コマだけになりました。描いたから載せるスタイル。
もう一枚は、スタンプが可愛くて使いたかっただけのおまけです。ファンアートタグにあげたものの別バージョンです。 2