しいげ
MAIKING #hadesweekly 週間お題(#10)「ダンス」どちらかが男性パートを受け持って女性同士がダンスする、のシチュエーションが好きなのでぜひママたちで描きたかった。塗りはすみません諦めました。
Yako_san8
DONE★hadesweekly6回目お題・《めしあがれ!》冥界王妃と宴会することになった王子と死神の話。※王子と死神は伴侶になって日が浅いくらいの距離感です。
灼熱のシンポシア「―ねぇ、ザグレウス。今度アスポデロスを《通過》するとき、エウリュディケのところに顔を出してお行きなさい」
「え……、彼女が何か言っていましたか?オルフェウスからは特に聞いていませんが」
冥王譲りの闇色の結膜に浮かぶ紅い瞳がきょとんと見返してくる様が何だか微笑ましくてペルセポネはふふっと笑う。
「行ってみればわかるわ!」
「はい、母上がそうおっしゃるのなら、忘れずに立ち寄ってみます!」
一片の疑いもなく素直に頷いた王子の姿に、我が息子ながら純粋に育ち過ぎやしないかと一抹の不安が頭をもたげた冥界王妃だったが、あの気難しやのハデスの元ですくすく育った彼自身の強かさを信じることにした。
◇
「―ふぅ、こう暑いと早く歌乙女の所に寄って美味しいフレッシュネクタルでも飲みたくなるな……」
6542「え……、彼女が何か言っていましたか?オルフェウスからは特に聞いていませんが」
冥王譲りの闇色の結膜に浮かぶ紅い瞳がきょとんと見返してくる様が何だか微笑ましくてペルセポネはふふっと笑う。
「行ってみればわかるわ!」
「はい、母上がそうおっしゃるのなら、忘れずに立ち寄ってみます!」
一片の疑いもなく素直に頷いた王子の姿に、我が息子ながら純粋に育ち過ぎやしないかと一抹の不安が頭をもたげた冥界王妃だったが、あの気難しやのハデスの元ですくすく育った彼自身の強かさを信じることにした。
◇
「―ふぅ、こう暑いと早く歌乙女の所に寄って美味しいフレッシュネクタルでも飲みたくなるな……」
Yako_san8
DONE★hadesweekly5回目お題・《夢うつつ》王子と眠りの化身の話です。誰に対しても分け隔てなく友好的に接する王子と、そんな王子の姿がこの頃なんだか眩しい眠神……。※CP要素はないです。
冥界王子は銀羊毛の夢をみるか ふわりと意識が浮上して薄ぼんやり陰っていた視界が鮮明になる。同時に周囲のざわめきがひたひた満ちる潮のように四方から迫り、銀細工めいて繊細な睫毛を瞬かせたヒュプノスは伏せていた顔を上げた。寝惚けた頭を巡らし《入館口》に目をやるも、赤い水を湛えたステュクス川支流に繋がる泉の表面は穏やかに凪いだままだ。
(……気のせいかな?)
一瞬ザグレウス王子が戻ったような気がしたのだが……。
(な~んだ、つまらないの)
眠神は辺りにはばかることもせず大あくびするとまだ眠気の抜けない目を擦った。
当初からすれば冥界王子の《家出》期間は近頃ではだいぶ長くなったように思う。加えて呆れるほど豊かな死因がザグ王子の家出記録を賑やかしていた。
5007(……気のせいかな?)
一瞬ザグレウス王子が戻ったような気がしたのだが……。
(な~んだ、つまらないの)
眠神は辺りにはばかることもせず大あくびするとまだ眠気の抜けない目を擦った。
当初からすれば冥界王子の《家出》期間は近頃ではだいぶ長くなったように思う。加えて呆れるほど豊かな死因がザグ王子の家出記録を賑やかしていた。
しいげ
DONE #hadesweekly 週間お題「夢うつつ」CP要素薄いですがタナザグかも。ザグの死亡描写があります。
運が悪くて落ち込むタナトスの話(?)
✾ ✾ ✾
ひとり歩いていた。
現実ではないかのようなふわふわした心地に包まれていたが、ここが夢ではないことも自覚していた。
目的地は思い出せない。暗い闇と時折差す明かりが瞬くように脳裏を過ぎる。ここはどこだろう?(彼)は何も思い出せなかった。
纏う衣服は身に馴染んでいた。片肌を露出した出で立ちから、自分が男であることは理解していた。しかし衣は汚れてところどころ裂け、自分の体だというのに動かすことに違和感があった。思い通りに動かそう、という気力が湧いてこないような、動かそうとしても手足に命令が届かないような。
また、(彼)は自分が誰であるか分からず分からないことに疑問がもてなかった。自然にそうある者と受け止めていた。ただひとりさまよい歩くものであるのだろうと。いつから?どのくらいの時間をこうしているのか?だがそれも大きな問題とは思わなかった。いま(彼)はそのようなものであるからだ。
4280ひとり歩いていた。
現実ではないかのようなふわふわした心地に包まれていたが、ここが夢ではないことも自覚していた。
目的地は思い出せない。暗い闇と時折差す明かりが瞬くように脳裏を過ぎる。ここはどこだろう?(彼)は何も思い出せなかった。
纏う衣服は身に馴染んでいた。片肌を露出した出で立ちから、自分が男であることは理解していた。しかし衣は汚れてところどころ裂け、自分の体だというのに動かすことに違和感があった。思い通りに動かそう、という気力が湧いてこないような、動かそうとしても手足に命令が届かないような。
また、(彼)は自分が誰であるか分からず分からないことに疑問がもてなかった。自然にそうある者と受け止めていた。ただひとりさまよい歩くものであるのだろうと。いつから?どのくらいの時間をこうしているのか?だがそれも大きな問題とは思わなかった。いま(彼)はそのようなものであるからだ。
Yako_san8
DONEhadesweekly4回目お題・《さよなら》王子から突然さよならを告げられ動揺する死神とその顛末について。Twitterでフォロワーさんが上げてた死神友情選択時のセリフが妙に印象に残って出来た話です。死神にとって王子に向く過分な感情はすべて二神の関係を脅かすもの(それが恋や愛でも)で、自覚する以前にとても恐れてるのかな~と。ずっ友だった場合自身の恋心に気付けないままなんだろな。気付いて……!
さよならの後先 「―なぁ、タナトス。俺たちここで《さよなら》しないか?」
待ち合わせていたわけではない。けれどふたりのこれからについて一度きちんと話さなければならないと考えた死の化身は、冥界王子の私室で気まぐれな友神の帰りを待っていた。
部屋に戻り佇む影に気付いた王子は一瞬顔を輝かせたものの、すぐハッとした風に頬を強張らせる。不安げな表情といつになく緊張した声で、けれど地下で育まれた宝石めいた双眸は真っ直ぐ死神の姿を捉えていた。ひどく神妙な面持ちで薄く開かれた唇にタナトスは自然注意を向ける。
正面切ってザグレウスから告げられた先の言葉はあまりに衝撃的で、ハデスの館内で大抵床に降りている死神の足裏が少し宙に浮いたくらいだ。そんな動揺を悟られぬようタナトスは金の目を伏せ一呼吸おいてから口を開く。
4967待ち合わせていたわけではない。けれどふたりのこれからについて一度きちんと話さなければならないと考えた死の化身は、冥界王子の私室で気まぐれな友神の帰りを待っていた。
部屋に戻り佇む影に気付いた王子は一瞬顔を輝かせたものの、すぐハッとした風に頬を強張らせる。不安げな表情といつになく緊張した声で、けれど地下で育まれた宝石めいた双眸は真っ直ぐ死神の姿を捉えていた。ひどく神妙な面持ちで薄く開かれた唇にタナトスは自然注意を向ける。
正面切ってザグレウスから告げられた先の言葉はあまりに衝撃的で、ハデスの館内で大抵床に降りている死神の足裏が少し宙に浮いたくらいだ。そんな動揺を悟られぬようタナトスは金の目を伏せ一呼吸おいてから口を開く。
Yako_san8
DONEhadesweekly3回目お題・手入れで書かせていただきました。冥界王子が祖神の領域に遊びに(?)行く話です。
深淵の輝石箱 ハデス館の外れ、冥界王子の秘密の裏庭で暇を持て余した骸骨男は、組み合わせた両手の関節をポキポキ鳴らすと恨めし気な視線を壁前の一角へと向ける。
「坊ちゃん、そろそろあっしにも《仕事》をさせてくだせぇ!……《掃除》ならあっしと同じくらい働き者のゴルゴンにでも頼めばいいじゃないですかい?坊ちゃんには似合いやせんよ!」
「―もう少し待ってくれ、スケリー。これが済んだら、ちゃんとおまえの《手入れ》もしてやるからさ!」
背を向けて黙々と作業していたザグレウス王子は少しだけ振り返ると悪戯っぽく笑う。
「……はぁ、口ばっかり達者になられやしたね」
骸骨男の呆れた風な呟きと共に口蓋の中の2オボロス貨がからりと乾いた音をたてた。
3775「坊ちゃん、そろそろあっしにも《仕事》をさせてくだせぇ!……《掃除》ならあっしと同じくらい働き者のゴルゴンにでも頼めばいいじゃないですかい?坊ちゃんには似合いやせんよ!」
「―もう少し待ってくれ、スケリー。これが済んだら、ちゃんとおまえの《手入れ》もしてやるからさ!」
背を向けて黙々と作業していたザグレウス王子は少しだけ振り返ると悪戯っぽく笑う。
「……はぁ、口ばっかり達者になられやしたね」
骸骨男の呆れた風な呟きと共に口蓋の中の2オボロス貨がからりと乾いた音をたてた。
Yako_san8
DONE★hadesweekly二回目お題・summer/夏冥界王子と死神が現代に遊びに来ている感じのやつ。だいぶ地上で活動できる期間が延びた王子と、そんな異邦人をもてなしたモブおじいちゃんの話です。調べ物してたとき(エモいな…!?)と思った〈しきたり〉について書けたので満足です、夏…!
炎天のまろうど「こんにちは、お若い方。《一匙の甘味》はいかがですか?」
背後から控え目にかけられた声に、黒髪の青年は振り返る。遮る物の何もない剥き出しの地面からの照り返しを全身に受け、今にも行き倒れそうに覚束ない足取りで歩くその旅行者の姿が同情を誘い、ちょうど庭先で薬草を摘んでいた老主人は咄嗟に挨拶をしたのだ。
サファリハットに麻混素材の半袖シャツ、濃紺のベイカーズパンツというカジュアルな出で立ちは典型的なバックパッカーであろうか。剥き出しの前腕が少し赤くなっていることに目を留めた老紳士は(これはかなり酷い日焼けになるな)と若さゆえの蛮勇に内心苦笑する。
「《グリカ・クタリウ》…?」
乾燥に少しひび割れた唇をペロリと舐めた青年は好奇心旺盛な子供めいた瞳で老主人を見返した。精悍な顔立ちながらどこかあどけなさが残る、人懐こい笑顔が印象的だ。右目に眼帯をしているのは一時的なものか、あるいは先天性のものなのか……、いずれにせよ初対面で尋ねることではないだろう。
4237背後から控え目にかけられた声に、黒髪の青年は振り返る。遮る物の何もない剥き出しの地面からの照り返しを全身に受け、今にも行き倒れそうに覚束ない足取りで歩くその旅行者の姿が同情を誘い、ちょうど庭先で薬草を摘んでいた老主人は咄嗟に挨拶をしたのだ。
サファリハットに麻混素材の半袖シャツ、濃紺のベイカーズパンツというカジュアルな出で立ちは典型的なバックパッカーであろうか。剥き出しの前腕が少し赤くなっていることに目を留めた老紳士は(これはかなり酷い日焼けになるな)と若さゆえの蛮勇に内心苦笑する。
「《グリカ・クタリウ》…?」
乾燥に少しひび割れた唇をペロリと舐めた青年は好奇心旺盛な子供めいた瞳で老主人を見返した。精悍な顔立ちながらどこかあどけなさが残る、人懐こい笑顔が印象的だ。右目に眼帯をしているのは一時的なものか、あるいは先天性のものなのか……、いずれにせよ初対面で尋ねることではないだろう。
Yako_san8
DONE★hadesweekly一回目お題・My first…/初めての…冥界王子淡い初(失)恋か~ら~の~、死神が何かを察する小話です。王子と死神はなんだかんだ付き合いの長い親友同士という感じ。お題なので3000字以内のライトな感じを目指したのですが、ちょっとオーバーしました。切れのいい短編が書けるようになりたいです。そしてお題に沿えているのか不安になってきました。ファイトォ!
魂の片割れ 深い緑に囲まれた地を疾走する影があった。深紅の衣をひらめかせ軽快に駆け抜ける。弾む息と踏みしめた地に刻まれた燃え盛る足裏の熱の残照とが、久遠の楽土を彩る何よりも生命の輝きに満ちていた。
年経た石造りの橋を渡り新たな区画に足を踏み入れたその影は、かすかに風に乗って届いた控え目な声に顔を上げると歩みを止める。そして再び、今度はゆったりとした足取りで進み出した。最近とみに絆を深めた友人達の元へと。
柔らかな草地を過ぎてひび割れた石の階段に足をかけ、数段上がったところでようやく談笑している二人の姿が目に映る。―刹那、影は息を呑んで立ち止まった。
「ザグレウス?」
立ち竦む影に気付いた金の髪の男が少し驚いた風に目を丸くしたのち、穏やかな声をかける。その視線を辿るようにして振り向いた黒髪に褐色の肌の男も一瞬遅れて微笑んだ。
3496年経た石造りの橋を渡り新たな区画に足を踏み入れたその影は、かすかに風に乗って届いた控え目な声に顔を上げると歩みを止める。そして再び、今度はゆったりとした足取りで進み出した。最近とみに絆を深めた友人達の元へと。
柔らかな草地を過ぎてひび割れた石の階段に足をかけ、数段上がったところでようやく談笑している二人の姿が目に映る。―刹那、影は息を呑んで立ち止まった。
「ザグレウス?」
立ち竦む影に気付いた金の髪の男が少し驚いた風に目を丸くしたのち、穏やかな声をかける。その視線を辿るようにして振り向いた黒髪に褐色の肌の男も一瞬遅れて微笑んだ。