Recent Search

    Yako_san8

    @Yako_san8

    ゲームと映画と猫が好き。練習がてら小話やお絵描きをポイポイしています。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💘 👍 🐣 🍻
    POIPOI 21

    Yako_san8

    REHABILIうっすら意識し合ってるような、そうでもないような津と襟の日常の延長線お誕生日話です。お祝い感薄めだけど「おたおめ!」って言わせてるのでこれは誕生日の話しです(自己暗示)お誕生日ネタはなんぼあってもいいですからね…。ね……?
    2024.4/15・襟尾純誕生日小話 《約束の生まれた日》



     張り込み用に押さえた雑居ビルの簡素な一室で、二人の刑事が肩を並べカーテンの影から外の様子を窺っていた。クッションの薄いパイプ椅子がぎしりと音を立て、白シャツ姿も爽やかな若い方の男が口を開く。

    「いまのところ目立った動きはないですね……」

     勤務中の襟尾巡査部長は、当然といえば当然だがしごく真面目な面持ちだ。被疑者が潜伏しているとのタレコミがあった安アパートに出入りする人影に、注意深く監視の目を向けている。隣で同じく窓の外に注視していた津詰警部が「そうだな」と軽く相槌を打った。その声に常と異なる覇気のなさを感じた襟尾はチラと上官の横顔を盗み見る。

     張り込みといのは刑事の職務の中でも特に地味でツラい仕事の一つだ。時により車中からであったり、いつでも動けるよう物陰に潜み野外で立ちっぱなしという場合もある。今回は室内待機なのが幸いだが、ある程度の自由が利くと不思議なもので今度はひたすら時間の流れが遅く感じ、延々睡魔との殴り合いが続く。
    6030

    Yako_san8

    DONEあしつつワンドロ・ワンライ蛮族チャレンジ…!途中眠りかけちゃってェ…、結局2時間くらいかかっちゃってェ……。もういいよね…?というコトでサクッと投げておきます。お題は《公衆電話》お借りしたのですが、内容は『なぜか津さん家(奥さん&娘が出ていった一軒家)に葦が居候してる』という謎時空設定でのお話です。本当に謎でごめんね……。
    繋ぐ声 ・あしつつワンドロ・ワンライ お題:《公衆電話》


      「……もしもし、」

     無機質に響く呼び出し音にも飽き、そろそろ受話器を置こうかと離しかけた耳にかすかな男の声が届いた。
    「―おう、帰ってたか。……俺だけどよ」
    再度受話器を耳に寄せた津詰は相手の反応などお構いなしに尋ねる。
    「何か買って帰るモンあるか……?」
     沈黙の続く受話器の向こうから聞えよがしな溜息が伝わってきた。
    すっかり日の落ちた街角で常夜灯に照らされる緑色の電話機の台に凭れながら、刑事の男は掌上の十円玉数枚をジャラと鳴らし、苛ついたように声を低める。
    「だから、必要なモンがあんのかないのかって聞いてんだよ!―早くしろ、小銭がもったいねえ」
     今度の沈黙にはやや逡巡するような間があった。数秒してから素っ気無い声が返ってくる。
    2806

    Yako_san8

    DONEhadesweekly4回目お題・《さよなら》
    王子から突然さよならを告げられ動揺する死神とその顛末について。Twitterでフォロワーさんが上げてた死神友情選択時のセリフが妙に印象に残って出来た話です。死神にとって王子に向く過分な感情はすべて二神の関係を脅かすもの(それが恋や愛でも)で、自覚する以前にとても恐れてるのかな~と。ずっ友だった場合自身の恋心に気付けないままなんだろな。気付いて……!
    さよならの後先 「―なぁ、タナトス。俺たちここで《さよなら》しないか?」

     待ち合わせていたわけではない。けれどふたりのこれからについて一度きちんと話さなければならないと考えた死の化身は、冥界王子の私室で気まぐれな友神の帰りを待っていた。
     部屋に戻り佇む影に気付いた王子は一瞬顔を輝かせたものの、すぐハッとした風に頬を強張らせる。不安げな表情といつになく緊張した声で、けれど地下で育まれた宝石めいた双眸は真っ直ぐ死神の姿を捉えていた。ひどく神妙な面持ちで薄く開かれた唇にタナトスは自然注意を向ける。

     正面切ってザグレウスから告げられた先の言葉はあまりに衝撃的で、ハデスの館内で大抵床に降りている死神の足裏が少し宙に浮いたくらいだ。そんな動揺を悟られぬようタナトスは金の目を伏せ一呼吸おいてから口を開く。
    4967

    Yako_san8

    DONE★hadesweekly二回目お題・summer/夏
    冥界王子と死神が現代に遊びに来ている感じのやつ。だいぶ地上で活動できる期間が延びた王子と、そんな異邦人をもてなしたモブおじいちゃんの話です。調べ物してたとき(エモいな…!?)と思った〈しきたり〉について書けたので満足です、夏…!
    炎天のまろうど「こんにちは、お若い方。《一匙の甘味》はいかがですか?」

     背後から控え目にかけられた声に、黒髪の青年は振り返る。遮る物の何もない剥き出しの地面からの照り返しを全身に受け、今にも行き倒れそうに覚束ない足取りで歩くその旅行者の姿が同情を誘い、ちょうど庭先で薬草を摘んでいた老主人は咄嗟に挨拶をしたのだ。
     サファリハットに麻混素材の半袖シャツ、濃紺のベイカーズパンツというカジュアルな出で立ちは典型的なバックパッカーであろうか。剥き出しの前腕が少し赤くなっていることに目を留めた老紳士は(これはかなり酷い日焼けになるな)と若さゆえの蛮勇に内心苦笑する。
    「《グリカ・クタリウ》…?」
     乾燥に少しひび割れた唇をペロリと舐めた青年は好奇心旺盛な子供めいた瞳で老主人を見返した。精悍な顔立ちながらどこかあどけなさが残る、人懐こい笑顔が印象的だ。右目に眼帯をしているのは一時的なものか、あるいは先天性のものなのか……、いずれにせよ初対面で尋ねることではないだろう。
    4237

    Yako_san8

    DONE★hadesweekly一回目お題・My first…/初めての…
    冥界王子淡い初(失)恋か~ら~の~、死神が何かを察する小話です。王子と死神はなんだかんだ付き合いの長い親友同士という感じ。お題なので3000字以内のライトな感じを目指したのですが、ちょっとオーバーしました。切れのいい短編が書けるようになりたいです。そしてお題に沿えているのか不安になってきました。ファイトォ!
    魂の片割れ 深い緑に囲まれた地を疾走する影があった。深紅の衣をひらめかせ軽快に駆け抜ける。弾む息と踏みしめた地に刻まれた燃え盛る足裏の熱の残照とが、久遠の楽土を彩る何よりも生命の輝きに満ちていた。

     年経た石造りの橋を渡り新たな区画に足を踏み入れたその影は、かすかに風に乗って届いた控え目な声に顔を上げると歩みを止める。そして再び、今度はゆったりとした足取りで進み出した。最近とみに絆を深めた友人達の元へと。
     柔らかな草地を過ぎてひび割れた石の階段に足をかけ、数段上がったところでようやく談笑している二人の姿が目に映る。―刹那、影は息を呑んで立ち止まった。

    「ザグレウス?」
     立ち竦む影に気付いた金の髪の男が少し驚いた風に目を丸くしたのち、穏やかな声をかける。その視線を辿るようにして振り向いた黒髪に褐色の肌の男も一瞬遅れて微笑んだ。
    3496