塔矢の娘と『塔矢の娘と』

「わたしはねぇ、囲碁の神様が大嫌いだから。」
　今年もプロ試験を受ける気はないのかと夕飯どきに何気なく聞いた所、もちろん、と言った後に続いた娘の返答がこれだった。
　オレは少し固まって「…そうか。」と返した後、いつも「誰にでも優しい」と評されがちな娘の口から何の抵抗もなしにするりと出た「大嫌い」の衝撃からなかなか立ち直れなかった。



『塔矢の娘と』



「囲碁の神様…？」
　塔矢の碁会所。
　最近顔を合わせる度に聞かれる「今年こそひかりちゃんはプロ試験を受けそうか」の返答に先日のやり取りをあわせて伝えると、塔矢の娘は顔を思い切り歪めて「誰」と呟いた。
「何がどうしていきなり神様の話になるんです。」
「わからねーよ。オレもいきなり何の話だと面食らって」

地獄の北斗杯秀策なんて大したことないと言った棋士はどこのどいつだと憤りつついざ邂逅したら佐為に瓜二つの異国語を話す麗人だった進藤さんの北斗杯の行方。そんな進藤さんが邂逅一番「佐為？！」などと口走ったが為にこれまで積み上げたsaiの正体の仮説がガラガラと音を立てて崩れる塔矢の北斗杯の行方
佐為そっくりの見た目で打ち筋も言動も佐為と全く違う高永夏に愛憎入り交じった視線を向ける進藤の眼差しの意味がわからず胸のざわつきが止まらない塔矢！と進藤が自分を通して別のものを見ていることを悟り「あのまっすぐな目をオレに向けさせてやる！」と決意を新たにする高永夏のトライアングラー

何かが起こっているが一体なんなのか分からずとまどう社添え