enokabeuchi
DOODLE香🌼香 朝の清涼な空気を優しく彩る豊潤な香気に誘われて、冠星は目を覚ました。枕元の脇机を見やれば、花瓶に活けられた水仙が白く朝日に透けていた。
宵はよく四季折々の花を見つけては寝込む冠星のためにと摘んでくる。以前はそのために池に落ちるわ木からも落ちるわで散々に叱ったものだが、今となってはそんなこともなくなり、肺に障るからと滅多に香を焚かない寝室にも、いつも柔らかな花の香りが漂っていた。
朝晩の花冷えでここのところ芳しくなかった調子も落ち着いたようで、昨夜までの息苦しさは消えており、冠星はひとつ大きく息を吸い込むと寝台から起き上がる。
先に身支度まで終えていた宵がそれに気づき、「おはようございます」と笑顔を向けた。
2962宵はよく四季折々の花を見つけては寝込む冠星のためにと摘んでくる。以前はそのために池に落ちるわ木からも落ちるわで散々に叱ったものだが、今となってはそんなこともなくなり、肺に障るからと滅多に香を焚かない寝室にも、いつも柔らかな花の香りが漂っていた。
朝晩の花冷えでここのところ芳しくなかった調子も落ち着いたようで、昨夜までの息苦しさは消えており、冠星はひとつ大きく息を吸い込むと寝台から起き上がる。
先に身支度まで終えていた宵がそれに気づき、「おはようございます」と笑顔を向けた。
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DOODLE芍薬の君に恋して玉砕するモブの話 俺は三年ほど前から衛尉として後宮の門を守っている。
この歳にしてはなかなかの出世頭だと思う。女にも酒にも目もくれず鍛練に励んだ努力の賜物だ。
だというのに。
「はぁ……」
夕暮れに染まる路を眺め、大きなため息をこぼす。
「ははっ、今日も[[rb:芍薬 > しゃくやく]]の君は現れなかったな」
共に門番を務める相方が、こらえきれないと言うように肩を震わせた。
そう、そんな仕事一辺倒だった俺にも春風が吹いたのだ。
想いを寄せる名も知らぬ麗人、「芍薬の君」は数日前に後宮を訪れた皇太子に付き添っていた女官である。
サラサラと艶やかな白髪に透き通るような白磁の肌、長い睫に縁取られた瞳は容姿からくる儚さとは反して理知的で強かな光を宿しており。月のような凛とした佇まいを花弁のような薄紅色の衣が彩っていた。
1686この歳にしてはなかなかの出世頭だと思う。女にも酒にも目もくれず鍛練に励んだ努力の賜物だ。
だというのに。
「はぁ……」
夕暮れに染まる路を眺め、大きなため息をこぼす。
「ははっ、今日も[[rb:芍薬 > しゃくやく]]の君は現れなかったな」
共に門番を務める相方が、こらえきれないと言うように肩を震わせた。
そう、そんな仕事一辺倒だった俺にも春風が吹いたのだ。
想いを寄せる名も知らぬ麗人、「芍薬の君」は数日前に後宮を訪れた皇太子に付き添っていた女官である。
サラサラと艶やかな白髪に透き通るような白磁の肌、長い睫に縁取られた瞳は容姿からくる儚さとは反して理知的で強かな光を宿しており。月のような凛とした佇まいを花弁のような薄紅色の衣が彩っていた。
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DONE学パロ幻覚まとめ双影双書オマケ学パロやった~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!
校内で男女問わず見惚れる冠星様と同じ顔、宵のキラキラのお目めを見られるのは冠星だけなのサイコーでは!??!??? 4
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DOODLE冠星と宵、一年目の夏🍧 七夕を終えて約[[rb:一月 > ひとつき]]が経ち、夏本番を迎えて暑さが増してきていた。特に今年は猛暑になると占いの結果が出たとかで、[[rb:来 > きた]]る干ばつや飢饉の対策をと官吏達は連日大わらわであった。
しかしそんな喧騒も外朝から離れた皇太子の邸宅までは届かない。
宵が掃除を終えて私室へと戻れば、冠星はいつもと変わらず涼しい顔をして書を読んでいた。
「戻りました……今日はほんっとうに暑いですね!」
外に出たら頭のてっぺんが焦げそうでした、とつむじをさすればまだじりじりとした熱が残っていて。
「黒髪でよかったではないか、多少焦げてもわかりづらいぞ」
「全然よくないですよ!……っていうか冠星さまは暑くないんですか?」
2726しかしそんな喧騒も外朝から離れた皇太子の邸宅までは届かない。
宵が掃除を終えて私室へと戻れば、冠星はいつもと変わらず涼しい顔をして書を読んでいた。
「戻りました……今日はほんっとうに暑いですね!」
外に出たら頭のてっぺんが焦げそうでした、とつむじをさすればまだじりじりとした熱が残っていて。
「黒髪でよかったではないか、多少焦げてもわかりづらいぞ」
「全然よくないですよ!……っていうか冠星さまは暑くないんですか?」
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DOODLE⚠️29話ネタバレ注意燕宵(?)
姫抱 「それでは参りましょう!」
はっきりと鼓舞するように告げられた言葉と共に翠燕は屋根瓦を蹴り、飛ぶ。
その姿は端から見れば篭の鳥の姫君を救い出す勇者のようであったが──
「~~~!!……ッ!」
宵は漏れそうになる悲鳴をなんとかこらえるのに必死で、人生で感じたことのない浮遊感に恥もなにも思う余裕はなく、思わず己を抱いている翠燕にぎゅっとしがみつく。
ここはただでさえ切り立った崖を利用して建てられた皇宮の、絶景の上階である。いくら翠燕といえどこの高さから落ちてしまえば命はないだろう。
しかしそんなことは杞憂だとばかりに軽やかに、
とん、と重みを感じさせない足音とともに下層の屋根へと着地すると、澄んだ水晶の瞳が宵を見下ろした。真っ直ぐに向けられたそれが微かに緩み、
1051はっきりと鼓舞するように告げられた言葉と共に翠燕は屋根瓦を蹴り、飛ぶ。
その姿は端から見れば篭の鳥の姫君を救い出す勇者のようであったが──
「~~~!!……ッ!」
宵は漏れそうになる悲鳴をなんとかこらえるのに必死で、人生で感じたことのない浮遊感に恥もなにも思う余裕はなく、思わず己を抱いている翠燕にぎゅっとしがみつく。
ここはただでさえ切り立った崖を利用して建てられた皇宮の、絶景の上階である。いくら翠燕といえどこの高さから落ちてしまえば命はないだろう。
しかしそんなことは杞憂だとばかりに軽やかに、
とん、と重みを感じさせない足音とともに下層の屋根へと着地すると、澄んだ水晶の瞳が宵を見下ろした。真っ直ぐに向けられたそれが微かに緩み、