arei_ash
DONEpixivに載せていた『龍陽の契り』壱と弐をひとつにまとめました。現代×スタレ世界の話です。なんでも許せる方向けです。
龍陽の契り 龍陽の契り
──身体が輪郭を無くし、海に溶ける。まるで海月のように浮き沈みを繰り返しながら夢の狭間を漂う。ふと目の前を、一片の楓が舞う。手を伸ばすと、それは泡のように霧散した。
──瞬間、視界が白く塗り潰される。
目を開けると、眼前には海の中を模したような壮大な景色が広がっていた。柔らかなさざなみの音が響き、濃藍の空に満月が浮かぶ。その月明かりは、まるで見守っているかのように傍らに立つ人影と丹恒を照らしていた。
「──緊張しているのか?」
隣から声が聞こえた。その声は驚くほど優しい。こちらを気遣うような気配で、それが少しくすぐったい。
「緊張していないと言えば嘘になる。……けれど二人でなら、必ず使命を果たせると信じている」
22210──身体が輪郭を無くし、海に溶ける。まるで海月のように浮き沈みを繰り返しながら夢の狭間を漂う。ふと目の前を、一片の楓が舞う。手を伸ばすと、それは泡のように霧散した。
──瞬間、視界が白く塗り潰される。
目を開けると、眼前には海の中を模したような壮大な景色が広がっていた。柔らかなさざなみの音が響き、濃藍の空に満月が浮かぶ。その月明かりは、まるで見守っているかのように傍らに立つ人影と丹恒を照らしていた。
「──緊張しているのか?」
隣から声が聞こえた。その声は驚くほど優しい。こちらを気遣うような気配で、それが少しくすぐったい。
「緊張していないと言えば嘘になる。……けれど二人でなら、必ず使命を果たせると信じている」
arei_ash
DONE異世界転移系 楓恒の続き2続きます
丹恒は夢から飛び起きた。まだ半分眠りの中にいたせいで視界がぐらぐらと揺れる。それと同時に、こめかみがぎりぎりと締め付けられるような不快感。思わず顔を顰めた。目覚めは最悪だ。
「…っは、……う、」
何故か息苦しい。肺がきりりと痛んで、激しく上下する肩に気づいた。どうやら呼吸も乱れているらしい。深く空気を吸い込んで、ゆっくりと吐き出した。何度か繰り返すと揺れる視界も痛みを発するこめかみも大分ましになった。もう一度大きく息を吐き出して辺りを見渡す。
テーブルの上に置かれた飲みかけのペットボトル。
布団の横に無造作に積まれた本の山。
窓際に昨夜干した洗濯物。
そこまで確認して、力を抜いた。見慣れた自室にいくらか正気を取り戻した。枕元に置いてあるスマホの画面を開くと、五時と表示されている。窓から差し込む光はまだ弱い。
3587「…っは、……う、」
何故か息苦しい。肺がきりりと痛んで、激しく上下する肩に気づいた。どうやら呼吸も乱れているらしい。深く空気を吸い込んで、ゆっくりと吐き出した。何度か繰り返すと揺れる視界も痛みを発するこめかみも大分ましになった。もう一度大きく息を吐き出して辺りを見渡す。
テーブルの上に置かれた飲みかけのペットボトル。
布団の横に無造作に積まれた本の山。
窓際に昨夜干した洗濯物。
そこまで確認して、力を抜いた。見慣れた自室にいくらか正気を取り戻した。枕元に置いてあるスマホの画面を開くと、五時と表示されている。窓から差し込む光はまだ弱い。
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MAIKING異世界転移系の楓恒◇続きます
*微死ネタ
*流血表現あり
プロローグ──空が泣いていた。
ぽたり、ぽたりと雫が落ちる。
ひとつ、またひとつと頬に当たって流れ落ちる。
それはどうしてだか、僅かに温かい。そこで、はたと気づいた。
誰かが泣いているのだ。明暗しか認識する事が出来なくなった視界に影が差していたからだ。
またひとつ、雫が頬を伝っていく。
「──、──!」
声がする。これは誰の声だろうか。轟々と頭を揺らすような耳鳴りのせいで何と言っているのか分からない。
それでも、叫んでいる事は分かった。
「──!」
名を呼ばれた。呼ばれているのは自分だ。誰かが自分の名を必死に叫んでいる。
泣かないで欲しいと思う。泣かなくて良いと声をかけてやりたいのに、血の塊が口から吐き出されるだけで意味のある言葉を作れなかった。
531ぽたり、ぽたりと雫が落ちる。
ひとつ、またひとつと頬に当たって流れ落ちる。
それはどうしてだか、僅かに温かい。そこで、はたと気づいた。
誰かが泣いているのだ。明暗しか認識する事が出来なくなった視界に影が差していたからだ。
またひとつ、雫が頬を伝っていく。
「──、──!」
声がする。これは誰の声だろうか。轟々と頭を揺らすような耳鳴りのせいで何と言っているのか分からない。
それでも、叫んでいる事は分かった。
「──!」
名を呼ばれた。呼ばれているのは自分だ。誰かが自分の名を必死に叫んでいる。
泣かないで欲しいと思う。泣かなくて良いと声をかけてやりたいのに、血の塊が口から吐き出されるだけで意味のある言葉を作れなかった。
arei_ash
MOURNING話の都合上没になってしまった楓恒R-15くらい
「待て。丹恒、……何故服を脱ぐ?」
「何故って、服を脱がなければ出来ないだろう」
解いた帯をそのままに首を傾げる。何を当たり前の事を言うのだろうか。丹楓の質問の意図が分からない。
「まさか其方、交合が入れて出して終わりなどとは思ってはおるまいな」
「え、違うのか?」
その言葉を聞いた丹楓は、まるで頭痛が痛いかのように額に手を当て、盛大な溜息を付いた。一体何なんだ。
「良いか、丹恒。持明の龍の交合は、五日掛けて行う」
「五日!?」
流石にそれは体力が持たないのでは無いだろうか。腹上死という三文字が丹恒の脳裏を過ぎる。
「故に、其方の言うペースで交わった場合、体力が尽きるのは時間の問題。そこで、慣例として肉体の交合を行うのは五日目。それ以外の四日を気を高める愛撫に当てるのだ」
787「何故って、服を脱がなければ出来ないだろう」
解いた帯をそのままに首を傾げる。何を当たり前の事を言うのだろうか。丹楓の質問の意図が分からない。
「まさか其方、交合が入れて出して終わりなどとは思ってはおるまいな」
「え、違うのか?」
その言葉を聞いた丹楓は、まるで頭痛が痛いかのように額に手を当て、盛大な溜息を付いた。一体何なんだ。
「良いか、丹恒。持明の龍の交合は、五日掛けて行う」
「五日!?」
流石にそれは体力が持たないのでは無いだろうか。腹上死という三文字が丹恒の脳裏を過ぎる。
「故に、其方の言うペースで交わった場合、体力が尽きるのは時間の問題。そこで、慣例として肉体の交合を行うのは五日目。それ以外の四日を気を高める愛撫に当てるのだ」