陽野あたる
DONE140SSまとめ6夢に見るほど触れたい、と想っていたあなたが今目の前にいて。伸ばした手を拒むことなく受け入れてくれて。くすぐってえな、とまるで秘密を共有しようとするかのようにくふ、と小さく笑うものだから。ああ、愛おしくて幸せで堪らない。自分とは違う匂いと温もりと感触。この先を望んでもいいだなんて、
貴方は鉄朱で『どうにかなってしまいそう』をお題にして140文字SSを書いてください。
#shindanmaker
飯はちゃんと食ったはずなのに物足りない。追加で何か食う、と言うのも違う気がして、ふと視線をやると並んだ酒瓶の中にあいつの好きな銘柄があった。ああそうか、そう言やしばらく逢ってない。ツレが足りなくても腹って減るもんなんだなあ。明日は休みだし、今夜辺りツマミでも持って訪ねてみようか。
2775貴方は鉄朱で『どうにかなってしまいそう』をお題にして140文字SSを書いてください。
#shindanmaker
飯はちゃんと食ったはずなのに物足りない。追加で何か食う、と言うのも違う気がして、ふと視線をやると並んだ酒瓶の中にあいつの好きな銘柄があった。ああそうか、そう言やしばらく逢ってない。ツレが足りなくても腹って減るもんなんだなあ。明日は休みだし、今夜辺りツマミでも持って訪ねてみようか。
陽野あたる
MAIKING夜明けの前が一番昏い③ 煙羅煙羅から情報を掴んだと言う知らせが入ったのは、それから数日後のことであった。
「大通りの南の方にある料亭なんですが……『和久井屋』と言う名前の」
「他國からの客も多い店だな。結構賑わっていたように記憶しているが」
他所からの出入りが多い、と言うことは不定の輩も入りやすい、と言うことだ。勿論堺にはそうした店が星の数ほどある。それでもいくつかは『客』と呼ぶには些か胡散臭い者たちの出入りが多いとして、裏では絶えず監視をつけている場所があるのだ。
名前が上がった和久井屋も、そうした店の一つであった。
「あれからしばらく見張っていたのですが、入った客の数と出た客の数が合わない日が幾度かありました」
「……それって、」
2162「大通りの南の方にある料亭なんですが……『和久井屋』と言う名前の」
「他國からの客も多い店だな。結構賑わっていたように記憶しているが」
他所からの出入りが多い、と言うことは不定の輩も入りやすい、と言うことだ。勿論堺にはそうした店が星の数ほどある。それでもいくつかは『客』と呼ぶには些か胡散臭い者たちの出入りが多いとして、裏では絶えず監視をつけている場所があるのだ。
名前が上がった和久井屋も、そうした店の一つであった。
「あれからしばらく見張っていたのですが、入った客の数と出た客の数が合わない日が幾度かありました」
「……それって、」
陽野あたる
MAIKING夜明け前が一番昏い② 夜泣き石の残骸を解析した結果、全ての國の名が上がった。つまり部下が持って来たのとはまた別の石も、あの大量に廃棄された欠片の中には存在していたことになる。
無闇な乱獲を防ぐため、どこの國も他の領地の獲物を狩ることは禁止とされており、密猟は重い罰則が課せられる決まりだ。だが流通販路としての店は堺に多くあり、今回の件が明らかになれば儲けのためにその禁を破ったのでは、と疑われる彼らの信頼は大きく揺らぐことになるだろう。
「福助猫に続いて夜泣き石もか……」
「お館様、これは早くに他國へ連絡を入れて、密猟組織を提携で追った方がいいです。モタモタしてると別の奴が狙われる。それにもしかしたら、他でも同じようなことが起こってるかもしれません」
7712無闇な乱獲を防ぐため、どこの國も他の領地の獲物を狩ることは禁止とされており、密猟は重い罰則が課せられる決まりだ。だが流通販路としての店は堺に多くあり、今回の件が明らかになれば儲けのためにその禁を破ったのでは、と疑われる彼らの信頼は大きく揺らぐことになるだろう。
「福助猫に続いて夜泣き石もか……」
「お館様、これは早くに他國へ連絡を入れて、密猟組織を提携で追った方がいいです。モタモタしてると別の奴が狙われる。それにもしかしたら、他でも同じようなことが起こってるかもしれません」
陽野あたる
MAIKING以前書いてたもの一本に纏めていこうと思います。夜明け前が一番昏い① カアアー……ッ、ァアー!
鈍色の空の下を無数の鴉が飛び交っている。
つんざくような耳障りな鳴き声は、縄張りへ無断で侵入されたが故の威嚇か、獲物を横取りされそうな怒り故か、刺々しい敵意に満ちていた。
「兄貴、こっちです」
朱の盆が部下に案内されたのは、堺の郊外の中でも一際國境の山に近い外れた場所だった。
街道からも奥まっているため、滅多なことでは他の者も足を踏み入れないだろう。市民から鴉の集団が騒いでいる、何かあったのではと通報がなければ、きっとまだ誰も気づかなかったに違いない。
「…………こいつぁ、酷えな」
思わず舌打ちと共に顔を顰める。
朱の盆の視線の先には、大量に打ち捨てられた夜泣き石の残骸が転がっていた。
3841鈍色の空の下を無数の鴉が飛び交っている。
つんざくような耳障りな鳴き声は、縄張りへ無断で侵入されたが故の威嚇か、獲物を横取りされそうな怒り故か、刺々しい敵意に満ちていた。
「兄貴、こっちです」
朱の盆が部下に案内されたのは、堺の郊外の中でも一際國境の山に近い外れた場所だった。
街道からも奥まっているため、滅多なことでは他の者も足を踏み入れないだろう。市民から鴉の集団が騒いでいる、何かあったのではと通報がなければ、きっとまだ誰も気づかなかったに違いない。
「…………こいつぁ、酷えな」
思わず舌打ちと共に顔を顰める。
朱の盆の視線の先には、大量に打ち捨てられた夜泣き石の残骸が転がっていた。
陽野あたる
DONE今回の大バンド時代のあれやこれやでパーン!した結果の代物です。ーー今日はいっぱい人助けしたぞ……バアちゃんの荷物運んだし、迷子探し手伝ったし、引ったくり捕まえたし、お使いもちゃんと終わった……
気分よく戦果を心の中で指折り数えながら、朱の盆は道場への廊下を歩いていた。思わず上機嫌に鼻歌がこぼれてしまうのはご愛嬌と言うやつだ。
ぬらりひょんに拾われて、ねだって稽古をつけてもらうようになってからこっち、朱の盆は傭兵稼業の手伝いをするのが日課となっていた。無論、まだ妖力の使い方が完全に掌中にあるとは言えない段階であるため、あくまでも『力は絶対使わない』と言う約束事の前提ではあるが。そうなると自然『手伝い』と言っても、荒事からは程遠い仕事内容になる。
それでも誰かに感謝されることはとても嬉しい。
3602気分よく戦果を心の中で指折り数えながら、朱の盆は道場への廊下を歩いていた。思わず上機嫌に鼻歌がこぼれてしまうのはご愛嬌と言うやつだ。
ぬらりひょんに拾われて、ねだって稽古をつけてもらうようになってからこっち、朱の盆は傭兵稼業の手伝いをするのが日課となっていた。無論、まだ妖力の使い方が完全に掌中にあるとは言えない段階であるため、あくまでも『力は絶対使わない』と言う約束事の前提ではあるが。そうなると自然『手伝い』と言っても、荒事からは程遠い仕事内容になる。
それでも誰かに感謝されることはとても嬉しい。
陽野あたる
DONEツイッターに投げてた分。ほぼ鉄朱。
140SSまとめ5頭を撫でられている感触に目を覚ます。案の定、隣には昨日初めて繋がった相手が、今まで見たことのないくらい嬉しそうな顔で寝転んでいた。おはようの声もこれ以上ないくらい甘くて、思わずあれやこれやが脳裏に甦る。いつから起きてた…無防備を晒したことが恥ずかしい。うっせえ、可愛いって言うな!
お題bot*(@0daib0t)『あんまりニヤけるな、ばか』
お前は他人にどう言われようと、あんまり気にしないと思ってた。後ろ指差されても陰口叩かれても、それがどうしたって笑って見返すもんだと思ってた。オレ?そんなんで傷つくほどヤワじゃねえわ。オトコ同士だからとか、鼠族だとか鬼族だとか、お前を好きだとか嫌いだとかの理由にはならねえじゃんか。
8237お題bot*(@0daib0t)『あんまりニヤけるな、ばか』
お前は他人にどう言われようと、あんまり気にしないと思ってた。後ろ指差されても陰口叩かれても、それがどうしたって笑って見返すもんだと思ってた。オレ?そんなんで傷つくほどヤワじゃねえわ。オトコ同士だからとか、鼠族だとか鬼族だとか、お前を好きだとか嫌いだとかの理由にはならねえじゃんか。
陽野あたる
PROGRESS新刊こんなのどうですか(ゲンドウポーズ)ーー嫌なら断りゃいいのに……
そう頭では理解しているはずなのに、重い足を引きずるようにして約束の場所に向かう己は本当に愚かで浅ましいと思う。
多分鉄鼠は時間になって朱の盆が姿を現さなくとも、何とも思わないだろう。仕事が押したと見るか、別に切れてもいいと思うか。とかく、表向きは胸倉を掴み罵声と拳を投げ合う仲の悪さが周知されているような間柄だ。
きっとこれ以上嫌われることなどない。
胸の奥にわだかまるもやもやを吐き出すように、無意識に溜息がこぼれた。
傘の表面を叩く音よりも、降りしきる雫の勢いの方が耳につく土砂降りの夜。
明かりの消えた宿の戸を控えめに叩くと、暫くしてから立てつけの悪いそれがゆっくりと開く。途端埃っぽいようなかび臭いような室内の空気が鼻について、朱の盆は店の者に気づかれぬようぐっと奥歯を噛み締めた。
1132そう頭では理解しているはずなのに、重い足を引きずるようにして約束の場所に向かう己は本当に愚かで浅ましいと思う。
多分鉄鼠は時間になって朱の盆が姿を現さなくとも、何とも思わないだろう。仕事が押したと見るか、別に切れてもいいと思うか。とかく、表向きは胸倉を掴み罵声と拳を投げ合う仲の悪さが周知されているような間柄だ。
きっとこれ以上嫌われることなどない。
胸の奥にわだかまるもやもやを吐き出すように、無意識に溜息がこぼれた。
傘の表面を叩く音よりも、降りしきる雫の勢いの方が耳につく土砂降りの夜。
明かりの消えた宿の戸を控えめに叩くと、暫くしてから立てつけの悪いそれがゆっくりと開く。途端埃っぽいようなかび臭いような室内の空気が鼻について、朱の盆は店の者に気づかれぬようぐっと奥歯を噛み締めた。
陽野あたる
DONE愛は刹那@お題bot様(@ l_is_m)よりお借りしました。※※※今回くたばれハッピーエンド仕様の特殊設定です。でも正直考えたことがないとは言わない……(ゲンドウポーズ)お館様がクソヤローバージョン、匂わせでも他CP地雷の方はごチュウいください※※※ 2256