Laugh_armor_mao
DONE #鬼狐ワンドロワンライお題 『休日』
Fais bon voyageキィィィィン
考える時間が必要だった。
耳管の調整が追い付かない空間で、ギシリとこめかみに痛みを覚えて、ノートブック程の切り取られた空に目を向ける。
何を持ったまま、何を手放したのか。
台風の時期は過ぎたと言うが、もふりとした雲が下に拡がる碧い塩水溜まりを隠して、白い地平線と蒼い空だけの平坦な風景画が等間隔に飾られているだけだった。
仕事のコト
友人のコト
リスナーのコト
家族のコト
自分のコト
目許だけ見えるアテンダントに毛布を返しながら、ついでに席を立って、扉の前で延びをする。
日々のタスクを熟しながらではなく、ソレだけを考える時間が必要だった。
明日のコト
来月、5年後、10年後。
2277考える時間が必要だった。
耳管の調整が追い付かない空間で、ギシリとこめかみに痛みを覚えて、ノートブック程の切り取られた空に目を向ける。
何を持ったまま、何を手放したのか。
台風の時期は過ぎたと言うが、もふりとした雲が下に拡がる碧い塩水溜まりを隠して、白い地平線と蒼い空だけの平坦な風景画が等間隔に飾られているだけだった。
仕事のコト
友人のコト
リスナーのコト
家族のコト
自分のコト
目許だけ見えるアテンダントに毛布を返しながら、ついでに席を立って、扉の前で延びをする。
日々のタスクを熟しながらではなく、ソレだけを考える時間が必要だった。
明日のコト
来月、5年後、10年後。
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DONE #鬼狐ワンドロワンライお題 『デート』
Autumn’s the mellow time. 「デート?」
「不服か?」
「お前と二人でメシ喰いに行く以外に何処行くんだよ」
ゆらゆらと温もりを立ち登らせるホットレモネードに、寒さで結晶化した蜂蜜をたっぷり溶かしながら、ミスタは首を傾げた。スプーンに残るサリサリとした甘い結晶をあむあむと舐める。パッと弾ける香りは目の前でヴォックスがレモンを絞ったからで、男二人の朝にはちょっと爽やか過ぎる。
「映画観てメシ喰って軽く呑んでベッド。家で全部出来るジャン」
お前のメシ旨いし。澄んだ青翡翠の眼が上目遣いに外出を拒む。
ヴォックスはちょっと眉を下げて笑いながら、咥えたままぴこぴこと上下に振れるスプーンの柄を摘んでそっと外す。
「あぁ、息子よ。お前のデートプランの貧弱さは扨置き、私がミスタと一緒に見たい景色があるんだ。我儘に付き合ってくれないか?」
1107「不服か?」
「お前と二人でメシ喰いに行く以外に何処行くんだよ」
ゆらゆらと温もりを立ち登らせるホットレモネードに、寒さで結晶化した蜂蜜をたっぷり溶かしながら、ミスタは首を傾げた。スプーンに残るサリサリとした甘い結晶をあむあむと舐める。パッと弾ける香りは目の前でヴォックスがレモンを絞ったからで、男二人の朝にはちょっと爽やか過ぎる。
「映画観てメシ喰って軽く呑んでベッド。家で全部出来るジャン」
お前のメシ旨いし。澄んだ青翡翠の眼が上目遣いに外出を拒む。
ヴォックスはちょっと眉を下げて笑いながら、咥えたままぴこぴこと上下に振れるスプーンの柄を摘んでそっと外す。
「あぁ、息子よ。お前のデートプランの貧弱さは扨置き、私がミスタと一緒に見たい景色があるんだ。我儘に付き合ってくれないか?」
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DONE #鬼狐ワンドロワンライお題 『風邪』
開催有難うございます。
1h超
Feed acolid and starve a fever「103.3°F(39.7℃)」
体温計を読上げたヴォックスは、へニャリと眉を下げ苦笑した。
目の前の薄っすら上気した頬、潤んだ青翡翠の瞳、緩く緩慢な動作、浅い呼気。久方の逢瀬に、己へ向けられた愛心だと心踊らせた結果がコレだ。
「おー。ダリぃはずだわ」
フラフラと左右に揺れながら当の本人はぽやぽやと言葉を紡ぐ。手にしたアップルジュースの入ったグラスから、パキンと氷の割れる音。
◆
夏も終わり、他国からの印象に違わぬ曇天と霧に沈むこの国は、ともすれば豪雨に見舞われる事も少なく無い季節に突入した。来月には、32°F近く迄気温の下がる日が増えるだろう。
ドアから滑り込んで来たミスタは、冷たい秋霖が辛うじて形を取って居ると云った形貌で、牡丹鼠色の頭から爪先までしょぼ濡れていた。
2156体温計を読上げたヴォックスは、へニャリと眉を下げ苦笑した。
目の前の薄っすら上気した頬、潤んだ青翡翠の瞳、緩く緩慢な動作、浅い呼気。久方の逢瀬に、己へ向けられた愛心だと心踊らせた結果がコレだ。
「おー。ダリぃはずだわ」
フラフラと左右に揺れながら当の本人はぽやぽやと言葉を紡ぐ。手にしたアップルジュースの入ったグラスから、パキンと氷の割れる音。
◆
夏も終わり、他国からの印象に違わぬ曇天と霧に沈むこの国は、ともすれば豪雨に見舞われる事も少なく無い季節に突入した。来月には、32°F近く迄気温の下がる日が増えるだろう。
ドアから滑り込んで来たミスタは、冷たい秋霖が辛うじて形を取って居ると云った形貌で、牡丹鼠色の頭から爪先までしょぼ濡れていた。
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DONE #鬼狐ワンドロワンライお題 『雨』
アゲダの傘祭り。
催花雨(さいかう)Está chovendo hoje. Onde está meu guarda-chuva
(今日は雨だな。私の傘はどこだろう?)
雨の日の記憶は鈍色。
短い夏の前に、冷たい冷たい雨が音も無く降る。
霧が空と街を繋げて、眼の前を白く烟らせ。手を伸ばせば流動する水滴は指の間を擦り抜けて、ひやりとした感覚だけを遺して消えた。
蒼い夜が来訪を告げても、ミスタは其処から動けなかった。酷い倦怠感とドン底に落ちた気分で、いじっているスマホの内容は目が滑って全然理解できない。ささくれ立った神経は眠る事も赦してくれない。
ソファに丸まってスマホをいじり続ける、悲壮な仔狐を見付けたのは、配信を終えてリビングにやって来た就寝前の同居人だった。
1189(今日は雨だな。私の傘はどこだろう?)
雨の日の記憶は鈍色。
短い夏の前に、冷たい冷たい雨が音も無く降る。
霧が空と街を繋げて、眼の前を白く烟らせ。手を伸ばせば流動する水滴は指の間を擦り抜けて、ひやりとした感覚だけを遺して消えた。
蒼い夜が来訪を告げても、ミスタは其処から動けなかった。酷い倦怠感とドン底に落ちた気分で、いじっているスマホの内容は目が滑って全然理解できない。ささくれ立った神経は眠る事も赦してくれない。
ソファに丸まってスマホをいじり続ける、悲壮な仔狐を見付けたのは、配信を終えてリビングにやって来た就寝前の同居人だった。
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DONE #鬼狐ワンドロワンライお題 『手料理』
陪食「ねぇ、食材ってドコから料理になんの?」
デザート代わりのハニーマリネをフォークで突きながら、ミスタが何とも無しにヴォックスに問い掛けた。
「禅問答か?」
グラスに炭酸水を継ぎ足しながら、艷やかな黒髪の隙間から愉快そうに覗く金色の瞳を細めて、先を促す。
「いや、サラダって葉っぱ千切るだけじゃん?肉とか、火を通したら?なんか味のするソース掛けたら?皿に装ったら?」
テーブルの上には粗方消費された、真っ赤なトマトソースにバジルを添えたチキンのソテーと、温野菜をクリームチーズで和えたカラフルなサラダ、トマトを果物と言い張るミスタの為に、2種類のグレープフルーツと共にマリネにしたプチトマトが、蜂蜜に濡れて光っている。
1342デザート代わりのハニーマリネをフォークで突きながら、ミスタが何とも無しにヴォックスに問い掛けた。
「禅問答か?」
グラスに炭酸水を継ぎ足しながら、艷やかな黒髪の隙間から愉快そうに覗く金色の瞳を細めて、先を促す。
「いや、サラダって葉っぱ千切るだけじゃん?肉とか、火を通したら?なんか味のするソース掛けたら?皿に装ったら?」
テーブルの上には粗方消費された、真っ赤なトマトソースにバジルを添えたチキンのソテーと、温野菜をクリームチーズで和えたカラフルなサラダ、トマトを果物と言い張るミスタの為に、2種類のグレープフルーツと共にマリネにしたプチトマトが、蜂蜜に濡れて光っている。
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DONE #鬼狐ワンドロワンライお題 『横顔』
同じ日のそれぞれの視点。
日常カタルシス○月○日 くもり、にわか雨
結構大き目の雨粒に襲われたけど、ヴォックスが傘に入れてくれたから、事なきを得た。
「丁度良いからティータイムにしよう」
通りの先に視線をやっているヴォックスの、黒い髪に滑る雫は、ちょっとセクシー。
思ったんだけど、傘、どっから出したのかな?雨はすぐ止んで、雲間から陽射しが差し込んで綺麗だった!
○月○日 曇雨天
驟雨に見舞われたものの、本日の降水強度は然程では無かったようで、雨宿り先に着くまでに上った。
「見て!エンジェルラダーだ!」
ミスタの声の通り、夕映えの残光が雲の間から放射状に街に降り注いでいた。
彼の牡丹鼠色の髪に載った雨粒もキラキラと彩光を拡散していた。
○月△日 雨
1186結構大き目の雨粒に襲われたけど、ヴォックスが傘に入れてくれたから、事なきを得た。
「丁度良いからティータイムにしよう」
通りの先に視線をやっているヴォックスの、黒い髪に滑る雫は、ちょっとセクシー。
思ったんだけど、傘、どっから出したのかな?雨はすぐ止んで、雲間から陽射しが差し込んで綺麗だった!
○月○日 曇雨天
驟雨に見舞われたものの、本日の降水強度は然程では無かったようで、雨宿り先に着くまでに上った。
「見て!エンジェルラダーだ!」
ミスタの声の通り、夕映えの残光が雲の間から放射状に街に降り注いでいた。
彼の牡丹鼠色の髪に載った雨粒もキラキラと彩光を拡散していた。
○月△日 雨
Laugh_armor_mao
DONE #鬼狐ワンドロワンライ時間無い!
🦊👹 お題『指輪』
皆さん凄いので、ハッシュタグから是非飛んで欲しい。
赤縄繋足 外気に輪郭が融けて、思考が拡散してゆく。細かな細かな粒子になって、俺の存在は大気に四散する。
カチリ。
悲しみと恐怖に握り込んだ手の中で、小さく悲鳴を上げた金属音がここに居ると叫んで自分を取り戻す。
目一杯開けてもだらだらと固まり落ちる水流のシャワーを浴びて、ミスタ・リアスは汗と悪夢を洗い流した。
グレイッシュピンクの柔らかな髪を乱雑にタオルで擦って、シャツを羽織ると認識票の付いたチョーカーを締める。
指輪と、最近入手した艶光りするオニキスのブレスレットを付けて、俺を固定する。
アクセサリーの緩い拘束感が好きだ。
挨拶をする為にボイス・チャットに繋いだリストに、アイツが居ない。
「おっはよーぉ!」
799カチリ。
悲しみと恐怖に握り込んだ手の中で、小さく悲鳴を上げた金属音がここに居ると叫んで自分を取り戻す。
目一杯開けてもだらだらと固まり落ちる水流のシャワーを浴びて、ミスタ・リアスは汗と悪夢を洗い流した。
グレイッシュピンクの柔らかな髪を乱雑にタオルで擦って、シャツを羽織ると認識票の付いたチョーカーを締める。
指輪と、最近入手した艶光りするオニキスのブレスレットを付けて、俺を固定する。
アクセサリーの緩い拘束感が好きだ。
挨拶をする為にボイス・チャットに繋いだリストに、アイツが居ない。
「おっはよーぉ!」