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    Laugh_armor_mao

    @Laugh_armor_mao

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    Laugh_armor_mao

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    #鬼狐ワンドロワンライ
    お題 『休日』

    Fais bon voyageキィィィィン

     考える時間が必要だった。

    耳管の調整が追い付かない空間で、ギシリとこめかみに痛みを覚えて、ノートブック程の切り取られた空に目を向ける。

     何を持ったまま、何を手放したのか。

    台風の時期は過ぎたと言うが、もふりとした雲が下に拡がる碧い塩水溜まりを隠して、白い地平線と蒼い空だけの平坦な風景画が等間隔に飾られているだけだった。

     仕事のコト
     友人のコト
     リスナーのコト
     家族のコト


            自分のコト

    目許だけ見えるアテンダントに毛布を返しながら、ついでに席を立って、扉の前で延びをする。

     日々のタスクを熟しながらではなく、ソレだけを考える時間が必要だった。

     明日のコト
     来月、5年後、10年後。
     答えなんか無くて良くて、只、思考を巡らす。



    「暑っつ」

     タラップを降りると、沸騰したケトルから噴き出す蒸気に包まれたような湿度と温度がミスタを迎えた。
     空調が効いているはずのロビーがこれであれば、外の気温は大概であろう。
     急ぎ足で冬将軍が向かって来た本国との体感差に眉根を寄せる。

     運良く回って来たトランクをカルーセルから降ろし、鼻の奥に苦い、もうもうと煙の漏れる喫煙室の横を足早に通り過ぎ。

    「mahal (高いよ)」

     現金をおろしてフリーのSIMを購入し通信状態を確認したら、外に向かう。早速、タクシーの客引きから声が掛かった。
     ヒラヒラと手で追い返しながらGrabTaxiに乗り込んで。

     湾岸沿いの道をノロノロと進む車窓から、真っ青な空を写し込んだ海を眺める。

     照り返した光の欠片がミスタの瞳の奥で拡散して、七色のシンチレーションを産んでいた。



     案内された部屋は壁紙の端が茶色に煤けて、古ぼけたデザインの家具が最低限に置かれたシンプルな造りだったが、白木の窓枠の向こうは遠く蒼い海が拡がっているオーシャンビュー。ビーチに行かなくて済んだな。なんてほわりと思いながら、ベッドに腰かけ、其の儘、後ろに倒れ込んだ。

     SIMの一時的な連絡先と共に『着いたよ』と手短な報告を各所へ送る。家族以外に『連絡しなくちゃならない』ような生活をするようになるなんて。小さな感傷は、漠然とした頭では把握出来ずにゆらゆらと脳脊髄液に押し流された。

     眼を開けると、海に沈むとろとろに溶けたオレンジが、数ミリの余韻を空に投げかけていた。眠ったつもりは無いけれど、結構時間が経っている。 部屋の隅は暗闇が口を開けかけていて、慌てて部屋の灯りを付ける。
     すっかり思考の抜けた海馬に、胃から空腹を告げる抗議が届いた。



    「teka teka teka (待って待って待って)。 めっちゃMaanghang (辛い) ジャン!」

     屋台で勧められた串焼きに悪態を付き、 ビールを片手にペロリと舌を出したミスタに、白髪のオヤジが呵呵と笑う。
     1週間も通っているうち、ミスタはすっかりこのマーケットの住人に馴染んでいた。
     視兼ねた私娼のお姉さんがタピオカドリンクを買って寄越し、ミスタの頭を撫でながら、オヤジに「程々にしなさいよ」なんて言ってくれる。面倒見のいいこの女性は最初の頃、「客なの?新しい商売敵なの?」なんて斜め上の牽制をかけて来た人だったりする。

    俺。俺は何なんだろうね。
    やっぱり答えは出ないのだけれど。

     「気を付けて帰るのよ」と言い残して其々、本日のターゲットを求めて『出勤』する長い黒髪の後ろ姿に手を振って、今回の自問自答が終幕を迎え始めている事を鼻先に感じ、きゅっと口許に微笑みを結んだ。

     今日は気分がとても良い。満月が海に映って、ふわふわ波間を漂っているのを見ながら、海岸沿いを歩いてホテルまで帰る。
     つもりだった。
     漆黒の夜空に浮かぶ月が、蜂蜜色で甘くて美味しそうだったから。

    「だ〜か〜ら〜、観光客なんだってば!」

     どうせ酒を飲んで暑くなるので道端で売っていたTシャツをゆるっと着て、皆と同じ様にぺろりと腹を出して、ハーフパンツにサンダル。
     うん。多少人種が違おうが、現地人と言われてもしょうが無い。

     あっちゃ〜って感じてるのは、私娼と思われて絡まれているから。ムカつく。
      俺、可愛いですけどね?!

    「お前の力で、その酒瓶で殴ったら相手は死ぬよ」

     銃を持った強盗では無いのを確かめて、気分が台無しだから殴っちゃおうかな?って瓶の口を握り直した時だった。
     甘く背骨を震わせる、馴染んだ聲を聞く。

    「muito (オバケ)!!」
    「なぁに?迎えに来たの?」

     後ろに身体を預けると、緩衝を殺す丁度良い受け方で背中が温かい。
     目が光っていようが、髪が逆立っていようが関係無い。だって、その矛先は俺じゃ無いから。

    「おや、もう気は済んだのかい?私は少し、寂しくなってしまってね。顔を見に来たんだよ」
    「え〜、堪え性の無い400歳だな」

     俺が、俺じゃなきゃいけない理由。

    「このまま連れて帰ってしまおうかな?」
    「入国履歴どうすんだよ」

     そんなもの、無かった。
     行動履歴を分析したって、脳波を測定したって、神経叢を取り出したって、誰も解析なんて出来ない。

    「ちょ!腹を触るな」
    「出しているんだから一寸位良いだろう。補充だ補充」
    「何をだよ!」

     俺が何処に行こうとも、どんな形であろうと、どんな思考をしようと、どんな将来を思い描いていようと。

    「お前だよ。ミスタ・リアス」

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    iori_uziyama

    DONE勢いで書いた。
    🦊😈🦊、🧡❤🧡
    置いていかれたヴォと置いていってしまったミの話。死ネタ。
    いっそ愛さなければよかったなんて鬼の生は長くて、今まで何度も人を愛したし、見送ったし、それでも時間が傷を癒やして、また人を愛せたし。だからミスタを愛したときも、彼の人生いっぱいいっぱいまで最大限の愛を注ごうと決めていた。そこに悲観はなかった。それは本当だったのに。彼を抱きしめて寝るのが好きだった。彼の体温が好きだった。彼の声が好きだった。彼の笑顔が好きだった。あぁ、忘れていた。そうだった。愛するものを失うのは心が引きちぎれるほど悲しくて、過ぎ去ることはわかっていてもその時間が果てしなく長く感じる。彼のことをずっと覚えて抱えていたいのに、あまりにも辛すぎて今すぐ忘れてしまいたくもなる。あと何年で忘れてしまうのだろう。あと何年で忘れられるのだろう。この傷が愛おしいのに辛くて堪らない。日本では49日で魂があの世へ行くらしいけれど、私の心にはミスタが染み付いて離れない。死んでしまいそうなくらいギュウギュウと締め付けてくるのに、決して殺しはしてくれない。ミスタに会いに行かせてくれない。鬼の身体を呪うしかない。焦がれて、力の制御もうまく行かずに引っ掻いたシーツが引き裂かれても、もがくことをやめられない。ああ、いっそ愛さなければよかったのにと思ってしまうほど、苦しくてつらい。楽しい思い出が輝くほどに、彼を思い出すほどに、憎くなる。なぜ私を置いていく。頼むから、置いていかないでくれ。泣き叫んで、縋り付いたっていい、どんなに情けない姿になってでも、ずっと側にいてくれるならそれでいい。たのむ、みすた、一人にしないでくれ。金色の瞳からポロポロと涙が溢れる。牙のある口から嗚咽が溢れて、雨の日も、雪の日も、晴れの日も風の日も、嵐の日も、昼も、夜も、朝も、ひたすら墓にすがりついていた。一ヶ月が経ってもニヶ月が経っても三ヶ月が経っても、半年が過ぎても、四季が巡ろうとも、涙は止まらなかった。両手の指を超える年を経ても未だに夢に思い、起きては絶望した。取り繕う余裕もなく、余りにも変わらず居るものだから、街中の話題になっても、国中の話題になっても世界中の話題になっても、頭の中にはミスタしか居なかった。ひとりぽっちになってしまった鬼が、いまだにわんわん泣いている。
    1298

    kohan_saniwa

    DONE #FoxAkuma
    サナトリウムに入所させられた🦊とちょっと不思議な👹の👹🦊
    多分🦊は転生してると思う。設定ふわっふわ。

    ⚠ご本人様方とは一切関係ない二次創作です⚠
    ⚠無断転載・自作発言禁止⚠
    ⚠なんでも許せる人向け⚠



    BGMはA/im/erさんの「w0nderland」でお願いします。
    wonderlandばさ、と窓の外から大きな音がした。眠れなかったミスタは、そっとカーテンを開いた。静かなサナトリウムの周りには建物なんて一切ない。整備された庭と、裏の林と、下の街へ続く道があるだけで、不気味な程に静まり返っている。鳥の羽ばたきと、猛禽の鳴き声と、風と葉の擦れる音と、それから、リノリウムを踏み鳴らす足音。夜のサナトリウムを構成するのはたったそれだけだった。明かりもなければ、娯楽もない。星がチカチカとしていて、勝手な星座を作ることばかり得意になりそうなくらいだ。ミスタの小さな部屋にはベッドと机とものを仕舞うタンスだけ。ささやかな花瓶に活けられた生花は、きっと今晩で枯れてしまうかもしれない。看護師が持ってきたチューベローズとエゾキクが、花弁を数枚落として俯いている。何となく気になって、ミスタは窓を開けた。ふわ、と涼しい風が吹き込んで髪を揺らす。ばさ、ばさ。また頭上を鳥が飛んだのかと上を見上げれば、ばさ、と一際大きな音を立てて真っ黒な鳥が横切った。
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