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    Laugh_armor_mao

    @Laugh_armor_mao

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    #鬼狐ワンドロワンライ
    お題 『雨』
    アゲダの傘祭り。

    #Foxakuma

    催花雨(さいかう)Está chovendo hoje. Onde está meu guarda-chuva
    (今日は雨だな。私の傘はどこだろう?)

     雨の日の記憶は鈍色。
     短い夏の前に、冷たい冷たい雨が音も無く降る。
     霧が空と街を繋げて、眼の前を白く烟らせ。手を伸ばせば流動する水滴は指の間を擦り抜けて、ひやりとした感覚だけを遺して消えた。

     蒼い夜が来訪を告げても、ミスタは其処から動けなかった。酷い倦怠感とドン底に落ちた気分で、いじっているスマホの内容は目が滑って全然理解できない。ささくれ立った神経は眠る事も赦してくれない。

     ソファに丸まってスマホをいじり続ける、悲壮な仔狐を見付けたのは、配信を終えてリビングにやって来た就寝前の同居人だった。

     内側から光を反射するかの様に、暗闇でも判る金色の眼は、薄青色の室内を一瞥すると、踵を返し、何処かへ去った。

     ミスタは背後の気配を辿りながら、あぁ、とため息を吐いて、再度自己嫌悪の生温い思考に沈みかけ…柔らかく滑らかな毛布に包まれた。

    「隣のスペースをお借りしても宜しいかな?」
    「勝手にすれば」
    「失礼。今日は一段と冷えるが、丁度良いホットウォーターボトルが」

     そっと引かれ、ヴォックスの膝を枕に寝転がると、身体を撫でているのか、毛布の毛並みを整えるか判らない位の力で、男らしい手が滑っていく。

    「雨の日は物悲しい気分になるから、人恋しくてな」
    「嘘つけ」

     理由を付けてもらって、ようやく身体を緩ませる。やっと何かから目を離す事が出来て、ミスタの長い睫毛が思考の帳を下ろした。



    「出かけるぞ」

     朝早くに叩き起こされて、回らない頭のまま連れ出された先が、飛行機で2時間って、馬鹿じゃねぇの?
     え?電車にも乗るの?ちょ。

    「美味い飯じゃないと許さない・・・」

     海を越えても雨雲は俺達を解放してくれなかったけれど、小さな街は白い漆喰とタイルを基調としていて明るく、俺たちの住む島国とは違って、雨も陽気にきらきらと発光しているように見えた。

     それにしたっていきなり国境超えはねぇよ。上機嫌に先を歩くオリエンタルな黒髪を追いながら、少々げんなりとして大通りに向かう路地を曲がった先には。

      虹が咲いていた。

     建物と建物の間を埋めるように、鮮やかな傘。傘。傘。宝石箱をひっくり返したように赤、青、黃。ピンクに緑。通り毎に趣向の違う工夫が凝らしてあって。
     隙間から溢れる雨も、極彩色のシャワーに変わる。

    「これからお前が見る景色は全て、私が彩ってやる。覚悟しておけ。」

     気障ったらしい台詞を吐いて、俺の為だけに時間を使ったこの男は、傘の大輪を背に得意然で破顔しやがって。こちらも笑うしか無いじゃないか。

    「ばーか」

     見上げたアクアマリンの瞳の中で、溢れる色彩が滲んで溶けた。
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    iori_uziyama

    DONE勢いで書いた。
    🦊😈🦊、🧡❤🧡
    置いていかれたヴォと置いていってしまったミの話。死ネタ。
    いっそ愛さなければよかったなんて鬼の生は長くて、今まで何度も人を愛したし、見送ったし、それでも時間が傷を癒やして、また人を愛せたし。だからミスタを愛したときも、彼の人生いっぱいいっぱいまで最大限の愛を注ごうと決めていた。そこに悲観はなかった。それは本当だったのに。彼を抱きしめて寝るのが好きだった。彼の体温が好きだった。彼の声が好きだった。彼の笑顔が好きだった。あぁ、忘れていた。そうだった。愛するものを失うのは心が引きちぎれるほど悲しくて、過ぎ去ることはわかっていてもその時間が果てしなく長く感じる。彼のことをずっと覚えて抱えていたいのに、あまりにも辛すぎて今すぐ忘れてしまいたくもなる。あと何年で忘れてしまうのだろう。あと何年で忘れられるのだろう。この傷が愛おしいのに辛くて堪らない。日本では49日で魂があの世へ行くらしいけれど、私の心にはミスタが染み付いて離れない。死んでしまいそうなくらいギュウギュウと締め付けてくるのに、決して殺しはしてくれない。ミスタに会いに行かせてくれない。鬼の身体を呪うしかない。焦がれて、力の制御もうまく行かずに引っ掻いたシーツが引き裂かれても、もがくことをやめられない。ああ、いっそ愛さなければよかったのにと思ってしまうほど、苦しくてつらい。楽しい思い出が輝くほどに、彼を思い出すほどに、憎くなる。なぜ私を置いていく。頼むから、置いていかないでくれ。泣き叫んで、縋り付いたっていい、どんなに情けない姿になってでも、ずっと側にいてくれるならそれでいい。たのむ、みすた、一人にしないでくれ。金色の瞳からポロポロと涙が溢れる。牙のある口から嗚咽が溢れて、雨の日も、雪の日も、晴れの日も風の日も、嵐の日も、昼も、夜も、朝も、ひたすら墓にすがりついていた。一ヶ月が経ってもニヶ月が経っても三ヶ月が経っても、半年が過ぎても、四季が巡ろうとも、涙は止まらなかった。両手の指を超える年を経ても未だに夢に思い、起きては絶望した。取り繕う余裕もなく、余りにも変わらず居るものだから、街中の話題になっても、国中の話題になっても世界中の話題になっても、頭の中にはミスタしか居なかった。ひとりぽっちになってしまった鬼が、いまだにわんわん泣いている。
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