かみすき
DONE白蛍お誕生日2024遅刻
ちょっと慣れてきて遠慮が減ったらこうなってくれないかなの妄想
《白蛍》めいっぱいのちゅ! 重たい足を引きずってようやく璃月にたどり着いたのは、日も落ちて冷たい潮風が町を包み、人々が寝支度を始める頃だった。見上げた目的地は既に灯りもなく闇に沈んでいるのを見つけ、蛍は肩を落とした。
間に合わなかった。これでも急いで来たつもりだったけれど、と青ざめたところで時間が戻るわけでもなく。一縷の望みをかけて近くまで来てみたものの、やはり不卜廬に人の気配はなさそうだった。疲れた体に落胆も加われば長い階段を上がる元気もなく、なんとか手配ができたケーキを抱えて、つんと鼻の奥が痛くなるのを誤魔化すように踵を返した、のだけれど。
「蛍さん」
大好きな声に呼ばれた気がして振り返る。しかし小さく声を上げた蛍の周りには相変わらず誰もいなくて、悔しさのあまりに水のせせらぎがそう聞こえてしまったのかもしれなかった。
2719間に合わなかった。これでも急いで来たつもりだったけれど、と青ざめたところで時間が戻るわけでもなく。一縷の望みをかけて近くまで来てみたものの、やはり不卜廬に人の気配はなさそうだった。疲れた体に落胆も加われば長い階段を上がる元気もなく、なんとか手配ができたケーキを抱えて、つんと鼻の奥が痛くなるのを誤魔化すように踵を返した、のだけれど。
「蛍さん」
大好きな声に呼ばれた気がして振り返る。しかし小さく声を上げた蛍の周りには相変わらず誰もいなくて、悔しさのあまりに水のせせらぎがそう聞こえてしまったのかもしれなかった。
かみすき
DONE白蛍 +長生そろそろキスがしたい蛍ちゃん
《白蛍》能ある蛇は自らを隠す「いつまで経ってもキスしてくれないんだよね」
蛍と白朮が恋人と呼ばれる関係になってからどれくらいになるだろう。指折り数えて片手では足りないのに、それほどの時間を共にしてきたにも関わらず二人は一度もキスをしたことがなかった。
それがただののんびりとした恋愛故だったなら悩むこともなかったけれど、何故か白朮が意図的にキスを避けていることが蛍はずっと気がかりだった。
街で仲の良いカップルを見かけたときにはいいなと呟いて横目で催促してみたり、長く見つめ合ったときにはそっと寄りかかってみたり。白朮がそれにふと息を詰まらせた辺り蛍の必死のアピールが伝わらなかったはずもないのに、すべて曖昧に微笑まれてなかったことにされた。
6554蛍と白朮が恋人と呼ばれる関係になってからどれくらいになるだろう。指折り数えて片手では足りないのに、それほどの時間を共にしてきたにも関わらず二人は一度もキスをしたことがなかった。
それがただののんびりとした恋愛故だったなら悩むこともなかったけれど、何故か白朮が意図的にキスを避けていることが蛍はずっと気がかりだった。
街で仲の良いカップルを見かけたときにはいいなと呟いて横目で催促してみたり、長く見つめ合ったときにはそっと寄りかかってみたり。白朮がそれにふと息を詰まらせた辺り蛍の必死のアピールが伝わらなかったはずもないのに、すべて曖昧に微笑まれてなかったことにされた。
かみすき
DONE白蛍あんまりもだもだしているせいで、痺れを切らした長生に噛みつかれる(物理)お話。ちょっとだけ血が出る
《白蛍》牙を剥く 「それで」
湯気も立たなくなった茶を啜り、蛍の首を三周とちょっと、冷たい鱗の感触をなんとはなしに確かめる。
初めて触れた頃は力加減もわからず、恐る恐るつついてはくすぐったいからやめろと怒られていたっけ。今では遠慮がなくなった蛍の指先に心地よさそうに目を細めた蛇――もとい長生は、まるで欠伸でもするかのように大きく口を開けた。
鱗が軽くざらつく程度で見た目より滑らかに感じるのは、表面のごく薄い油膜のおかげかもしれない。とは、何度も撫でているうちに本人が、いや本蛇が教えてくれたことだ。
「あんたはいつまでこんなことしてるつもりなんだい」
「あ……うん。そう、だね」
ぬうと持ち上げられた頭と対峙する。瞳は瞬きもなくじっとこちらを覗き込んで、それはやがて睨みに変わる。それに思わず動きを止めたのは、蛍が蛙であったからではない。
3550湯気も立たなくなった茶を啜り、蛍の首を三周とちょっと、冷たい鱗の感触をなんとはなしに確かめる。
初めて触れた頃は力加減もわからず、恐る恐るつついてはくすぐったいからやめろと怒られていたっけ。今では遠慮がなくなった蛍の指先に心地よさそうに目を細めた蛇――もとい長生は、まるで欠伸でもするかのように大きく口を開けた。
鱗が軽くざらつく程度で見た目より滑らかに感じるのは、表面のごく薄い油膜のおかげかもしれない。とは、何度も撫でているうちに本人が、いや本蛇が教えてくれたことだ。
「あんたはいつまでこんなことしてるつもりなんだい」
「あ……うん。そう、だね」
ぬうと持ち上げられた頭と対峙する。瞳は瞬きもなくじっとこちらを覗き込んで、それはやがて睨みに変わる。それに思わず動きを止めたのは、蛍が蛙であったからではない。