はねた
TRAINING斑奏のここが好き、というポイントを書きました。キャッチミー、イフユーキャン 宴はすでにたけなわだった。
あちらこちらでクラッカーの音がひっきりなしに、壁面には色紙の輪でつくられたテープがいくつもぶらさがり、フライドチキンやポテトの香ばしい匂いがあたりに漂う。
ソファの一角に陣取り、薫はちびちびとコーラをなめていた。目のまえを道化めいた格好の日々樹が過ぎていく。珍しいものだと目をやれば、いつのまにかグラスにちいさな花が添えられていた。サービス精神がすごいよね、と感心しつつ薫は花をテーブルの上に置く。
窓の外はとっぷりと暗い。ガラス越し、談話室の灯が夜の闇をすこしばかり明るませる。
そもそもは八月の終わり、仕事漬けだった夏にすこしでも思い出作りをと、トリックスターが暑気払いもかねての飲み食いを仲間内で企画したのがはじまりだった。それが次第に広まって、結局こうして寮全体でのばか騒ぎとなっている。もちろん揃って多忙の身、なかには都合がつかない者もいるといえ見渡した限りではそれなりに集まりはいい。
3962あちらこちらでクラッカーの音がひっきりなしに、壁面には色紙の輪でつくられたテープがいくつもぶらさがり、フライドチキンやポテトの香ばしい匂いがあたりに漂う。
ソファの一角に陣取り、薫はちびちびとコーラをなめていた。目のまえを道化めいた格好の日々樹が過ぎていく。珍しいものだと目をやれば、いつのまにかグラスにちいさな花が添えられていた。サービス精神がすごいよね、と感心しつつ薫は花をテーブルの上に置く。
窓の外はとっぷりと暗い。ガラス越し、談話室の灯が夜の闇をすこしばかり明るませる。
そもそもは八月の終わり、仕事漬けだった夏にすこしでも思い出作りをと、トリックスターが暑気払いもかねての飲み食いを仲間内で企画したのがはじまりだった。それが次第に広まって、結局こうして寮全体でのばか騒ぎとなっている。もちろん揃って多忙の身、なかには都合がつかない者もいるといえ見渡した限りではそれなりに集まりはいい。
はねた
TRAINING百花のあとの斑さんと奏汰さん。斑奏かなあとおもいつつ自縄自縛片思いが業なので斑さんがそんな感じです。
はながたみ 甘い匂いがする。
陽を浴びて花々は白い。一面に広がる花の色、青空との境もおぼろにかすむ。
あたりはふしぎと凪いでいるから濃密な香りが溜まりこむ。
むせかえる花いきれ、見あげれば秋の空は青く澄んでいる。
花畑にはところどころ窪みができていた。えぐれて掘り起こされた、土のなかに花びらや葉が埋まる。なかには細かくちぎれているものもあって、それらをひとつずつ手でつまむのはなかなか難儀だった。面倒なものだなあ、とぼやきつつ斑はそれらをかたわらのごみ箱に入れてゆく。
草花をとりのぞき、スコップで地面を整える。じょうろで水をやり、花弁についた泥を流す。
ふとその手元、自分のものではない影がさした。
「……どうして君は来ちゃうかなあ」
5181陽を浴びて花々は白い。一面に広がる花の色、青空との境もおぼろにかすむ。
あたりはふしぎと凪いでいるから濃密な香りが溜まりこむ。
むせかえる花いきれ、見あげれば秋の空は青く澄んでいる。
花畑にはところどころ窪みができていた。えぐれて掘り起こされた、土のなかに花びらや葉が埋まる。なかには細かくちぎれているものもあって、それらをひとつずつ手でつまむのはなかなか難儀だった。面倒なものだなあ、とぼやきつつ斑はそれらをかたわらのごみ箱に入れてゆく。
草花をとりのぞき、スコップで地面を整える。じょうろで水をやり、花弁についた泥を流す。
ふとその手元、自分のものではない影がさした。
「……どうして君は来ちゃうかなあ」
はねた
TRAINING!のときの流星隊の3年生と1年生。噴水で泳ぐってどんなきもちかしら、と考えました。
ひとは愛を食べて育つ ひなたの水はすこしぬるい。
日にさらされたせいかどこか古ぼけていて、布越しの肌にゆったりとまとわりつく。
奏汰は池のなかにいる。
学院の中庭にある池だった。円形の水盤のまんなかには噴水があって、細かな飛沫がきらきらと青空を染めていく。
石造りの池の縁に頭をもたせかけ、ぼんやりと奏汰はそのさまを眺める。
耳元でちゃぷちゃぷと水が揺れる。噴水の音が地鳴りのようにそれに重なる。
夏も間近い時分、陽射しがじりじりと髪や首筋を灼く。このままだとひからびてしまいそうだったから、水のなかに顔の半分くらいまでをつけてみる。
みどろの匂いが鼻先をかすめた。
ひとの手によって整えられた水は、懐っこいわりにどこか肌には馴染まない。すくいあげてみても薄紙一枚隔てたように皮膚のうえを滑っていくばかりで、へんな感じだなあと奏汰はおもう。海の水ならもっとしっくりくるのにと、ぱしゃぱしゃと水面をたたいて感触を確かめていると、池のそばを通りがかった生徒がびくりとしてあとずさった。
4892日にさらされたせいかどこか古ぼけていて、布越しの肌にゆったりとまとわりつく。
奏汰は池のなかにいる。
学院の中庭にある池だった。円形の水盤のまんなかには噴水があって、細かな飛沫がきらきらと青空を染めていく。
石造りの池の縁に頭をもたせかけ、ぼんやりと奏汰はそのさまを眺める。
耳元でちゃぷちゃぷと水が揺れる。噴水の音が地鳴りのようにそれに重なる。
夏も間近い時分、陽射しがじりじりと髪や首筋を灼く。このままだとひからびてしまいそうだったから、水のなかに顔の半分くらいまでをつけてみる。
みどろの匂いが鼻先をかすめた。
ひとの手によって整えられた水は、懐っこいわりにどこか肌には馴染まない。すくいあげてみても薄紙一枚隔てたように皮膚のうえを滑っていくばかりで、へんな感じだなあと奏汰はおもう。海の水ならもっとしっくりくるのにと、ぱしゃぱしゃと水面をたたいて感触を確かめていると、池のそばを通りがかった生徒がびくりとしてあとずさった。